会社員の終わり

会社が人を雇わなくなる。これはもう確実な未来と言えるだろう。理由は3つある。1)人不足で人件費が高騰していくから。2)仕事よりプライベートを優先する人が増えたから。3)AIを使えば最小人数で経営できてしまうから。この先、人を増やさず利益だけを拡大する会社が勝ち残っていくだろう。

日本の人不足は構造的なものだ。少々の外国人を招き入れたところで根本的な未来は変わらない。競争によって獲得できる人材の質は下がり、支払う報酬はどんどん増えていく。これまでのようなロイヤリティも期待できない。給料分は働くが給料以上には働かない。これがスタンダードな価値観である。

常にプライベートを優先するので転勤や管理職への昇進には後ろ向きだ。それを理由に転職してしまう人もいる。「給料の3倍は稼げ」などと言おうものならブラック企業のレッテルを貼られる。彼らが望むのは「働きやすく、休みが取りやすく、同じ仕事で定年まで報酬が増え続ける会社」である。

こうなると経営の常識は根本から変えざるを得ない。社員を増やし「比例して会社全体の利益を増やしていく」という図式が成り立たなくなるからだ。大きな利益をもたらさない、仕事を最優先しない、報酬は増やし続けなくてはならない。このような人材ばかり雇用したら企業は間違いなく崩壊する。

黒字の大企業が先を争ってリストラを進める。労働者は憤りを感じているが当然の結果である。いかにして無駄な人材を減らしていくか。ここに真剣に取り組まない会社は確実に淘汰されていくだろう。AIを駆使して最低限の人数で売上と利益を拡大し続ける。これがグローバルスタンダードなのである。

ホワイトカラーは100分の1以下になると言われている。現場もまた同様である。ホワイトカラーほどではないが労働者の数は激減するだろう。それでも会社は困らない。問題は雇われないと稼げない人たちである。彼らはどうなっていくのだろう。アメリカでは既にIT系人材が就職氷河期を迎えている。

理系を増やそう。就職に有利な学部を増やそう。これが日本の教育現場の現状である。断言しよう。会社員という出口そのものがもうなくなっていく。いかにしていい会社に入るかではなく、いかにして商売上手になるか。雇われなくても生きていけるスキルを身につけること。これ以外に解決策はない。
 

 

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