第25回「セブンイレブンの知財から見る食のミライとは?」

このコラムについて
世の中の情報は99%が「現在」または「過去」のものでしょう。たった1%の未来情報をつかめる人だけが、自分のキャリアやビジネスを輝かせるのです。でも、未来情報なんか手に入らないよ!と思ったアナタ。ご安心を。もしアナタが古い体質の会社に勤めているなら超ラッキー。そんな会社の経営者ならビジネスがハネるかも。

未来コンパスが、あなたの知らない未来を指し示します。

 25  セブンイレブンの知財から見る食のミライとは?

GoToEatで久々に外食を満喫した皆さん!
私も、好きなお店で食事することができました。おいしいご飯を食べると幸せな気持ちになりますね。
知財はそんな「食」にも深い関係があるんです。


商願2020-58847号(出願人:株式会社セブン-イレブン・ジャパン、味の素株式会社)

【商標】

【指定商品】肉製品,代用肉,主に代用肉からなる調理済み惣菜 など


2020年8月25日 セブンイレブンは、九州限定で「大豆を主原料にしたハンバーガー」を発売しました。健康上や宗教上の理由から肉を食べられない方への需要が見込まれます。

ところで、この商品のネーミングは「大豆ミート」バーガーであって、NEXT MEATではありません。では、NEXT MEATとはどんな商品でしょうか。予想してみましょう。ヒントとなるのは出願人、味の素が共同出願している点です。

味の素は、「培養肉」の製造方法についての特許を出願しています。
培養肉とは、牛・豚・鶏といった動物から採取した細胞を血清などに浸し、人工的に増殖させるものです。気候に左右されずに安定生産ができること、畜産と比較してメタン/Co2排出量が少ないため環境負荷も小さいことが利点と言われています。
動物保護の点から支持する人もいます。世界にはそれぞれ10億頭以上の牛や豚、羊の家畜がおり、それはすなわち屠殺の数です。培養肉の場合、その数は大きく減ると言われています。

その一方で、研究室で培養された肉を口にすることに抵抗を覚える人もいるでしょう。たとえ安全で倫理的にも環境的にも優れていても、「ラボ産のお肉」に不安や不快な気持ちを覚えてしまうのが人間です。

それを払しょくする一つの方法がネーミングです。
米軍への資金提供が「おもいやり予算」、海水浴場が「ビーチリゾート」、骨とう品が「アンティーク」に変換されてイメージが変わったように、培養肉が「NEXT MEAT」になることで与える印象が変わります。ネーミングが持つ力です。

余談ですが、大事なポイントをもう一つ。
セブンイレブンの出願から15日後に、ネクストミーツ株式会社が商標「Next Meats(指定役務:飲食料品の小売等役務)」を出願しました。これはセブンイレブンのNEXT MEATと抵触し、権利をとれない可能性があります。
どんなに良いコンセプト、良いネーミングでも他社に先を越されると使えません。ビジネスを始めるにあたっては大怪我する前にネーミングの権利をおさえましょう。知財は早い者勝ち!2位じゃダメなんです。

 


 この記事を書いた人  

八重田 貴司(やえだ たかし)

外資系企業/法務・知財管掌。弁理士。
会社での業務とは別に、中小・ベンチャー企業への知財サポートをライフワークとする。クライアント企業が気づいていない知的財産を最大化させ、上場時の株価を上げたり、高値で会社売却M&Aをしたりと言った”知財を使って会社を跳ねさせること”を目指す。
仕事としても個人としても新しいビジネスに興味があり、尖ったビジネスモデルを見聞きするのが好き。

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