この記事について
自分の絵を描いてもらう。そう聞くと肖像画しか思い浮かびませんよね。門間由佳は肖像画ではない“私の絵”を描いてくれる人。人はひとりひとり違います。違った長所があり、違った短所があり、違うテーマをもって生きています。でも人は自分のことがよく分かりません。だからせっかくの長所を活かせない。同じ失敗ばかり繰り返してしまう。いつの間にか目的からズレていってしまう。そんな時、私が立ち返る場所。私が私に向き合える時間。それが門間由佳の描く“私の絵”なのです。一体どうやってストーリーを掘り起こすのか。どのようにして絵を紡いでいくのか。そのプロセスをこのコンテンツで紹介していきます。
出世コースを極めるよりも大切なものを見出すために
「男性の依頼は少ないと思いますが、ぜひお願いします」
ある日、メールが届きました。確かに、その当時は女性の申し込みが8割以上でした。きっと、誰かの知人に違いない、と確認すると、絵のオーナーの知り合いだとわかりました。何歳なのか、職業は何か、さらに聞くこともできますが、あえて、知らないまま会うことにしました。
何も聞かずに人と人が会うことを、「三脱(さんだつ)の教え」と言います。「三脱」とは、年齢・職業・地位(立場)の3つを外すこと。先入観で決めつけず、本質を見極めましょう、という教えです。
この方の本質は、文面全体から滲み出る真面目な空気で十分伝わってきました。
お会いすると、予想通りきちっとした空気が漂う男性でした。職業は医師。心臓外科医です。繊細で優しい面持ちと、心臓外科という細かい仕事がFさんの人間像にぴたりとハマりました。
それに、「努力じゃなくて、医者一族の一員、という流れに任せてきたら、いつの間にか医者になっちゃったのです」と、ちょっと歯に噛んだように話すFさんから、ユーモアも伝わってきました。きっと誰もがFさんに安心する‥‥。白衣のFさんと患者と和やかに話す情景が浮かびました。
「でも、流れに任せる人生でよかったのか、最近わからなくなりました。だから医者は続けるにせよ、今の職場を離れようかと考えています。どうやら、人生の節目にさしかかっているな、と感じて、『そうだ、今が、門間さんに描いてもらうタイミングだ』と申し込みました」と言って、Fさんはニコニコしました。
まるで人生相談かコーチングに来たようです。しかし、私にはよくある対話でした。実際、Fさんの知人も、人生の節目に絵を依頼しました。そして、自分を振り返って、土台を踏み固めた後、次のステージへと踏み出し、成長していきました。
節目を迎えた時は、「今までに意味があった」と心から体感するのが大切です。「意味があったかわからない」まま先に行こうとするのは、ぐらぐらした土台に大きな荷物を積み上げようとするようなもの。うまくいきません。
だから、Fさんが、流れのままに進む中で、得てきたものを丁寧に振り返っていきました。最先端の技術を吸収できる。ありのままで人に慕われる。生死に何度も立ち会って命の尊さを知る。「自分は外科医になってよかった」と再確認することができたとき、Fさんは充実感にあふれていました。
そして自然と「意味があったことを踏まえて、さらに、自分の殻を破りたい。もっと、自分らしい人生に舵を取りたい」と、新しい想いが浮かび上がってきました。
だから、【流れを作る生き方へと変わる】のが、絵のテーマになりました。
絵もしっかりした土台が大事。Fさんの優しさを映して、「平和、公平」を表す緑色から始まりました。
その頃、Fさんは、「流れに乗ってきたようにうまくいかなくてイライラしています。自分で一つ一つ決めるって、思ったより大変なのですね」と、弱音を吐きつつも、真面目に模索を続けていました。そういう時は、無意識が働き続けています。また、絵は言葉にできない気持ちを触発します。だから、描いている最中に、クライアントが閃くことがあります。Fさんにも、それは、突然やってきました。セッションで、絵を眺めていたFさんが、「今‥‥心臓が見えてきました!」と叫んだのです。
「ハート型‥‥心臓を入れてください。それが【僕の絵】だ、と、今、はっきりわかりました。そして、迷いながらも『自分で選び取る』って、こんなに嬉しいんですね!!」
そして、「今までは、最新治療に突き進むエリートコースを極めてきました。でも、本当に選びたいのは、患者さんに寄り添うことだとわかりました」と本来のあり方を掴みました。
完成した絵を自宅に飾ったFさんは、最先端の医療を踏まえつつ、「年齢も環境も考え方も違う一人ひとりに合った治療を追求」し続けています。例えば、現代では、脳の機能が全て停止する『脳死』と、心臓が止まる『心臓死』があります。その時に、【最新の動向から答えを得る】ではなく、【患者に寄り添って答えを一緒に探す】のを優先しているのです。
人に認められたいと思うのは当然の感情です。例えば、出世競争のような場面では、椅子取りゲームのように周りから勝ち抜くことだけに夢中になることもあるでしょう。人間だから、そんな時もあっていい。ただ、それよりも、もっともっと大切なものを忘れないこと。それは、「自分が自分を受け入れよう」という気持ちです。
もしも人に負ける時があっても、認められない時があっても、自分が自分に「I am O.K.」といえる人生。
それは、人生の荒波に打ちのめされても、立ち戻る場所がある生きかたです。平和と幸せに満ちたあり方です。
著者の自己紹介
ビジョンクリエイター/画家の門間由佳です。
私にはたまたま経営者のお客さんが多くいらっしゃいます。大好きな絵を仕事にしようと思ったら、自然にそうなりました。
今、画廊を通さないで直接お客様と出会い、つながるスタイルで【深層ビジョナリープログラム】というオーダー絵画を届けています。
そして絵を見続けたお客様から「収益が増えた」「支店を出せた」「事業の多角化に成功した」「夫婦仲が良くなった」「ずっと伝えられなかった気持ちを家族に伝えられた」「存在意義を噛み締められた」など声をいただいています。
人はテーマを意識することで強みをより生かせるようになります。でも多くの人は自分のテーマに気がついていません。ふと気づいても、すぐに忘れてしまいます。
人生
の節目には様々なテーマが訪れます。
経営に迷った時、ネガティブになりそうな時、新たなステージに向かう時などは、自分のテーマを意識することが大切です。
また、社会人として旅立つ我が子や、やがて大人になって壁にぶつかる孫に、想いと愛情を伝えると、その後の人生の指針となるでしょう。引退した父や母の今までを振り返ることは、ファミリーヒストリーの貴重な機会となります。そして、最も身近な夫や妻へずっと伝えられなかった感謝を伝えることは、絆を強めます。そしてまた、亡くなった親兄弟を、残された家族や友人と偲び語らうことでみなの気持ちが再生されます。
こういった人生の起点となる重要なテーマほど、大切に心の中にしまいこまれてカタチにしづらいものです。
でも、絵にしてあげることで立ち返る場所を手に入れることができます。