この対談について
庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第7回 レースカーテンのいらないプライベート庭空間
第7回 レースカーテンのいらないプライベート庭空間
いろいろなお宅でお庭を作られる中で、せっかく作ったお庭を活かせていないというか、もったいないなと感じることはありますか?
ありますねぇ。一番多いのは、レースカーテンを閉めっぱなしにしていて、家の中から全くお庭が見えない状態になってしまっているケースです。せっかく良い庭なのにもったいないなぁと。
あぁ、なるほど。道路やお隣さんから家の中が見えてしまうから閉めておくんでしょうけどね。
そうなんですよね。だからこそ、もう少し建築屋さんと相談しながら工夫できればいいのに、と思うわけです。プライベートな空間を保ちつつ、でも閉鎖的にならないように。
というと、家の中からはちゃんとお庭が見えるけど、外からは見えないような作りができるんですか?
イメージで言うと、外から見える庭と、中から見る庭の位置をズラす感じです。
ああ、なるほど。外から見たのと中から見たのでは違う部分が見えると。
ええ。中から見える表情と、外から見える表情とで少し変えてあげるんです。
プライベート確保という意味だけじゃなく、家の中からお庭を見た時に、外から見るのとまた違った驚きや喜びがあると。
そうそう。外から全部が見えてしまわないように一部を隠すようにしたり、中に入るとこんなお庭なんだっていう発見があるような。
それは楽しいですね。ちなみに外から隠す方法として、塀や生垣などもあると思うんですけど、中島さんとしてはどれがおすすめなんですか?
塀や生垣で全部囲ってしまうよりも、植栽を背景のように使うのがおすすめですね。プライベート空間は大きな門柱を作ってしっかり隠しながら、他は植栽を生かして向こう側が見えるようにして。
植栽や門柱を部分ごとに使い分けるんですね。人によってはきっちり線を引いて「ここからは私の土地です」と区切りたい人もいるような気がしますけど。
もちろんそれもできますけど、閉鎖的すぎても息が詰まってしまうように感じるので、あまりおすすめはしていませんね。
それはそうかもしれませんね。外から中が見えないっていうことは中からも外が見えないってことですもんね。すごい狭く感じちゃいますよね。
ええ。僕はどうしても広がりを見せたいので、お庭で過ごしていても道路の方まで見える部分もあってもいいんじゃないかと思うんです。
なるほど。じゃあ中島さんの好きに作っていいと言われたら、どんな風に作るんですか?
ケースバイケースではありますけど。例えば家と道路で高低差がある場合は、石を置いてそこを植物で隠したり。でも、生垣はほとんど作らないですね。
そうなんですか。生垣を選ばない理由は何かあるんですか?
生垣ってメンテナンスがすごく大変なんですよ。壁として使うので真四角にカットするわけで、その分お金もかかりますし。
へえ、「樹木で塀を作る」っていうと生垣のイメージが強かったんですが、けっこう大変なんですね。
実はそうなんです。日本では昔からポピュラーではあったんですけど。
ですよね。私が子供の頃は生垣で囲っている家ばかりでした。それがだんだんとコンクリート塀に変わっていって……そうか、あれは生垣のメンテナンスが大変だからコンクリートに変わっていったんですかね。
そういう面も大いにあると思います。生垣だと中からだけでなく外からも切って、さらに上も揃えなきゃいけない。伸びるのが早い木を入れてしまうと、年に1回刈っていてもボサボサに見えたりして、手間の割に見栄えがあまりよくなかったりするんです。
そういえば、放っておくと先端がチクチクしてくる生垣があるじゃないですか。すごく温かみがあっていい木なんですけど、ちょっと植木屋さんが来ないとなんかチクチクしちゃって病気みたいになっちゃう。
ああ、「カイヅカイブキ」ですね。あれは放っておくと言うよりは、切りすぎてしまうと元々の品種に戻ってしまうんです。先祖返りと言うんですけど。
へえ! 切りすぎると先祖返りしちゃって、結果チクチクになるわけですか。
そうなんです。葉っぱの先を切るだけなら大丈夫なんですけど、葉の付け根から切るとチクチクになってしまうんです。
おもしろいなぁ。でも植木屋さんは大変ですね。一言で生垣と言っても、それぞれの木に合わせた知識や技術がないといけない。
そうですね。それに、生垣のメンテナンスって、知識や技術が必要なわりに比較的安価な作業なんですよね。だから、あんまり丁寧に管理してもらえないことも多いと思います。
なるほど。では生垣じゃないとしたら、どういう風に塀を作るのがおすすめですか?
塀というよりは、木越しに少し向こう側が透けて見えるような感じがいいと思いますね。
林の向こうに薄っすらと人が見えるような感じですかね。
ええ、まさにそういうイメージです。気配だけが感じられるような。
なるほど。そういう風にお庭を作れば、レースカーテンを閉めなくてもプライベート空間は守れるわけですね。
そうですね。お庭を楽しみながら過ごしていただけると思います。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。