第257回 学校に行く意味

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第257回「学校に行く意味」


安田

教員不足が大きな問題になってます。教育実習に行った時点で「こんなの無理だ」ってリタイアしちゃうそうです。

久野

このままじゃまずいですよ。

安田

国がそこに予算つけようとしてるんですけど。5億円の補正予算。この程度で状況は変わるんでしょうか。

久野

変わらないと思います。根本的な業務の見直しが必要ですね。まず先生の業務量が多すぎる。

安田

授業をやるための準備が必要で、終わった後の残業も多いし、クラブ活動も見ないといけないし。

久野

仕事量が報酬に見合ってないんですよ。

安田

だから若い先生がどんどん辞めてしまって。リタイアした先生に頼らざるを得ないそうです。

久野

それもどこかで破綻しますよ。

安田

いっそのこと全部N校にしちゃうのはどうですか。N小N中N高という流れで。オンラインなら生徒500人に対して1人2人の先生で済むわけじゃないですか。

久野

そういうことも考えなくちゃいけない時期に来ていると思います。

安田

N校の大学進学率って9割を超えているそうです。しかも結構いい大学に合格していて。大学に行くレベルの学力をつけるならオンラインで十分ってことですね。

久野

頭が良すぎて普通の学校に馴染めない子も多いみたいです。だから一律には判断できないんですけど。選択肢が増えるのはいいことです。

安田

生徒数が増えれば自由に先生を選べるようになるかもしれないし。時間に縛られることもないし。授業に遅れても後で動画を見返せばいいし。

久野

「学校教育はそこだけじゃないぞ」という国の基本理念もありますから。100%オンライン化はさすがに難しいと思います。ただミックスしていくことは大事でしょうね。

安田

「人との付き合いや社会性を学ぶことが大事だ」っていう人が多いんですけど。その社会性によって自殺する子も出てくるわけじゃないですか。

久野

そうですよね。

安田

狭い社会での人付き合いなんてどうでもいいと思いますけど。そこに押し込めようとするから窮屈になるわけで。

久野

通いたい人は通えばいいし、行きたくない人はオンラインも認めればいい。選択肢は多いほうがいいと思います。

安田

人との出会いなんて学校の中だけじゃないし。スポーツクラブに入るのもいいし、アルバイトするのもいいし。

久野

それに現実問題として、先生が確保できないと学校は維持できませんから。

安田

今の現状を見て「学校の先生になりたい」なんていう若者は増えないですよ。

久野

給与が安い上に労働時間が長すぎますよね。

安田

超ブラックですから。学校の先生は。

久野

親のハラスメントもすごいし。下手するとSNSで血祭りにあげられたり。

安田

「給食代は払わない」とか平気で言ってくるし。

久野

先生がその回収までやらせられるわけですよ。

安田

大変ですよね。もはや憧れの先生像とギャップがあり過ぎ。

久野

自分だったらすぐクビになると思います(笑)

安田

先生になる人って真面目で優秀な人が多そうじゃないですか。欲しい会社はいくらでもありますよ。

久野

だから資格はあるけど「先生にはならない」って人が増えてます。看護士とか保育士さんと同じですね。

安田

このまま先生になりたい人が減っていくと先生の質もどんどん低下していきます。

久野

教育は国家の根幹ですからね。本当は最も優秀な人を送り込まないといけないのに。

安田

今の学校は社会が狭過ぎますよ。下手すると10年ぐらい同じコミュニティにずっと押し込められて。

久野

選択肢が無さすぎますよね。

安田

やはりN高化して先生や同級生を選べるようにしたほうがいいです。リアルな接点の場は別に作ればいいじゃないですか。

久野

日本で最もわかりやすく社会を教える先生とか。2時間の授業が15分で理解できるかもしれない。

安田

オンラインにすれば誰でも林先生の国語を受けられるわけですよ。

久野

絶対その方がいいですよね。全国の人気教師の中から選べるようにして。

安田

大学はリアルでもいいと思うんですけど。小学生、中学生を、あの狭い世界に閉じ込める意味があるのか。いま不登校の子供がすごく増えてるし。

久野

増えてますね。子供がいちばん感じてるのかもしれません。「学校に行く意味なんてあるのかな」って。じつは僕も思ってましたから(笑)

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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