さよなら採用ビジネス 第117回「次世代採用のキモ」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第116回「大企業と小さなブルーオーシャン」

 第117回「次世代採用のキモ」 


安田

全国どこに住んでいても応募OK?そんな求人があるんですか。

石塚

リモートなので住む場所はどこでもOKってことです。

安田

なるほど。どういう会社のどんな職種なんですか?

石塚

ウェブパトロールをしている会社のウェブデザイナーさん。ECサイトを「これからつくろう」「強化しよう」っていうお客さまのwebコンテンツをつくる仕事です。

安田

webコンテンツをフルリモートでつくる仕事ですか。

石塚

はい。

安田

なるほど。だから「どこに住んでくれてもいいよ」ってことなんですね。

石塚

おっしゃる通りです。仙台市の会社さんですけど、仙台市に移住されるのであれば当然お金の支援もしますと。

安田

フルリモートの仕事って、いま増えてるんですか。

石塚

お手伝いするのは初めてですけど。増えてるとは聞いてます。

安田

リモートワークできる会社に「転職したい」という人が増えてるそうですね。

石塚

それは事実です。

安田

じゃあ企業側もリモートを積極的に取り入れないと、採用にも影響すると。

石塚

今後はそうなるでしょうね。ただしリモート勤務ができる職種は、まだまだ限定されてます。私が聞いてるレベルだと、いわゆるクリエイティブ関連がほとんど。

安田

そうなんですか。

石塚

セキュリティとコンプラが大きな理由ですけど。クリエイティブ系のデザイナー、もしくはITエンジニアが主流ですね。

安田

そこは想像がつく範疇ですね。仕事的にはリモートでぜんぜん支障ないっていう。

石塚

おっしゃる通り。

安田

今後はどうですか?たとえば営業マンも「会社に行く必要あるのかな」って仕事もあるじゃないですか。

石塚

インサイドセールスは大いにあり得ますね。今ものすごい求人が過熱してまして。

安田

へえ。インサイドセールス?具体的にどういう仕事なんですか。

石塚

お客さまと会わずして、お客さまから受注する仕事ですね。昔風に言うと内勤営業。

安田

お客さんからの問い合わせをつくる仕事ですか?

石塚

それもひとつのパターンですし、見込み客の発見からすべての場合もある。会社のリソースを使って「どうアプローチしてもいいよ」っていう。

安田

「お客さんのところに出向かない営業」というふうに考えればいいですか。

石塚

おっしゃる通りです。

安田

その求人が過熱してると。

石塚

そうです。そこに力を入れることで「めちゃくちゃ生産性が高くなる」ってことに、各企業が気付き始めたんですよ。

安田

今頃になって、やっとですか(笑)

石塚

安田さんは昔からやってましたけどね(笑)。1人優秀なインサイドセールスがいれば、営業マンの数を劇的に減らすことができます。

安田

契約する直前までインサイドでやれますもんね。営業マンは契約しにいくだけ。

石塚

営業の分業化が進むと「ここだけは優秀」という人の取り合いになります。ひとり抱えてしまえば組織全体がかなり強くなりますから。

安田

そうですよね。コロナとは関係なく、その方向にいくのが自然ですよ。苦手な人に飛び込みとか電話営業とかやらせ続けるのはもう限界。というか効率が悪すぎ。

石塚

もともと電話営業が多かった業種、たとえば広告代理業におけるSEOとか、ウェブ系広告代理店とか、そういうところほどインサイドセールスへの進化が早いです。

安田

へえ。そうなんですか。

石塚

はい。よく考えたらわざわざ会いにいく必要がないですから。メールで十分事足りる。

安田

なるほど。で、そういう職種は「リモート勤務」じゃないと採れなくなってきてると。

石塚

おっしゃる通りです。やっぱりコロナの影響もありますし。インサイドセールス化しようという会社が増えたことも大きいです。

安田

取り合いってことですよね?条件をよくして。

石塚

はい。本当に優秀な人って選べる立場なので、もう究極の売り手市場ですよ。

安田

そうなりますよね。

石塚

うちは出社どころか「全国どこ住んでもいいです」とか。報酬以外にもいろんなメリットを考えたり。

安田

たとえばどんな?

石塚

副業を認めるとか。「ウチ専業でなくてもいいですよ」って。こういう求人が急激に進んでるイメージですね。

安田

これまでの常識だと「とにかく営業マンをどんどん増やす」って感じでしたけど。そこに限界を感じてるってことですか。

石塚

おっしゃる通り。もうそれでは売れないですから。

安田

昔は「断られてからが営業だ」とか言われてましたよね。何度も何度も通ったりして。

石塚

全否定はしません。「三河屋営業」も有効なのは認めます。ただ何でもかんでも「じゅうたん爆撃でローラーしろ」ってのは時代とズレてる。顧客がそれを望んでませんから。

安田

とくに中小企業は効率を考えるべきですよ。資源が限られてますし。

石塚

おっしゃる通りですね。

安田

ただ単に営業マンを増やすんじゃなく、営業を分解していって「ピンポイントに能力の高い人」を採る。

石塚

それが正解です。

安田

そのために「リモートワーク」や「副業」は、当然の雇用条件として織り込んでいかなくちゃ駄目だと。

石塚

はい。逆に考えると、企業に育ててもらえるのは20代前半まで。28歳を過ぎると「ある程度の実績」がないと、ほとんど内定は出ません。

安田

当然の帰結ですよ。

石塚

はい。ポテンシャル採用は25歳まで。

安田

会社に言われるがまま電話営業とか続けてたら、大変なことになりますね。

石塚

ピンポイントのスキルを磨くべきですね。どこが得意なのかしっかりと考えて。

安田

ゼネラリスト的営業はもうダメですか?

石塚

厳しいと思います。企業はどんどんシビアになっていくので。

安田

たとえば職種的に「フルリモート」が無理な場合は、「半分は自宅勤務でOK」みたいなのもありですか?

石塚

どちらかというとゼロ百ですね。先ほど言ったようなウェブ関連、IT関連、あとインサイドセールスに関しては、必ずその検討をお願いしてます。

安田

もし石塚さんに「インサイドセールスの凄腕採用」を依頼するとして、フルリモート前提なら採れる可能性はありますか。

石塚

「どこに住んでても構わない」という条件であれば、応募はくると思います。

安田

採用の決め手は何ですか?

石塚

人によって違います。たとえば東京郊外の秩父長瀞あたりにアウトドアの聖地がすぐそこにあるシェアオフィスを持ってるとか。

安田

なるほど。その人にあった魅力を作っちゃうってことですね。

石塚

それができたらかなり有利です。

安田

そのくらいやる価値はありますよ。本当に飛び抜けた人を1人つかまえたら、それだけで会社全体の業績がアップしますから。

石塚

100名ぐらいの会社だったら、2人ぐらい飛び抜けた営業がいればもう回ります。

安田

たぶん囲い込もうとしない方がいいんでしょうね。そういう優秀な人は。

石塚

おっしゃる通り。その人の時間も空間も独占しようとせず、うまくスキルを活用していく。それが次世代採用のキモですね。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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