第173回 自分に対する問いを疑う

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

「どうすれば儲かるお店になるのか?」
この問いに対して頭を悩ませる店舗オーナーは多いのではないでしょうか。

事実、この答えを知りたい人が多いからこそ、多くの儲かる方法を教える情報がネットや本で出回っているのでしょうし、私自身も開業してからしばらくの間、この問いに対する答えを探し続けていました。

でも、今から振り返って考えると思うのです。
「これはそもそも、問い自体が間違っていたのではないか?」と。


「どうすれば儲かるお店になるのか?」という問い。
この問いに対する答えを考えることは、正しい行為のようにも思えます。

ただ、実際にこの問いに対して当時の私が出した答えはこんな感じでした。

利益率の高い商品を作ってみよう。
積極的に商品を提案をして単価を上げよう。
リピーターの来店頻度を高められないか考えよう。

一見、どれも間違ってはいない取り組みのようにも見えますが、今こうした答えを並べてみると、全ての答えに共通した違和感を感じるのです。

その違和感というのが「自分のメリットばかりで、お客さんのメリットが考えられていない」ということ。商売がお客さんの役に立った結果としてお金を貰うという流れであるならば、まず考えるべきなのは自分の儲けよりもお客さんのメリットだということ。

そして、自分に対して「どうすれば儲かるお店になるのか?」ではなく、「どうすればお客さんに楽しんでもらえるお店になるのか?」と問いを変えることで、自分から出てくる答えも変えることが出来ると思うのです。

もっとバーの楽しさに興味を持ってもらえるメニュー構成にしよう。
お店での滞在時間の価値を高めるために、もっと非日常感を演出しよう。
バーに初めて入る人が感じる不安を払拭できる看板を考えてみよう。

私自身、問いを変えたことでこうした答えを得ることができ、こうした取り組みを行った結果、多くのお客さんに楽しんでもらえるお店が出来たのではないかと感じます。

お客さんに対するメリットを考えるからこそお客さんが増えるのであり、お客さんが増えた結果として、自分のお店の儲けが増えるということ。この順序を間違えずに自分に問うことでしか、正しい答えにたどり着く方法はないのだと、今は思うのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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