ひと昔前は、年寄り一人を現役世代十人が支えていた。
今は二人で支えなくてはならない。
そして近い将来、一人で支えなくてはならなくなる。
そうなったら、国家は破綻するだろうと言われている。
では一体、どうしたらいいのだろう。
どんどん子供を産めばいいのか。
あるいは移民を迎え入れればいいのか。
そもそも、なぜこんな状態になってしまったのだろう。
考えるまでもなく原因は明らかである。
それは、一人の年寄りを十人で支えていたからだ。
その十人が年寄りになった。
ただそれだけの話である。
ではその年寄りを、更に十人で支えたらどうなるのか。
一人の年寄りを、常に十人で支える。
その状態を維持し続けていけば、
いずれは人口増加によって地球が滅亡するだろう。
未来永劫、人口を増やし続けることなど出来ない。
その戦略は、どこかで必ず破綻するのである。
では、人口が減り続けた場合はどうか。
そうなったら、やはり人類は滅亡してしまう。
つまり、増え続けても、減り続けても、
どこかで滅亡するのである。
当たり前の話なのだが、
人間も他の生物と同様に、適性個体数というものがある。
多過ぎもせず、少な過ぎもしない、適正な人数。
それを維持し続けることが、最も安定した、
持続可能な戦略なのである。
では何人が適正なのだろうか。
それを割り出すことは簡単ではないし、
割り出したところでコントロール出来るものでもない。
だが結果的に、人類の個体数は調整されていくだろう。
それは、個人の意志を超えて、人類全体の意志として、
あるいは地球全体の意志として、調整されていく。
既に日本では出生率が2.08を下回り、
人口は減り続ける傾向にある。
晩婚化や価値観の変化がその原因であると言われているが、
その原因の原因が何であるのかは誰にも分からない。
どんなに産めと言われても、産みたくない人は産まない。
どんなに産むなと言われても、産みたい人は産む。
だがその意志は、本当に自分の意思なのだろうか。
貧困だから産まないと言うが、
もっと貧困な頃のほうが出生率は高かった。
そして世界を見渡しても、
先進国よりも発展途上国の方が出生率は高い。
人間以外の動物を見ても、その傾向は明らかである。
成体になる確率の低い動物は、たくさんの子供を産む。
成体になる確率の高い動物は、少ない子供しか産まない。
それは、個体数をコントロールするため。
医療の進歩により、人間は死ななくなった。
そして寿命が延びた。
当然のことながら、出生率は下がる。
これは極めて自然な流れなのである。
私たちは明日の天気を予測することは出来るが、
コントロールすることは出来ない。
春の訪れも、冬の到来も、
予測することは出来てもコントロールすることは出来ない。
大事なのはコントロールすることではなく、
何が起こるのかを正しく予測することである。
人口の増加も、それによる経済発展も、いずれは終わる。
それが賢明な未来予測ではないだろうか。
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