第182回「日本劣等改造論(14)」

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

 ― お金からの卒業(後編)―

前編は、お金とは1次元的なものであり、日々お金を中心に生きていると1次元に縛られてしまうので、そこから飛び出そうという話だった。後編では、次元の縛りを解いてジャンプしてみる。

次元ジャンプの極意は「回す」こと。ペン(1次元)を机の上でくるくる回すと平面(2次元)が見える。紙(2次元)を回して丸めると、立体(3次元)が見えてくる。

1次元であるお金を回してみる。回すというのは循環であるが、お金を循環で捉えてみる。お金が回っている仕組みがわかれば、そこに飛び込むことで、次元ジャンプができる。金は天下の回りものというように、まずは循環の輪の中に自分がいることを感じ取ればいい。そして、その循環を促すように動けば2次元世界の仲間入り。

例えば、お金を払う時に「感謝」すること。1次元(直線)ではお金を払う人(客)が「上」でお金を貰う人が「下」となるが、循環ではこの逆となる。お金を払うというのは、循環の輪に入れたことになり、参加させてもらって有難うなのだ。

そして、お金をもらったとしたら、すぐそのお金を循環の輪に流し入れる。バトンをパスしてもらったら、次にバトンをパスする。パスの相手はもちろん循環の輪の中の人に。ちなみに、タンス貯金は循環リレーを止めることになる。

「価値を与えてくれて有難う&価値をもらってくれて有難う」の価値交換の循環の輪が感じられたら、2次元ワールドに入ったことになる。しばらくすると、自分がつないだバトンが自分に帰ってくることが実感できるだろう。ブロックチェーン技術が普及すれば、この循環が簡単にわかるようになる。

お金を自分のためにだけ使っている人は、循環の外にいる。お金を得て、お金を放出して、1次元的な満足で終わっているから。こういった人にバトンをパスすると、循環が止まって自分に帰ってこなくなるので注意!

この2次元循環の感覚を養うには、世界が循環によって豊かさを得ていることを日々体感すればいい。水平線から登る太陽を見て心を新たにし、水平線に沈む太陽を見て、今日を懐かしむ。月の満ち欠けの美しさを見ながら、月の重力によって海の干満が生じ、海の豊かさを生み出していることを知る。無料で体感できる最高のプログラム。この感覚を磨くと、1次元の窮屈さに氣づき、循環の輪に入る豊かさを知るだろう。

次は3次元へジャンプ。次元ジャンプの極意は「回す」ことなので、さらにお金の循環を別軸で回せばいい。その回す軸は時間軸。過去から未来へと続く時間軸で、循環の輪を回すのだ。そこに登場する価値交換の相手は、今は亡き先祖とまだ見ぬ子孫。先人が喜び、子孫も喜ぶようにお金を使って、循環を回せばいい。

難しくなってきた。1次元と2次元はわかるが、3次元になると複雑になる。2次元方程式から3次元方程式を解くのが一氣に難しくなるように。

最近、SDGsが認知されるようになって「持続可能性」が意識化されている。これは子孫が喜ぶことなので、3次元的な循環に当てはまる。持続可能性ってエコのこと?ぐらいしか思いつかないかもしれないが、SDGsには17個の目標があり、このすべての目標を達成するのは相当難しい。人類に突きつけられた最終試験のテストのようである。

最後に「先祖が喜ぶには?」というお題が残っているが、先祖が子孫に伝承したかったものを受け継ぐこと。日本の場合は、神話と民話に先祖の想いが詰まっている。日本には4万話あるといわれているが、その中でも多いのが恩返しの話。ということは、先祖が伝承したかった「恩返し」的にお金を使えばいいことになる。では、恩返しってなんだろう?親孝行?恩人にプレゼント?それもあるが、恩の本質は「今、平和に豊かに生きている土台を誰が作ってくれたか」に想いを寄せること。自然とその土台を守っていきたくなる。これが恩返しの本質だろう。

次元のジャンプは回すことだった。読者の皆さんはきっと今、目が回っているはずである。お疲れさまでした。

 

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著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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