サガン鳥栖の監督でしたっけ。パワハラで処分された。
その監督ですね。
隠蔽があったと言われてますけど。そもそもプロにパワハラなんてあるんですか。
選手を蹴ったりしてたみたいなので。完全にパワハラですね。
選手が逆らえないぐらい監督に権限があるんでしょうか。サッカーって、野球と違って自分で考えてやるイメージですけど。
野球も考えてやるスポーツですよ。
野球はいつ走るとか、何球目まで待てとか、監督の指示が絶対じゃないですか。
その部分だけ見ればそうですね。
サッカーの場合は、試合が始まってしまったら「選手が自主的に判断する」って聞いたんですけど。
それは単にルールの違いですね。
久野さんはサッカーをやってたんですか?
私は野球をやってました。
なんと。野球は合わなそうですけど。監督に怒られませんでしたか。
怒られましたよ。
「勝手なことすんな」みたいな。
球拾いとか嫌いでしたもん。野球って待ってる時間がめちゃくちゃ長いんですよ。
守ってる時間ってことですか。
守備練習の時って、コーチは9個同時に打てないじゃないですか。
はい。
だから全体練習って、待ってる時間がめちゃくちゃ長いんです。
なるほど。
だけどぼーっとしてると怒られる(笑)集中して待ってないといけないんです。
大変ですね。今回のパワハラについてはどう思いますか。
じつは中小企業も4月からハラスメント防止施策が義務化するんですよ。
また義務が増えるんですか。
そうなんです。大企業は去年から義務化されてるんですけど。
どういう内容ですか。
中小企業ってハラスメントとか放ってあるイメージないですか。
放ってるというより、たとえば営業なんかは多少きついこと言わないと、成果がでない気がします。
そうですよね。でもこれからは相談窓口の設置とか、やらなきゃいけないんです。
どのあたりからパワハラというラインなんですか?
厚労省が一応そのラインを決めていて。まず身体的な攻撃とか、殴る蹴るは駄目ですよね。
それは当然でしょう。
ここからが難しいんですけど。精神的な攻撃みたいなものはダメ。
どこからが精神的な攻撃かですよ。
𠮟るのはいいんだけど、人格否定するようなのはダメとか。あと、ちょっと曖昧なんですけど、長時間にわたって詰め続けるのはダメとか。
何時間以上がダメなんですか。
そこが明確に決まってないんです。
常識的に考えるとどのぐらいでアウトでしょう。
今はもう5分以上でアウトじゃないですか。
え!たった5分で。
頻度にもよりますけど。
頻度はどのぐらいでアウトですか。
1日3回とか。
1日1回ならOK?
毎日やったらダメです。
じゃあ3日に1回とか。
そういう意味ではなく(笑)
どういう意味なんですか。
1回言ったら水に流す感じ。
水に流す?
さっきの監督と一緒。追い込んでやらせる時代は「もう終わり」ってことです。朝からネチネチやるのはダメ。
5分以内で。1回だけ。それで水に流すと。
朝言ったのならその時点で水に流す。昼にもう1回なんてのはダメ。
「そんなので生き残れるか!」って感じですけど。プロサッカーですら、それはもう古いってことですよね。
そうです。
どうやって育てたらいいんですか。
「ここ3試合で3点採れなかったら、もう2軍ね」みたいにしなきゃいけない。
プロだったらそれでいいでしょうけど。企業はそれができないですよ。
そうなんです。労働法がありますから。
中小企業って、いい人材ばかり採ってるわけじゃないし。さぼる人とか、やる気ない人とか、ぼーっとしてる人とか、いますよ。
いっぱいいそうですね(笑)
それを管理するのに小言を言うなり、怒るなり、叱るなりって、必須だと思うんですけど。
安田さんもやってましたか。
私はそれが嫌で人を雇うのをやめました。
外注だったらそんな必要ないですからね。
はい。発注先を変えりゃいいだけ。でも雇ってると言わなきゃいけないし。こっちも嫌な気分になるし。
そうなんです。
それすらやっちゃいけないってことですね。もうそういうマネジメントはダメだと。
もうオフィシャルにはできなくなるよってことです。今年の4月から。
それ以外のマネジメントで中小企業は利益出るんですかね。
仕事の結果で評価するしかないです。
結果によって給料下げていいってことですか。
評価制度を入れて、結果が出なかったら徐々に下げていく。生活が激変するような減給はダメですけど。
そんな程度では変わらないですよ。やる気のない人にもたった5分しか注意できないし。
だからちゃんと採用しなきゃいけないんです。企業には教育する義務もありますから。採用した時点で教育はセットなんです。
教育してできるようになるぐらいだったら、苦労しないです。
それでもやらなきゃいけない。やり尽くした結果、本人が「やる気ない」って言うなら仕方がない。
「やる気はある」って本人が言った場合はどうなるんですか。
困ります。やる気があって仕事ができない人の対処が、いちばん難しいんです。
久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。