さよなら採用ビジネス 第118回「ズブズブなのは誰?」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第117回「次世代採用のキモ」

 第118回「ズブズブなのは誰?」 


安田

地方の経営者さんって「元大企業」という肩書きに弱いですよね。

石塚

おっしゃる通りです。

安田

コンサルや顧問の契約をして。じつは全然役に立ってないみたいな。

石塚

それは事実です。地方ではそういう人たちがけっこうお金を稼いでます。

安田

地方のほうが稼ぎやすいってことですか。

石塚

入り込むまでちょっと技術がいるんですけど。入り込んじゃうと競争がないので独壇場ですよ。

安田

やっぱり肩書きにやられちゃうんですか?

石塚

東京から来ましたっていうのと、前職がわりと分かりやすい有名企業出身であること。あとは見せ方がうまい人。

安田

どの企業出身が人気あるんですか?

石塚

そういう地方コンサル、地方商売人輩出の三大企業ってのがありまして。

安田

そんなのがあるんですか!

石塚

僕が言ってるだけですけど(笑)

安田

なるほど(笑)

石塚

電通、博報堂、リクルートです。

安田

やっぱそのあたりですか。

石塚

地方商人とでもいうか。地方自治体商人とでもいうか。自治体から予算を取るのも上手ですね。

安田

地方企業にはお抱えのクリエーターみたいな人もいますよね。「うちにはこういう人がいるから制作物は大丈夫なんだ」って。

石塚

地方自治体の職員さんって、勉強はできるし真面目なんだけど、ビジネスをやったことないから。分からないんですよね。

安田

でしょうね。

石塚

行政手続きとか、「予算をどう配分するか」というバランスを考えるのはうまい。けどエッジを立てて収益を生むようなことなんてやったことない。

安田

そういう人はそもそも公務員にはならないですよ。

石塚

そういう人たちを相手に、分かりやすく短時間で説明できて、なおかつその地方の有力者の紹介で「この人いいから」って入り込んでいく。

安田

で、お金を払っちゃうと。

石塚

分かんないから「よろしくご指導ください」となり、気が付くとかなりの予算がそのコンサル会社に流れてる。これが「地商」ですね。

安田

先生みたいな立場になるってことですか。

石塚

役所の部長や課長さんがすっかり信頼しちゃってますね。

安田

企業さんはどうですか?社長さんもコンサル好きが多そうですけど。

石塚

多いですね。

安田

「きっとできるんだろう」と思い込んで、結構な額のコンサル料をずっと払い続けてたり。

石塚

地方にまで営業に来る会社って実はかなり限られてるんですよ。だから、ちょっと仕事ができるとものすごく目立っちゃう。半歩しか違わないけど、その半歩がものすごい違いだったりするのが地方の特徴です。

安田

当然のことながらリクルートや電通にも「仕事ができる人」と「できない人」がいるわけで。本当にできる人なんてせいぜい1〜2割ですよね。

石塚

そうなんですよ。世間のイメージと違って意外とできない人が多いんです。

安田

でも社長さんって「元リクルート」「元電通」と聞くと、みんなできると思い込んでます。あれはなぜでしょう。

石塚

過大評価が定着しちゃってるから。

安田

確かに。元リクってだけでブランド価値がありますもんね。

石塚

あとは短期間で「できそうに見せる」のがうまい。そこは3社共通してますね。

安田

なんであんなに見せ方が上手なんでしょう。

石塚

いくつか手法があるんですけど。代表的な手法は知り会ったばかりなのに「え?」っていう知名度の人をすぐ紹介してくること。有名人とか。

安田

へえ。

石塚

地方の社長さんもビックリするじゃないですか。

安田

でしょうね。芸能人にでも会ったような感覚で。

石塚

「この人とつながってると、こんな出会いがあるのか」って。そういう世界観を見せるのはうまいです。あとはすごく有名な会社につないであげたり。

安田

ずっと紹介し続けてくれるなら、それなりに役に立つんですけど。

石塚

それは無理です。最初だけですね。

安田

本当にできる人も中にはいるんですか?

石塚

滅多にいませんね、そんな人。

安田

じゃあ「元電通」や「元リクルート」の人を紹介されたら、気を付けたほうがいい?

石塚

ただね、こういう面もあって。擁護するわけじゃないけど、地方優良企業の経営者さんの孤独感って、東京とは比較にならないぐらい強いんですよ。

安田

へえ。

石塚

地方は優良企業自体が少ないじゃないですか。だから同じ目線で話のできる人が地元にいないんですよ。

安田

なるほど。ということは社長とちゃんと会話できるだけでも「価値がある」ってことですね。

石塚

おっしゃる通りです。ディスカッションパートナーを求めてるわけですよ、向こうは。しかし社内にも地元にもそんな人がいない。だから飢餓感がすごく強いんです。

安田

そこまで考えてお金を払ってると。

石塚

「何でこんなレベルなのに続いてるのかな」ってのは、それにずっと付き合ってあげているという面も見逃せないと思う。

安田

そこまで割り切るんだったらいいですけど。「できそうに見えてできない人」の弊害って、すごく大きいじゃないですか。

石塚

関わり方によりますね。

安田

間違った戦略を進めたり。社内に悪影響を与えたり。できない人を「できる」と信じたがために、あとあと手痛い後遺症が残っていく。

石塚

そもそもコンサルや顧問は「期間を区切って」付き合ったほうがいいです。

安田

確かにそうですね。半年や1年で切れるってことが、顧問やコンサルのいいところですから。

石塚

はい。でもズブズブになってる会社は多いです。

安田

だったら雇用したほうがいいですよ。

石塚

雇用したら大赤字ですから。

安田

確かに。300〜400万では雇えないですからね。

石塚

人によっては2000万以上稼いでますから。

安田

じゃあどうしたらいいんですか?

石塚

先ほども言いましたけど、期間をきちんと決めること。

安田

何年も契約し続けるのはダメだと。

石塚

適度に間をあけてズブズブにならないように。それが基本。

安田

でも個人的な悩みまで相談しちゃうと、なかなかそれも出来なくなるんでしょうね。

石塚

社名は言えないですけど、有名な地方企業にもそういうケースが多いんです。

安田

それは結構有名な会社ですか?

石塚

はい。CMもやってるような有名な会社です。コンサルとズブズブの関係になっていて、社内がもうグチャグチャですね。

安田

そんな有名な会社でもあり得るんですね。

石塚

先ほども言いましたけど、地方の有名企業の経営者さんほど孤独なんですよ。相談相手に雇うのはいいけど絶対にズブズブはダメ。身も会社をも滅ぼします。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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