第75回 日本は「時間をかけて失敗した社会主義」から抜け出せるか

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第75回 日本は「時間をかけて失敗した社会主義」から抜け出せるか

安田

日本は民主主義国家でありながら、よく「唯一成功した社会主義国」なんて言われますよね。


藤原

確かに平等主義的な国民性ではありますよね。横並びを好むというか、「差がないこと」への安心感を求めるというか。

安田

そうそう。ただね、一般的には社会主義国ってうまくいかなかったじゃないですか。どれだけ頑張っても給料が変わらないと、人は努力しなくなる。でも日本はなぜかそこがちょっと違ったんですよね。


藤原

横並びで安心できて、むしろガンガン頑張るようになったと(笑)。

安田

そうそう(笑)。そこが「成功した社会主義」と呼ばれる所以なんでしょうけど、私はむしろ「時間をかけて失敗した」ようにも感じるんですよ。変に続けてしまったからこそ、今こうしていろいろな課題に直面させられている。


藤原

ははぁ、なるほど。背景には学校教育もあるでしょうし、これは根深い問題ですよね。基本は横並びが良しとされて、個性より協調を求められる空気がある。そしてその空気は大企業ほど強く残っている。

安田

確かに確かに。大企業って給与の差もあんまりないですもんね。


藤原

そうそう。課長や部長になれば多少手当がつきますけど、基本は同期と横並び。最近でこそ年功序列も崩れてきましたが、トップに立っても年収はせいぜい数千万円という。

安田

それでも「大企業に入れば安泰」という幻想があったから、みんな辞めずに頑張ってきた。でも今は違いますよね。もっといい職場があればすぐ転職しちゃう。


藤原

3~5年で辞めるのが当たり前になってきましたよね。「ここにいるよりあっちの方が稼げるじゃん」と気づいた人が増えたんでしょう。あるいは「自分で起業しちゃえばさらに稼げる」とか。

安田

そうそう。30年続いたデフレ期を経て、ようやく「横並びはダメだった」と気づいたってことですよね。まぁ、ここまで給与が上がらなければ、そりゃやる気もなくなりますよね。


藤原

そうですよね。人によっては「仕事で頑張るより、プライベートを充実させよう」という考えになってますしね。かなり風潮が変わってきた感じはします。

安田

ですよね。そして、それこそまさに社会主義国家が辿った道と同じだと思うんですよね。


藤原

ああ、確かに。経済成長の数字としても、実際止まってますからね。

安田

ええ。結局、頑張る人のインセンティブがなくなっちゃうんですよ。だから誰も突出しない。そりゃ停滞しますよ。


藤原

そうですねぇ。特に大企業では、「出る杭は打たれる」空気がまだまだ強いと思いますし。

安田

中小企業でもあると思いますよ。例えば藤原さんのように、「うちは年収3000万目指します!」なんて大々的に言うと、応援されるどころか、嫉妬や牽制が先に立ってしまったり。


藤原

ああ……残念ながら確かにそう感じることはありますね。

安田

皆で足を引っ張り合って、結果的に全体が沈んでいってしまう。給料は上げたいけど、値上げには反対するとか。税金は払いたくないけど、公共サービスは減らすなと言ったり。


藤原

まさに非合理的な構造ですよね。でもその中で少しずつ成長してきた日本は、ある意味奇跡だったのかもしれません。

安田

でもその奇跡もそろそろ限界なんでしょう。いくら教育で「頑張れ」と言っても、見返りがないなら続きませんから。


藤原

とはいえ資本主義で突き抜けたアメリカでも、今の若い世代は資本主義の限界を感じていると言いますよね。新しい形の社会主義に傾くムーブメントも出てきていたり。

安田

確かに。まぁ、私も社会主義が完全にダメだとは思ってないんです。教育とか医療、食事のようなベーシックな部分は、社会主義的に整えるべきだと思います。でも稼ぎたい人が努力すればいくらでも稼げるようにしておく。その二層構造はあっていいんじゃないかと。


藤原

同感です。支える社会主義と、伸びる資本主義のいいとこ取りが理想ですね。ただ、上を目指す人の足を引っ張るような空気は変えていかないといけないでしょう。せっかくの芽を摘んでしまう。

安田

そこが変わらない限り、「時間をかけて失敗した社会主義」と言われても仕方ないかもしれませんね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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