2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第296回「中小企業は後出しジャンケンで」
石塚さんが嫌いな新卒一括採用ですが(笑)2025年卒の内定がもう出はじめているそうです。
相も変わらず同じことをやってますよ。
意識の高い人ほどインターンから頑張るらしいです。一方、まだ何がやりたいか分からない学生の方が圧倒的に多くて。
そりゃそうですよ。まともに働いたことすらないんだから。
早く始めたところでどうしていいか分からない。志望動機も語れないし。結果、すごく早い人とすごく遅い人に二極化している。中小企業が狙うならどっちですか?
どのタイプを狙うかだと思うんですよ。みんなが欲しがるのはやっぱり頭が良くてビジネスに向いている人。そのゾーンはみんな早く決めたいし、あっという間に決まっちゃいます。
ですよね。やはりおすすめは早期アプローチですか。
そういう学生って1割前後しかいないし、ものすごいレッドオーシャンなんですよ。
でしょうね。
大多数は自分が何者かも分からないし、何が向いてるかも分からない。一応、就活活動は頑張るんだけど「空回りしまくってます」って人が男子も女子も1番多い。
8割がそのゾーンらしいですよ。
そう。で、あとの1割はもう堂々出遅れみたいなタイプ。卒業前の2月3月まで動かないタイプ。
その人たちは就職しないんですか?
いや、こっちはこっちで需要があるんですよ。採用する側も出遅れた会社ってあるから。もしくは内定者に逃げられてしまった会社。頭数を揃えなきゃいけないから。
なるほど。
基本的には「誰もが欲しい1割」と「堂々周回遅れの1割」を除いて、この8割をどうするかって話じゃないですか。
誰もが欲しい1割を狙うなら早期からのインターンで囲い込みでしょうか。
早く囲い込んだところで大手企業や有名企業から内定が出たらひっくり返る。
じゃあ8割狙い。その場合も後半にずれ込むほど採用レベルが落ちると言われています。
それは一昔前の話ですね。
今は違うんですか?
今は早めに1個内定を押さえておいて、本当にそこに行くかどうかは決まってない人が多い。昔みたいに「内定をもらったから終わり」じゃない。
あっさり決めちゃう人は少ないと。
こういう状況なので「どこかには就職はできる」と思ってる。だけど、どうせ1〜2年で辞めちゃうかもしれないので、よりベターなところを探してますね。
なるほど。昔より内定をひっくり返しやすくなっているってことですね。
そう。ひっくり返しやすい。
じゃあ中小企業は後半の「内定リバース作戦」で行った方がいい。
う〜ん。毎回言ってますけど中小企業は新卒採用なんてやらない方がいいんです。
そんな(笑)身も蓋もない。
だけど事実なので。中小企業は社会人経験のある20代未経験者の第二新卒市場がベストです。
昔は「2〜3年で辞めるのはダメな人だ」って言われてましたけど。普通になってきましたよね。
まともになって来たんですよ。働く側はちゃんと考えて割り切ってる。会社側も義理だの人情だの言ってないでちゃんと考えないと。
新卒採用で失敗した会社に業者が勧めてくるのは、より早期のインターンです。「もっと早くスタートしましょう」って。
それは業者が儲かるだけ。中小企業は堂々の後出しジャンケンでいいんです。相手がパーを出した後にじっくり見てからチョキを出すみたいな。
採用の常識は変化したってことですね。
そう。中小企業は第二新卒を狙うか後出しジャンケンで他社の内定をひっくり返すか。
どうやってひっくり返すんですか?そもそも会えないですよ。後半に説明会なんかやってもいい学生は集まらないし。
それSNSがなかった時代の話ですよね。
そうです。
今はもう中学・高校からみんなインスタやTikTokをやってる。本当に意欲の高い新卒を採りたいならSNSですよ。ナビとかの一斉採用じゃなく。
確かにそうですね。社長が自らSNSで発信しないと。逆にいえば、そこをちゃんとやっている会社は人に困ってないです。
手間はかかるけどそれしかない。もう採用をコストだけでカバーできる時代じゃないんですよ。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。