目の前の仕事を断れない。
条件は良くないが、断るわけにはいかない。
断ればもう仕事が来なくなるから。
そう考えている人が、世の中には実にたくさんいる。
彼らは仕事の選り好みをしない。
条件の良くない仕事でも、我慢して黙々とこなしていく。
家族のため。会社のため。生活のため。
だがその結果もたらされるのは、
さらに条件の悪い仕事なのである。
条件はどんどん悪くなる。
仕事の量を増やさなくては報酬が維持出来ない。
労働時間が増える。
やる気も、仕事の質も下がっていく。
気がついた時には、
条件の悪い仕事すら回って来なくなるのである。
きつい仕事や、やりたくない仕事でも、
文句を言わずにやっている。
にもかかわらず、仕事は減っていくし、報酬も下がっていく。
一体どうすればいいのだ、と叫びたくもなるだろう。
だが全ての始まりは、仕事を断らなかったことにあるのだ。
断ることによって、仕事は増えていく。
この理屈が理解出来ない人は、
残念ながら負のスパイラルへと巻き込まれていくのである。
たとえば、こだわりのパンを作っている店は、
顧客の値引きに応じるだろうか。
断れば、その顧客を失うかもしれない。
だが断らなければ、それ以外の顧客を失うことになる。
値引きに応じるためには、
コストを削減しなくてはならないからだ。
その結果、材料が変り、作り方も変わり、
こだわりがなくなってしまう。
この簡単なロジックを理解出来ない人はいない。
にもかかわらず、これと正反対の行動をする人のほうが
多いのだから不思議である。
つまり、目の前の顧客の要望に応じてしまうのだ。
ひとつにはそれが、短期的、
局地的な、対応であると信じているから。
今は不景気だから。
次には良い仕事がもらえるはずだから。
だが、一時的に導入したバリューセットによって、
マクドナルドの商品は完全に値崩れしてしまった。
もはや元の価格でハンバーガーを買う顧客はどこにもいない。
もちろん、どんな仕事でも断ればいいというものではない。
楽な仕事、儲かる仕事ばかりを選んでいたら、
いずれ仕事が来なくなるだろう。
断るのは楽をするためではなく、仕事の質を高めるためだ。
仕事の質が高まることによって、仕事の依頼は増え、
報酬も高くなっていく。
まず考えるべきは、自分自身の商品価値だ。
自分の価値は何なのか。
それは、誰にとっての、どのような価値なのか。
価値を定義し、その価値を高めるために、
どのような仕事を引き受けるべきなのかを考える。
すると、断るべき仕事も明確に見えてくる。
仕事を依頼して来るのはクライアントとは限らない。
会社や、上司が命じて来る仕事もある。
つまり、仕事を断ることによって、
顧客ばかりか、雇用を失う可能性もあるのだ。
それでも仕事が断れるかどうか。
それは自分自身の生き方にかかっている。
自らの価値を高め、
その価値を理解してくれる人のために働くのか。
それとも目の前の報酬のために働くのか。
仕事選びとは、人生選びなのである。
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