その145 おてがみ

この前、ネット通販で数千円ほどの小物を買ったところ、届いた商品になにやらメモが挟まれていました。

<このたびは、数あるお店から選んでいただきありがとうございました。云々……>

ボールペンで書かれたメモは数十文字ではありましたが、それだけで
「うむう……」
という、なんともいえない気分になりました。
というのも、わたくしも自分の勤め先にて、たまにではありますが手書きで2、30分をかけてメモを作らなくてはいけない場面があり、個人的にはそれがとても煩わしい行為だと感じているからです。

おそらく、通販において手書きメッセージを添えることはまったく特別なことではなく、とくに個人店ではポピュラーな戦術であるかと思います。

ネット通販で同じものを売っている店舗、会社は無数に存在するなかで、縁あって商取引が行われた、そのタイミングで売り手が買い手になにかしら心理的な爪痕を残そうと試みることは妥当なことです。
その背後に、現場のひとが指示をされてイヤイヤ書いているか、それを通りこして無の心で機械のように書いている様子を想像してしまい、自分のように「うむう……」となる人間もいるかもしれませんが、手書きの文字にハートウォーミングさを感じとる客もいるかもしれません。

そういった客が存在する可能性があり、リピートにつながる確率が上がるのであれば、それだけで一定の合理性があるといえるでしょう。

しかし、です。

決まり文句のような「数ある店から選んでいただき」というフレーズを目にするたびに、その視点はどこにあるのだろう、と感じずにはいられないのです。

「同じような競争相手がひしめく中から」というのも、「手書きの労力でインパクトを与えたい」というのも、どれも、売り手側の視点に他なりません。
そこに、最後にはリピーターに仕上げたいという、いってしまえば売り手のエゴがチラ見えしてしまっているのではないか、と、私情まじりについ思ってしまうのでございます。

……これってちょっと何かに通じるなあ、思ったら、アレです。

大物外国人ミュージシャンが来日公演して、何万人もいる会場でお約束的に
「カモンTOKYOー!!」
とかいうとき、

「オマエ、客側を人間として見てないだろ……」

と思うやつです。

 

 

この著者の他の記事を読む

著者自己紹介

「ぐぐっても名前が出てこない人」、略してGGです。フツーのサラリーマン。キャリアもフツー。

リーマン20年のキャリアを3ヶ月分に集約し、フツーだけど濃度はまあまあすごいエッセンスをご提供するカリキュラム、「グッドゴーイング」を制作中です。

感想・著者への質問はこちらから