この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
安田
就業者の6人に1人が転職を希望しているそうです。実際に転職した人の3倍ぐらい転職予備軍がいるそうです。
久野
雇っている側からすると、ほとんど全員みたいな感じですね。
安田
残って欲しい人材ということで言えば、ほとんど全員かもしれません。若者はほぼ転職希望でしょうし。
久野
若い人と話をすると頑張る理由が全く違いますね。20代のうちに頑張っておかないと稼げなくなるから頑張るだけで。会社とは一線を引いている感じ。
安田
会社も社員の未来なんて考えてないですからね。自社で必要なスキルしか教えないし。
久野
安田
ぶっちゃけ利益が出るから雇っているわけで。社員にしたって、そこで働くメリットがあるから働くだけ。当たり前と言えば当たり前の状況ですよ。
久野
会社のためにとか、育ててもらった恩とか、義理人情に訴える経営者もいますけど。これからはもう通用しないでしょうね。
安田
もう無理ですよ。ちなみに転職者の数が希望者の3分の1ぐらいに留まっていますけど。これはどうしてだと思いますか。
久野
これは瞬間的な数字じゃないでしょうか。1年間で切った数というか。実際の数字はもうちょっと多いと思います。
安田
なるほど。3年ぐらいのスパンで見ると遥かに多い人数が転職していると。
久野
はい。転職ってタイミングも含めての話なので。意識的には常に考えているんだけど「今年じゃないな」っていう人もたくさんいる。
安田
そういう人も入れると1000万人になる。すごい数ですけど、これだけ転職が増えた理由は何だと思いますか?
久野
ひとつは全員がキャリアアップを真剣に考えているということ。もうひとつはやっぱり収入面が大きいのかなと思います。そっちの方が多いかも。
安田
確かに。転職することで前職より収入アップする人が増えてます。
久野
プロ野球でもFA制度を導入すると全体の収入が上がっていくじゃないですか。
安田
なるほど。移動が増えることで全体の報酬も上がっていると。
久野
本当はもっと上がってもいいはずなんですけど。解雇規制が報酬を上げられない大きな要因になってますね。
安田
久野
できない人をクビにできるのであれば、もっと思い切った金額提示ができます。そこがセットになるともっと転職市場が活発になる。本当の意味での緊張感も出てくる。
安田
海外ではそれが当たり前ですからね。メジャーリーガーでも容赦なく解雇されたり。
久野
そこが日本の課題だと思うんですよ。力がなくても転職するだけで報酬が増えるというのも歪ですよ。海外はもっとシビアなので。
安田
そもそも辞めないことが前提ですからね。他社では全く使い物にならない人材もたくさんいますし。
久野
そうなんですよね。有名大企業の人を採ったからって活躍するわけじゃない。
安田
スキルがないからしがみついちゃうんでしょうね。特に年配の人たち。
久野
はい。上に行けば行くほど既得権みたいなのがあって。転職しようと思えるインセンティブがない。
安田
解雇規制が緩和されたらそういう人たちは行く場所を失ってしまう。
久野
その代わりにスキルがある人たちは今よりずっと収入アップします。それが正常な状態だと思いますよ。
安田
転職が当たり前の時代なんですから、それに合わせてルールも変えればいいのに。
久野
もうこの状況は止められません。共働きが前提になっているので転勤させると辞めちゃうし。
安田
久野
辞令1つで明日から北海道とか九州とかもう無理でしょう。絶対やめますから。
安田
久野
はい。移動はさせられないし、できない社員を解雇することもできないし。
安田
今後、解雇規制が撤廃される可能性はあるのでしょうか?
久野
いえ。なくならないと思います。なくせないというか。
安田
ということは企業の側も思い切った報酬提示はできない。
久野
実力があって本当に稼ぎたい人はフリーになって行くと思います。
安田
転職による報酬アップはどこかで頭打ちになるんでしょうか。
久野
若手に限ればまだまだ上がるでしょうね。むしろ実力以上に上がっていくと思います。
安田
実力以上の報酬を払って会社は元が取れるんでしょうか。
久野
取れないでしょうね。だから高値で採用してしまった会社は大変だと思います。
安田
久野
それもどこかで限界が来ます。ババ抜きみたいに、最後に掴んだ会社が残りの報酬を全部払うことになるでしょうね。
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安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。