快楽のゼネレーションギャップ

大きな会社に入ってガンガン出世したい。立派な家を建てて家庭的な妻を迎えたい。仕事を最優先にするのは家族の幸せのため。皆がこれを常識として受け入れている時代があった。今はほぼ真逆である。仕事はしっかりやるがプライベートも充実させたい。妻にもキャリアを築いてもらって二人で支え合いたい。最優先は家族の幸せなので場合によっては転職も辞さない。

じつは経営者の思考も変化しつつある。どんどん社員を増やしたい。売り上げも利益も拡大していきたい。なんとしても業界トップになりたい。これがかつての起業家。社員はできるだけ増やさず小人数でやりたい。売り上げよりも一人当たりの利益を優先したい。業界トップになるよりオンリーワン企業になりたい。これが現代の起業家。要するに価値観が変化したのである。

野心が足りないエネルギーが低いなどと言われるが、それは古い価値観から見える景色だ。何をもって成功とするのか。どういう状態を豊かというのか。幸せな人生とはどのようなものなのか。その捉え方が変わったのである。快楽のベースが違うので言葉が通じない。まさにゼネレーションギャップ。

人の価値観は変えようとして変わるものではない。だから同じ価値観の人が集まっていく。「競争から逃げない」「社会的に成功と認められることが成功だ」という会社には、似たような価値観の人が集まる。「無駄な競争はしない」「自分が成功と思う人生が成功だ」という会社にも、似たような価値観の人が集まる。今の経営者は50〜60代が中心なのでまだまだ前者がマジョリティだ。

だが経営者の世代交代が進むとどんどん後者が増えていく。中小企業ではマジョリティが入れ替わるだろう。無駄な競争を避け顧客から選ばれるオンリーワンの会社。拡大ではなく一人当たりの利益を重視する会社。一人ひとりの特徴を活かし付加価値に変えていく会社。パートナーや家庭の事情をきちんと考慮する会社。顧客第一ではなく顧客と社員は対等であると考える会社。

このような会社は快楽基準が一致しているのでビジョン共有が容易い。事業目的と合致した人材を集めることでどんどんオンリーワン化してく。無理に拡大しなくても社員の報酬を最大化できる。人が定着するので無駄な採用コストも育成コストもかからない。これが次世代型中小企業の基本形。

 

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