2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第243回「仕事ができる高齢者とは」
91歳の現役警備員という方がいまして。クライアントから指名で仕事が来るそうです。
素晴らしいじゃないですか。
スキルがあって元気だったら90歳でも働けるってことですよね。
警備の仕事って毎日立ってるでしょ。
はい。
だから足が丈夫で若いんですよ。
なるほど。
立っている時間が長いってことは、毎日運動しているってことだから。踊りをやってる方なんて80代でも若いですよ。姿勢もいいし。
へえ〜。そうなんですね。
やっぱり人って足から衰えるんですよ。ホワイトカラーでデスクワークなんて弱いです。腹も出てきて。
つまり体を酷使してるブルーカラーのほうが、結果的に仕事寿命は長いと。
それは間違いないです。
現場で人が採れない会社は狙い目ですよね。60歳以上。
はい、狙い目です。求人の出し方に工夫が必要ですけど。
どんな工夫ですか?
お金より「自分が必要とされている」ということの訴求ですね。
ああ、なるほど。
ここがすごく大事なポイントで。きちんと書いてあげればすごくいい人が来てくれます。
この警備の方もきっとそうなんでしょうね。
だって嬉しいじゃないですか。90になっても「ぜひお願いします」なんて指名が来たら。
ですよね。
安田さんだって90過ぎてもやるでしょ?新商品開発とか。
いやいやいや、生きてませんよ(笑)
でも生きてたらやってるでしょう。
生きてたら何かやってるでしょうね。商品開発は無理かもしれませんけど。
「あなたに是非お願いしたい」なんて言われたら最高でしょう。職人冥利に尽きるって、こういうことじゃないですか。
まあ嬉しいですよね。確かにその年になったらお金はあまり関係ないかも。
子どもが自立してくれたら、自分たち夫婦が食えればいいので。
年金もゼロではないし。好きなことをやって余生を楽しみながら「是非」って言われる仕事だけ受けて。素敵な人生ですね。
絶対そうですよ。だから「是非」と言ってもらえる人にならないと。
そうなるためには何が必要ですか。
安田さんが日頃から言っていることですよ。「自分の商品づくり」に尽きると思う。
やっぱりそうですよね。
「自分の商品を持っている」という状態は強いです。自分のターゲットを設定して、販売ロジックを考える。若いうちから全員それをやったほうがいい。
フリーで生きていくんだったら必須ですね。
たぶんこの警備の人もブランドが出来てるんですよ。この人に頼むと「手際が良くて事故が起きない」みたいな。
そうじゃないと指名は来ませんよね。
警備の仕事って交通誘導がほとんどなんです。入る車と出る車の誘導。
よく人形がやってるヤツですね。
人形ではダメな仕事もあるんです。自動車だけじゃなく、一般の歩行者とか自転車とか、そこをどう捌いていくか。あれはやっぱり職人技ですよ。
なるほど。
この人が警備をやると、運転手さんも歩行者も、みんなすごくスムーズなんでしょう。
誘導スキルが高いわけですね。
やっぱり芸は身を助けるというか。警備技術だってどんどん高めていけば、何歳になっても声がかかりますよ。
そういう技術を若い人に教えてあげる仕事はどうですか。後継者を育てるのも生きがいにつながると思いますけど。
まさにその切り口で成功した求人事例がいくつもあります。
やっぱりそうですよね。
求人票に「あなたに期待したいのは教えることです」「未経験者の20代にあなたのスキルを伝授してください」とはっきり書いておく。
いい人が来ますか?
東芝グループの優秀な方が来たことがあります。
大手には育てる仕事がたくさんありそうですけど。
そうでもないんですよ。もう新卒採用を止めてたり。「教えたいことはいっぱいあるんだけど新しい社員が入って来ない」って。
なるほど。
スマホでたまたま僕が作った求人を見て。「これだ!」と思ったそうです。今でも見事に機能していらっしゃいますよ。
せっかく培ってきた技術や経験を「誰かに教えたい」「残したい」って思いますよね。
未経験者採用と組み合わせるとすごくシナジーがいいです。
同時に採用するってことですか。
はい。求人票は分けますけど。60歳以上の技術者と20代の未経験者という組み合わせ。これはすごく上手くいきます。
「言葉が通じない」とか、そういう問題は起こらないんですか。
仕事の中でのコミュニケーションはまったく問題ないです。若い人も一生懸命だし。
職場はどんな空気感なんですか。
これだけ年齢差があるとライバル心もないし、とても和やかですね。
イメージ的には孫みたいな感じですか。
おっしゃる通り。孫とおじいちゃんの関係ですね。
若い子も嬉しいんですかね。おじいちゃんに教えてもらえるって。
いま若い子が辞める理由の1位は「放置されて教えてくれないこと」なんですよ。だからすごく安心すると思います。
そこへの対策にもなるわけですね。
はい。若い子を募集する時に「こういう技術を持った人がしっかり教えてくれます」というのは、すごく大きなウリになります。
相性抜群ですね。
そうなんです。でも意外とやってる会社は少なくて。20代未経験者の採用で困っている会社はぜひ試してみてください。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。