大企業は下流ビジネス

大企業が潤えば、その下に位置する中堅企業、
さらにその下の中小企業、零細企業にまで
富がこぼれ落ちてくる。
これがトリクルダウン理論である。
今だ、この理論に基づいて政策を
立案している政府は、何とも能天気に見える。

過去の実績に基づいた戦略というものは、
言い換えれば時代に合わない戦略でもある。
この理論を成り立たせるためには、
大元である大企業が「こぼれ落ちても余りある」ほどの
利益を出さなくてはいけない。

もはや大企業にはそのような余力はないし、
あったとしても下に分け与えるようなことはしない。
何しろ一寸先は闇なのだ。
何が起こるかわからない未来に備えて、
大企業はどんどん社内留保を積み上げていく。
つまりこの理論はすでに破綻しているのである。

たとえばビジネスを大きな河に見立ててみる。
トリクルダウン理論でいくと、大企業は
水が吹き出し続ける巨大な泉のような位置づけだ。
だが実際の河川はこのような構造にはなっていない。

まず山のあちこちに小さな泉がある。
無数の泉から湧き出た水が小さな流れをつくる。
小さな流れは合流して、
だんだんと大きな流れになっていく。
下流に行けば行くほど川幅は広がり、
水量は増え、水質は濁っていく。

この流れの中で大企業が位置するのはどこか。
それは最も下流に位置する大河である。
大河は無数の生物が生息している巨大マーケットだ。
大きな魚にとっての主戦場であり、
小さな魚にとっては命がけの生息地。
つまり大企業とは上流ではなく
下流でこそ成り立つビジネスなのである。

大きな魚の影で自分よりさらに小さな魚と戦う。
あるいは大きな魚のおこぼれをもらう。
それもひとつの生き方だろう。
だが小さな魚にはもっと理想的な場所がある。
それは上流である。

上に行けば行くほど川幅は狭くなり、
大きな魚は入って来られない。
水質はどんどん綺麗になり、
生息できる生物は限られてくる。
上流こそが小さな魚の理想郷なのだ。

小さな会社や個人は上流を目指すべきである。
下流でおこぼれを待つのではなく、
どんなに小さくてもいいから上流の覇者となるのだ。
上流には無数の水脈がある。
自分で水脈を掘り当てることもできる。

山には湧き水が無数にあり、
小さな生物が生きていける場所はいくらでもあるのだ。
間違えてはいけない。
大企業は下流に位置するビジネスモデル。
そして小さな会社にとっての
ブルーオーシャンは上流にある。

 

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1件のコメントがあります

  1. 確かにそう思います。
    これからは個の時代になるかと思いますが、大きな国民の願いである戦後復興という昭和モデルに貢献された世代(80才以上の先達)の労働慣行、日本的な企業の価値観にも感謝と敬意を持っております。その世代があっての今の私たちですから!

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