社員さまの時代

会社という単位でのブランディングと集客。
ここに限界を感じるようになった。
莫大な資金力と知名度で勝負できる大企業でさえ、
価格競争・広告合戦から抜け出せないでいる。

ブランドさえ出来上がれば収穫の時期が続く。
そんな穏やかな時代はとっくに終焉している。
世界的なブランドの統合と
インフラ企業によるマーケットの独占。
ここで勝ち組になれない限り
収穫時期はやってこないのである。

ましてや中小企業が
ここで生き残ることなど不可能に近い。
特殊な技術でニッチ市場の独占でもしない限り、
利益はどんどん削られていく。
ただし大企業と違うのは、
小さな会社には選択肢が残されていること。
小さな飛行機は揺れが大きい分、
いざとなれば道路にでも不時着できる強さがある。

一度着陸し、装備を入れ替え、再び離陸する。
それが多くの中小企業が取るべき選択なのである。
入れ替えるべきはビジネスモデルだ。
企業ブランドで集めた顧客を社員に振り分ける。
この従来型ビジネスの流れを逆流させる必要がある。

どんなに斬新な商品も、どんな奇抜な売り方も、
ひと月もあれば簡単に真似されてしまう時代。
もはや企業単位での差別化は限界に来ている。
似たような商品を、似たような販売方法で、
少しだけ安く売る。その連鎖によって
企業利益は限界まで削られてしまった。

他社が絶対に真似ができないもの。
最終的にそれは人しかない。
会社単位ではなく個人単位でブランドをつくる。
個人指名での集客を増やす。
人そのものを商品やブランドに仕立て直すのである。

私はこのような人間です。
私が担当したらこのように納品します。
私はこのようなポリシーで仕事を受けています。
明確に発信することで“私だけの商品”が完成する。
買いたい顧客はその個人に頼むしかない。

自分の商品を持ち、自分の見込み客を抱え、
自分で集客し納品できる個人。
そんな人が会社員になる必要があるのか。
今までの会社ならその必要は感じないだろう。
だからこそビジネスモデルのリニューアルが
必要なのである。

会社のブランドやサービスを、
顧客ではなく社員に向けて作り直す。
これが新時代の中小企業の姿である。
ひとりでも完結できる人材があえて所属したくなる会社。
それだけの環境とサポート体制をつくるのだ。

勝手に発信し、勝手に集客し、
勝手に納品して稼いでくれる社員。
ありがたい社員さまこそが
企業にとってのお客様となるのである。

 

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1件のコメントがあります

  1. コラムありがとうございます。
    現在、正規雇用?、非正規雇用?、業務委託?、又は試用期間での無償労働?等々、
    お互い期待する緩い関係の方1名にコラムの考えを適用したいと思います。
    コラム、ありがとうございます。

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