第257回「コロナ融資が焦げついた未来」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第256回「憧れの職業の終焉」

 第257回「コロナ融資が焦げついた未来」 


安田

コロナの融資が焦げつくんじゃないかって言われてます。

石塚

いやあ。間違い無いでしょう。ゼロゼロ融資だから。

安田

「金利ゼロ」ってことですよね。

石塚

金利がゼロ。保証人もゼロ。無利子無担保。

安田

それが42兆円もあると。

石塚

これから返済が始まるけど、返せない人が続出するでしょうね。

安田

石塚さんの予想では何%ぐらい回収できそうですか?

石塚

半分かな。

安田

半分!?本来だったら貸しちゃいけない人に、貸してるってことですね。

石塚

これ全件保証協会経由なんです。だから金融機関にとって恵みの雨なんですよ。

安田

リスクを負わずに貸せるわけですから。「貸せるだけ貸そう」って感じでしたもんね。

石塚

そうなんです。バブルのときに似てますよ。

安田

バブルの時は世の中の景気が良かったですから。今は真逆ですよ。

石塚

おっしゃる通り。

安田

でも、この借り入れによって、生きながらえて復活した会社もあるでしょうね。

石塚

もちろん。急場を乗り切った会社は多いと思います。良くなったかどうかは微妙ですけど。

安田

1年ぐらいで盛り返した会社が多いイメージですけど。

石塚

そういう会社は元々業績が良かったんですよ。

安田

確かに。

石塚

「ゼロ金利なら借りとこう」って会社がいっぱいあったから。そういうところは厳しいと思う。

安田

その資金で新規事業を立ち上げて、良くなった会社もあるんじゃないですか。

石塚

ゼロではないでしょうけど。そういう投資って、もっと早くやるべきなんですよ。

安田

早くやるべき?

石塚

コロナ融資が出たからやるというのでは遅すぎる。しかも返済が始まってから動き出したところがほとんど。

安田

そうなんですか。

石塚

いま返済が厳しくなってきたから、慌てて「何かやらなきゃ」って話じゃないですか。

安田

じゃあ借りたお金は残ってんですね。

石塚

飲食店系のまじめな会社は結構残ってますね。口座をわざわざ別にして「コロナ融資分はこっちに入れます。万が一のときにしか使いません」って。

安田

手堅いですね。

石塚

けど、ほとんどの会社は、目先の運転資金でぜんぶ消えてますよ。とくに手を打たないまま2年3年と経っちゃって。

安田

まあ基本的には運転資金に充てるための貸し付けですからね。

石塚

おっしゃる通り。だけどあくまでも融資ですから。

安田

はい。くれたわけじゃないので、返さなきゃいけない。

石塚

そこなんですよ。ある意味チャンスだったけど、これをチャンスに変えられた会社って存外少なかったんじゃないかと思います。

安田

変に生きながらえさせちゃっただけ。

石塚

いや。逆かもしれません。うがった見方かもしれないけど、僕はある意味40兆で国は中小企業を整理したかったんじゃないかと思う。

安田

え!どういうことですか?

石塚

コロナ前から苦しい中小企業はあったわけですよ。それが延命した。延命はしたけど「また貸してくれ」って来たら「もうだめですよ」と。「そろそろ退場するかどうするか考えなさい」っていう。

安田

恐ろしい。

石塚

ふるいにかけられている感じがしますね。

安田

でもそんな面倒なことをしますかね。コロナで手を差し伸べなければ、とっくに退場してるんじゃないですか。

石塚

「コロナで倒産した」ということを言われたくないから。

安田

「政府はなにやってたんだ!」って言われちゃう?

石塚

言われちゃう。とてもじゃないけど選挙が戦えない。

安田

つまり政府としては「やるべきことはやったけど、それでダメだったところは、もう仕方がない」と。

石塚

はい。残念ながら。

安田

42兆のうち20兆が返ってこないとしても、それで生産性の低い会社がつぶれて、人材が流動化してくれればOKだと。そういうことですか?

石塚

そういう深慮遠謀もあったと思う。

安田

なるほどー。でもたしかに、結果的にはそうなる可能性ありますよね。

石塚

ありますね。最近よく聞きます。

安田

単に延命しちゃったところは、どう考えても返済できないです。

石塚

できない。そんなこと最初から分かってるはずなんですよ。

安田

ちなみに今回の貸付って無担保無保証じゃないですか。返済されないところは最終的にどうなるんですか。

石塚

保証協会は政府系なので国税を投入して終わりですよ。

安田

つまり融資という形で税金をばら撒いたみたいなものですね。

石塚

だけど「中小企業をスクリーニングして淘汰する」という目的だとしたら、実にうまくできたシナリオだと思います。たった20兆で日本の生産性が上がるかもしれない。

安田

石塚さんの見立てでは何社くらいが退場すると思いますか?数千社では済まないですか。

石塚

済まないですね。万単位なのは間違いないです。

安田

中小企業は300〜400万社あると言われているので。政府の本音としては100万社ぐらい退場してほしいんですかね。

石塚

して欲しいでしょうね。「どうせおまえら法人税なんか何十年も払ったことないんだろ?」「払ってんのは源泉税と消費税だけだろ?」というのが本音。

安田

所得税なんてどの会社に入っても取りっぱぐれないですからね。

石塚

生産性の高い会社に人が移れば、所得税も増えます。

安田

確かに。でもそんなことになったら、さすがに選挙に影響が出ませんか?

石塚

これは現役の議員さんに聞いた話ですけど。「中小企業振興をやったって票にならん」って言ってました。

安田

そうなんですか。

石塚

はい。税収には結びつかないし、応援してくれる人も少ないし、票に結びつかないって。あまり言えないけど。

安田

中小企業は大手ほど団結力もないですからね。

石塚

生産性の高い中小企業だけ残ってくれれば、大成功じゃないですか。結果的にはいい政策だったということになるかもしれません。

安田

そういう会社にだけ返済を猶予するんでしょうか。

石塚

そういう会社にとっては返済なんて痛くもかゆくもないんですよ。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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