第62回 ケーキ屋に「スキマバイト」はありかなしか

この対談について

地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。

第62回 ケーキ屋に「スキマバイト」はありかなしか

安田

最近結構話題に出る「Timee」っていうスキマバイトサービス、知ってます? 1時間だけ働けるとか、当日ポンと入れるんですよ。


スギタ

知ってます。広島でも使ってる人、けっこう多いですよ。そのTimeeがどうしました?

安田

いやね、ワタミが買収した「サブウェイ」ってサンドイッチ屋が、スタッフをTimeeだけで回してるという話を聞いて驚いたんですよ。


スギタ

えっ、それはすごいですね。スタッフ全員がスキマバイトってことですか?

安田

そうらしいです。果たしてそんなこと可能なんだろうかと。マクドナルドみたいにオペレーションが簡単な商品ならまだわかるけど、サブウェイのサンドイッチってすごく手間がかかるじゃないですか。


スギタ

確かに確かに。手作業の工程も多いし、人によって味に差も出そうです。ソースがちょっと多いだけで、全然違うものになっちゃいますもんね。

安田

そうそう。だからこそ「1時間だけ働きます」って人だけで、店の品質って保てるのかなって不思議で。


スギタ

まあでも、店側としては逆にコントロールしやすいのかもしれませんね。素質がない人は次回から入れなければいいし、優秀な人は時給を上げて抱え込んじゃえばいいし。

安田

ああ、確かにそうかもしれません。実際評価が高い人には、時給が高くても「この人に頼もう」って仕事が入ってくるらしいですし。


スギタ

ある意味すごく公平な働き方なのかもしれません。それに単純に便利ですよね。ちょっとした空き時間にサクッと働くとか、待ち合わせの間に1時間だけシフトに入るとか、場合によっては旅行先で利用したりして。

安田

そうなんですよ。雇用みたいにガチガチに縛られずポンと空いた時間に働けるって、かなりのストレス軽減だろうなと。


スギタ

しかも今はいろんな職業を選びたい放題ですからね。店側にしたって、いい人だったらそのまま「うちで働かない?」っていう採用もできちゃったりするし。

安田

ああ、確かに。紹介料を払うにしても、自社で採用するよりも安くすむでしょうしね。まあでも、そもそもTimeeを使うのは「自由を好む人たち」なわけでしょう? そういう意味では正社員採用の話が来ても断っちゃいそうな気もしますけど。


スギタ

ああ、確かに「敢えてTimeeを選んでいる人」はそうかもしれませんね。Uberの配達員も「今日は雨で気分が上がらないから休もう」みたいな自由さがいいらしいですし。

安田

そうそう。あと先ほども出ましたけど、時給を簡単に変えられるのが画期的だなと。忙しい時は時給を上げて人を集めて、逆に暇な時は下げる、あるいはそもそも募集をかけない、みたいなことが柔軟にできる。「雨だから今日は時給高くします」とかね。


スギタ

臨機応変な対応ができるわけですね。ウチの業種も閑散期と繁忙期の差が激しいので、うまく制度設計すればフィットするかもしれないなぁ。

安田

いいと思いますよ。職人的な作業は無理でも、「ちょっとこの材料選別して分けておいて」みたいなことならできそうじゃないですか。

スギタ

確かに確かに。バレンタイン時期のトリュフの箱詰めとか、クリスマスのイチゴのヘタ取りとか。

安田

そういう時にTimeeでサクッと3人くらい集めてくると。飲食って人がいないと成り立たない事業ですし、マッチしていると思います。


スギタ

そうですよね。閑散期にしろ繁忙期にしろ、過不足のギャップを埋めるひとつの手段になりそうです。実際ウチも繁忙期に合わせて人を雇っているので、閑散期に人余りになるのが悩みなんですよ。

安田

まぁそうせざるを得ないですからね。暇な時期を基準に人を集めていたら、忙しい時期に絶対に足りなくなっちゃうわけで。

スギタ

そうなんですよね。でもTimeeがあれば、少なめの人数で回しておいて、足りなくなったらサッと募集をかければいいと。

安田

ええ。固定費もかなり削減できるでしょうし、今後は「スキマバイト人員」が当たり前になっていくと思いますよ。

スギタ

ウチもちょっとトライしてみようかなぁ。

安田

ちなみにスギタさんのところでTimeeを入れるなら、どの業務まで任せられそうですか?

スギタ

生地を作るとか、クリームを炊くみたいなコア業務は無理ですけど、イチゴのヘタ取りやケーキの飾り付けなら任せられますね。「この写真と同じように並べて」とか。

安田

なるほど。じゃあ、接客はどうですか?

スギタ

うちは接客を大事にしてるので、初めて来た人にお願いするのは厳しいかもしれないですね。ケーキの種類も多いのでいきなりは覚えられないんじゃないかと。

安田

ふむふむ。そこは信用とかブランドに関わってくる部分ですもんね。でもさっき言っていたような雑用的な作業なら問題ないと。

スギタ

ええ。担当してもらえる業務はいっぱいありますね。うん、こうして話していたらかなりイメージが鮮明になってきました。さっそく事業者登録からやってみようかな。

安田

いいと思います。またどんな感じだったかぜひ教えて下さい!

 


対談している二人

スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役

1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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