セブン&アイってファンドに狙われてるんですか？

セブン&アイは株価に対して配当が少なめだから。

少ないと狙われるんですか？

だって株主は不満じゃないですか。「おまえら儲けている割には株主配当が少ないじゃんか」って。

そういう会社を海外の投資ファンドは狙ってくると。

配当を増やせる余地がありますからね。

そもそもなぜ配当が少ないんですか？

セブン&アイの場合は、上場企業でありながら株主ガバナンスがほとんど効かないから。

そんなこと許されるんですか？

まあ結果的にそうなっちゃっているわけですよ。日本は結構多いんです。

そうなんですか。

創業家が株を持ってたり。たとえばセブンも井阪さんが続投だっていったら「あ、続投でございます」みたいな感じで。

創業家が株をほとんど持ってるってことですか。

いや、さすがにほとんどは持ってないですね。

だったらなぜ創業家の言うことを聞くんですか。株主の言うことを聞かないなら「取締役交代だ！」ってなりませんか。

その権限はあります。

だけどそうはならない。

ならない。

それは日本の株主が大人しいからですか。

長く株を持ってる人はセブンのファンも多いし。「いやいや、急にそんなこといったって、ヨーカドーを売るっていうのも急じゃないの」みたいな。

優しいですね（笑）

本来の株主というのは「自分にどれぐらい配当をもたらしてくれるか」「どれぐらい儲けさせてくれるか」だけが興味なんです。

そういうイメージです。

日本の場合は株主に向いていない会社が多いんじゃないですか。

「長期的に保存して応援するよ」という感じですか。

そうそう。持ち合っていたりするし。

短期で利益を吐き出させる株主より、理想的に見えますけど。

そこなんですよ。日本の株主の考え方と、海外の株主の考え方って、ちょっと違うんです。

私は日本的な株主の方が本来の姿だと思いますけど。

安田さんのイメージは「ファン」に近いけど、海外投資家からしてみたら「いち投資先」でしかないから。株価純資産倍率、PBRしか見てない。

長期で保有して、その間に資産価値が高まっていけばいいじゃないですか。バフェットさんもそういう投資をしてますよね。

おっしゃる通り。

長期的に「絶対に伸びる」という優良企業の株を持ち続ける。これってとても手堅い戦略だと思うんですけど。

多くのファンドは、もっと短期で利益を出したがってるってことですよ。「10年後20年後なんか知ったこっちゃねーよ」と。

そういうファンドを良しとしない日本の株主は素晴らしいじゃないですか。

そうなんですよ。僕もセブンファンなので、簡単にヨーカドーを手放してほしくない。食品スーパーというのは利益率だけじゃない社会的な使命もあるので。

社会的使命ですか。

食品スーパーはそんなに儲かる事業じゃないけど、あれを手放しちゃったらお客さんは困るわけですよ。

こだわりのあるスーパーですもんね。

いいスーパーが地域にあることで周りの人を幸せにする。社会貢献度が高いビジネスなんです。

そうですよね。

だけどファンドというのは目先の利益しか考えないから。

配当を出さずに利益を貯めた方が株価は上がりそうですけど。

貯め込みすぎると「投資に回さないんだったら配当でよこせ」となります。その昔、村上さんがさんざん言ってましたよね。

村上さんは海外のファンドに発想が近いわけですね。

もう発想は金儲けだけなので。

「金儲けって悪いことですか？」ってテレビで言ってましたね。

メディアで散々叩かれたじゃないですか。

でも世界ではそれが当たり前だと。

そうなんですよ。

日本の会社とはちょっと合わないですよね。価値観が。

だから株式を公開するかどうかも考えなきゃいけない。要するに資金調達をどうするかを考えなきゃいけない。

日本的経営に徹すれば海外のファンドは離れていくんじゃないですか。

問題はですね、為替レートが日本は安いわけです。つまりアクティビストファンドにとって日本市場はいま大変狙い目だっていうことですよ。

円が安くなっちゃったので。

みんなバーゲンセールをやっているようなものですよ。バーゲンセールをやってるから、ある程度の大量取得、大量保有がしやすい。ケンカをふっかけやすいわけです。

知らないうちに外資系ファンドが大株主になっていて。

外資系金融が実は大株主だっていう会社、日本は多いんです。

そうなんですか。

運用商品の一部として組み込まれている日本企業って、実はものすごく多いんです。

じゃあ日本企業もいままでのように安泰じゃないってことですね。物言う株主を無視してやっていけるような状態ではないと。

これからいろんな攻防戦があると思います。

日本企業も外資系みたいにドラスティックになっていくんですかね。

オリンパスという会社はその典型ですね。

ドラスティックになったんですか？

オリンパスはアクティビストファンドに買われて、祖業であるカメラ事業を売りました。

え！オリンパスのカメラってもうないんですか。

オリンパスは医療機器と内視鏡を中心とした選択と集中をやってます。

業績はどうなんですか。

業績好調ですね。オリンパスはグローバル展開していますし、物言う株主をきっかけに社内改革のテコ入れもしちゃった。

オリンパスにとっては良かったと。

そうなんですよ。「物言う株主」をうまく使って会社自体を変えてしまった。こういう成功例もあるんです。

日本的な株主がいいのか悪いのか。分からなくなってきました。

それぞれに良さがあるんですよ。だけど日本的な経営だけではもう難しいでしょうね。