第243回「仕事ができる高齢者とは」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第242回「求人はこのゾーンを狙え」

 第243回「仕事ができる高齢者とは」 


安田

91歳の現役警備員という方がいまして。クライアントから指名で仕事が来るそうです。

石塚

素晴らしいじゃないですか。

安田

スキルがあって元気だったら90歳でも働けるってことですよね。

石塚

警備の仕事って毎日立ってるでしょ。

安田

はい。

石塚

だから足が丈夫で若いんですよ。

安田

なるほど。

石塚

立っている時間が長いってことは、毎日運動しているってことだから。踊りをやってる方なんて80代でも若いですよ。姿勢もいいし。

安田

へえ〜。そうなんですね。

石塚

やっぱり人って足から衰えるんですよ。ホワイトカラーでデスクワークなんて弱いです。腹も出てきて。

安田

つまり体を酷使してるブルーカラーのほうが、結果的に仕事寿命は長いと。

石塚

それは間違いないです。

安田

現場で人が採れない会社は狙い目ですよね。60歳以上。

石塚

はい、狙い目です。求人の出し方に工夫が必要ですけど。

安田

どんな工夫ですか?

石塚

お金より「自分が必要とされている」ということの訴求ですね。

安田

ああ、なるほど。

石塚

ここがすごく大事なポイントで。きちんと書いてあげればすごくいい人が来てくれます。

安田

この警備の方もきっとそうなんでしょうね。

石塚

だって嬉しいじゃないですか。90になっても「ぜひお願いします」なんて指名が来たら。

安田

ですよね。

石塚

安田さんだって90過ぎてもやるでしょ?新商品開発とか。

安田

いやいやいや、生きてませんよ(笑)

石塚

でも生きてたらやってるでしょう。

安田

生きてたら何かやってるでしょうね。商品開発は無理かもしれませんけど。

石塚

「あなたに是非お願いしたい」なんて言われたら最高でしょう。職人冥利に尽きるって、こういうことじゃないですか。

安田

まあ嬉しいですよね。確かにその年になったらお金はあまり関係ないかも。

石塚

子どもが自立してくれたら、自分たち夫婦が食えればいいので。

安田

年金もゼロではないし。好きなことをやって余生を楽しみながら「是非」って言われる仕事だけ受けて。素敵な人生ですね。

石塚

絶対そうですよ。だから「是非」と言ってもらえる人にならないと。

安田

そうなるためには何が必要ですか。

石塚

安田さんが日頃から言っていることですよ。「自分の商品づくり」に尽きると思う。

安田

やっぱりそうですよね。

石塚

「自分の商品を持っている」という状態は強いです。自分のターゲットを設定して、販売ロジックを考える。若いうちから全員それをやったほうがいい。

安田

フリーで生きていくんだったら必須ですね。

石塚

たぶんこの警備の人もブランドが出来てるんですよ。この人に頼むと「手際が良くて事故が起きない」みたいな。

安田

そうじゃないと指名は来ませんよね。

石塚

警備の仕事って交通誘導がほとんどなんです。入る車と出る車の誘導。

安田

よく人形がやってるヤツですね。

石塚

人形ではダメな仕事もあるんです。自動車だけじゃなく、一般の歩行者とか自転車とか、そこをどう捌いていくか。あれはやっぱり職人技ですよ。

安田

なるほど。

石塚

この人が警備をやると、運転手さんも歩行者も、みんなすごくスムーズなんでしょう。

安田

誘導スキルが高いわけですね。

石塚

やっぱり芸は身を助けるというか。警備技術だってどんどん高めていけば、何歳になっても声がかかりますよ。

安田

そういう技術を若い人に教えてあげる仕事はどうですか。後継者を育てるのも生きがいにつながると思いますけど。

石塚

まさにその切り口で成功した求人事例がいくつもあります。

安田

やっぱりそうですよね。

石塚

求人票に「あなたに期待したいのは教えることです」「未経験者の20代にあなたのスキルを伝授してください」とはっきり書いておく。

安田

いい人が来ますか?

石塚

東芝グループの優秀な方が来たことがあります。

安田

大手には育てる仕事がたくさんありそうですけど。

石塚

そうでもないんですよ。もう新卒採用を止めてたり。「教えたいことはいっぱいあるんだけど新しい社員が入って来ない」って。

安田

なるほど。

石塚

スマホでたまたま僕が作った求人を見て。「これだ!」と思ったそうです。今でも見事に機能していらっしゃいますよ。

安田

せっかく培ってきた技術や経験を「誰かに教えたい」「残したい」って思いますよね。

石塚

未経験者採用と組み合わせるとすごくシナジーがいいです。

安田

同時に採用するってことですか。

石塚

はい。求人票は分けますけど。60歳以上の技術者と20代の未経験者という組み合わせ。これはすごく上手くいきます。

安田

「言葉が通じない」とか、そういう問題は起こらないんですか。

石塚

仕事の中でのコミュニケーションはまったく問題ないです。若い人も一生懸命だし。

安田

職場はどんな空気感なんですか。

石塚

これだけ年齢差があるとライバル心もないし、とても和やかですね。

安田

イメージ的には孫みたいな感じですか。

石塚

おっしゃる通り。孫とおじいちゃんの関係ですね。

安田

若い子も嬉しいんですかね。おじいちゃんに教えてもらえるって。

石塚

いま若い子が辞める理由の1位は「放置されて教えてくれないこと」なんですよ。だからすごく安心すると思います。

安田

そこへの対策にもなるわけですね。

石塚

はい。若い子を募集する時に「こういう技術を持った人がしっかり教えてくれます」というのは、すごく大きなウリになります。

安田

相性抜群ですね。

石塚

そうなんです。でも意外とやってる会社は少なくて。20代未経験者の採用で困っている会社はぜひ試してみてください。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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