第112回 中小企業の採用難を救うのは、大学中退者?

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第112回 中小企業の採用難を救うのは、大学中退者?

安田
今や、大学に行く意味って「就職に有利だから」という理由が一番大きいわけでしょ。実際、国立大学や有名私大の卒業生だったら就活もそこまで苦労しないらしくて。

鈴木
まあそうでしょうね。大手企業からしてみたら、「この人は優秀です」というラベルがついていた方が安心ですもんね。
安田
そうそう。一方で少子化が進んで、募集定員を割り込む大学も増えてきているようです。

鈴木
ふーむ、なるほど。でも、そういう大学を卒業することに意味はあるんですかね。それこそ「この人は優秀です」というラベルはつかないわけでしょ。
安田
まさにそこが不思議なんですよ。実際「Fランク」と呼ばれる無名大学からは、大企業や有名企業に就職するのはほぼ無理なわけですよ。

鈴木
厳しいけどそれが現実ですよね。大企業は上位大学の子たちから順番に採用していきますもん(笑)。
安田
そう、だから結果的に彼らは中小企業のどこかに就職する。でもね、逆の視点で考えれば、中小企業側にとっても「有名大学以外の大学生を採用すること」にどこまでの価値があるんだろうと。鈴木さんも先ほど「そんなの意味ないんじゃない?」と言ってましたけど。

鈴木
まぁねぇ。もっとも、ウチに関して言えば採用面接する時には高卒だろうと大卒だろうとたいして気にしてないんですよ。大学の名前も一応は見ますけど、それで何かを判断することはない。大学中退でも、いい人だなと思えば同じ条件で採用しますよ。
安田
へぇ、そうなんですね。実は私も「大学卒業」と「大学中退」では、能力にそこまで大きな差が出るとは思っていないんです。だって今の日本は、大学に入学する時が一番大変なわけじゃないでうすか。

鈴木
僕、大学に行ってないんでよくわからないんですけど、そういうもんなんですか?
安田
私はアメリカの大学に行ったんですが、その理由が「日本の大学は入るのが大変だけど、アメリカの大学は入るのが簡単だから」だったので(笑)。どうせ苦労するなら、先延ばしにしたいと思ってアメリカに行ったんです(笑)。その代わりアメリカの大学は卒業するまでがめちゃくちゃ大変でしたけど。

鈴木
へ〜、そういう違いがあるんですね。
安田
そうなんです。となると、「入学した時点の能力や努力」が高ければ、別に卒業したかどうかはあまり関係ないのかなという気もしていて。ところが今の日本は新卒一括採用が主流なので、大学中退した人はなかなか厳しい就職活動になってしまうんですよ。

鈴木

ははぁ…、安田さんが仰りたいことがわかりましたよ。つまり中小企業は、「無名大学の卒業生」よりも「有名大学の中退者」の方が狙い目だということですね?

安田
さすが、鈴木さん。まさにそういうことです(笑)。「高卒や大学中退でも、ウチは大卒と同じ待遇で採用します」とすれば大きな差別化になると思うんですよ。

鈴木
なるほど、面白い視点ですね!
安田
むしろ大卒よりも良い待遇にするとか。あえて自社の採用サイトに「大卒22万円、高卒・大学中退25万円」と書いてみるのもいいんじゃないですか?(笑)

鈴木
「大卒よりも給料が高いの?!」ってみんなびっくりしちゃうでしょうね(笑)。まあ確かにせっかく能力はあるのに、家庭の事情なんかで進学を断念せざるを得なかった人もいるでしょうからね。そういう「高卒・中退者」の方が、たいして勉強もせずに大学に入って、4年間だらだら過ごした「大卒」よりもはるかに優秀な人材に育ってくれるのかもしれない。
安田
そういうことです。採用に困っている中小企業にとっては、狙い目の人材だと思いますよ。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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