第2回 官僚時代の給与・勤務時間は?

この対談について

国を動かす役人、官僚とは実際のところどんな人たちなのか。どんな仕事をし、どんなやりがいを、どんな辛さを感じるのか。そして、そんな特別な立場を捨て連続起業家となった理由とは?実は長年の安田佳生ファンだったという酒井秀夫さんの頭の中を探ります。

第2回 官僚時代の給与・勤務時間は?

安田
具体的に言うと、官僚をしていたのは何年間なんですか。

酒井
1995年に入って、まる6年間ですかね。
安田
東大法学部を出て官僚に、って、文句なく超エリートコースじゃないですか。どうして辞めることになったんでしょう。

酒井
そうですね。少し不遜な言い方になってしまうかもしれませんが、その6年間で役所の面白いところはだいたい経験できたな、というのがあって。
安田
そうなんですか?普通の企業だと、最初の6年なんてコピー取りしかさせてもらえないようなイメージですけど。

酒井
確かに入って数年間はコピー取って階段を走り回ってばかりいたんですけど(笑)。でも、だんだんと走っていく先が総理官邸とかになっていくわけですよ。
安田
総理官邸!ということは、総理にも会ったりするんですか?

酒井
総理ご本人にお目にかかることは滅多にありませんでしたけど。でも、有名な秘書官の方に資料を渡したりしていましたね。真夜中に手紙を届けにいったこともあります。
安田
なるほど。確かに映画みたいで面白い世界ですが、6年間ずっとそういう仕事をしていたわけではないでしょう?

酒井
そうですね。年次が上がるに従って、重要な会議などにも参加するようになりましたね。
安田
例えばどんな会議なんですか?言える範囲で教えてほしいんですけど。

酒井
そうですねえ。例えば当時、国は「規制改革」というのをやってたんですよ。要するに、市場の規制を緩和して、経済をもっと活性化させようというものなんですが。
安田
ああ、ありましたね。

酒井
そのための会議が開催されるんですが、そうそうたる顔ぶれなわけですよ。有名企業の社長さんや有名大学の教授、そして各省庁の局長や課長が集まって話し合う。
安田
そこに酒井さんも参加された、ということですか?

酒井
会議自体には出ないんですが、発表ではこういう事を言ったほうがいいんじゃないかとか、次の会議はこんな風に進めるべきだとか、そういう議論に私も加わらせてもらって。
安田
すごいですね。その会議って、言わば国の未来を決める集まりなわけでしょう?

酒井
そうですね。私たちが話し合って決めたことによって、法律が変わったりするので。あとは当時、半導体業界の再編みたいなことを経産省主体でやっていたんです。その仕事も印象的ですね。
安田
業界の再編ってことは、各企業の調査みたいなことをするわけですか。経営状況はどうかとか。

酒井
そういう面もなくはないですが、私たちの視点はもう少しマクロというか。「国の未来としてどういう形にするのが最適か」というような。
安田
なるほど。日立がどうだ、東芝がどうだ、という話ではないわけですね。

酒井
そうですね。企業には株主他様々なステークホルダーがいて企業の理屈があるわけで、私たち国の理屈が常に受け入れられるとも限りませんし。
安田
企業が従ってくれない場合はどうするんですか?

酒井
まあ、そこを考えるのも私たちの仕事というか。どうすれば国の方向性を理解してもらえるか、を皆で一生懸命考える。
安田
なるほど。6年で満足できたという理由がわかってきました。ちなみに官僚時代の勤務時間ってどれくらいだったんですか?

酒井
そうですねえ。まあ、定時が24時って感じでしたね。
安田
えっ、それは朝から働いて、ってことですよね。

酒井
ええ。役所はちょっと遅いんで朝は9時半からなんですけど、そこから24時まで働きっぱなしでしたね。23時上がりだと早帰りしてるイメージ。
安田
なんと…。でも確かに昔って、霞が関のあたりは夜中まで電気がついてるってイメージでした。

酒井
時代もありますよね。定時が24時っていうだけで、25時26時になることもザラでした。
安田
そんな時間だともう電車もないわけでしょう?皆さんタクシーで帰られるわけですか。

酒井
そうですね。タクシーチケットというのがあって。でも一つの課に何枚って配分が決まってるわけですよ。だからお偉いさんたちが使っちゃうと、私たちみたいな下っ端には回ってこない(笑)。
安田
そういう時はどうするんですか?自腹で乗るわけですか。

酒井
お金がある時はそうしてましたね。ないときはそのまま省庁に泊まりです。ソファで仮眠して、朝、着替えだけ取りに自宅に戻るみたいな。
安田
すごいなあ。ちなみに、それほど働いてお給料はどれくらいなんですか?

酒井
どうでしたかね。正確には覚えていませんが、400〜500万円くらいだったと思います。
安田
それ、絶対に残業代踏み倒されてますよね(笑)。

酒井
まあ、そうですね(笑)。最近は河野大臣が「ちゃんと残業代払おう」って提言もされていたし、変わったと思うんですけど。
安田
やっぱり辞める理由として、そういうお金事情も関係してたんじゃないかと思うんですけど。

酒井
うーん、いや、それはあんまりなかったですよ。もうちょっと広い部屋に住みたいなあ、くらいは思ってましたけど。
安田
そうですか。そもそも民間企業についてはどういう印象なんですか?そのへんの経営者より俺の方がどう考えても優秀だろう、とか思わなかったですか。

酒井
いやいや(笑)。シンプルに面白そうだなと思いましたよ。企業に行った大学の仲間から話を聞いたりして。
安田
なるほど。では次回は酒井さんが官僚を辞めた後の話を聞いていきましょう。

 

 


対談している二人

酒井 秀夫(さかい ひでお)
元官僚/連続起業家

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経済産業省→ベイン→ITコンサル会社→独立。現在、 株式会社エイチエスパートナーズライズエイト株式会社株式会社FANDEAL(ファンディアル)など複数の会社の代表をしています。地域、ベンチャー、産官学連携、新事業創出等いろいろと楽しそうな話を見つけて絡んでおります。現在の関心はWEB3の概念を使って、地域課題、社会課題解決に取り組むこと。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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