第328回 “気遣い”の落とし穴

 このコラムについて 

「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。

本日のお作法/“気遣い”の落とし穴

 

大手企業の「役員研修」には、ときどき“粋な配慮”が仕込まれています。木金や月火で合宿形式にし、前後の土日でゴルフや懇親会を楽しんでもらう——人事としては「日頃の慰労も兼ねて」という美しい設計です。

ただ、ここに“静かなギャップ”が生まれます。参加者はすでに第一線を長く走ってきた方々。体力的にも移動負荷的にも、若手とは前提が異なります。地方拠点から都内集合してさらに移動。慣れない土地での宿泊。翌日のコンペ… 表向きは和やかでも、内心ではこんな声が漏れることもあります。

「コンペが年々しんどくなってきてさ…」

「俺の場合、地方拠点やから、まず都内で集まってから移動やろ。その時点で結構しんどいわ…」

「そもそもウチの研修所、避暑地というか、なかなかの場所にあるしな…」

「帰りはもうクタクタで、運転がきつすぎる」

厄介なのは、その“しんどさ”を感じていても、企画した部下の意図が理解できてしまうことです。「せっかく気を利かせてくれているのに、水を差すのもな」と、役員として本音を飲み込んでしまう。結果として、“善意と実感のズレ”は解消されないまま残ります。

夜の宴席にご一緒した際、ふと漏れる思いを耳にしたこともあります。

「いや、これって、慰労ちゃうわな。疲労やで…」

大手企業の施策は、往々にして“よかれと思って”設計されています。だからこそ重要なのは、形式的な満足ではなく、実質的な体験価値に目を向けること。移動負荷を減らす、任意参加にする、プログラムに余白を持たせる——ほんの少しの工夫で、受け手の印象は大きく変わります。

顧客に限らず、“相手の本音”をどう捉えるかは、いつの時代も難しいものです。気遣いは、相手の立場に立って初めて成立する。その前提を外さないことが、大切なのでしょうね…

 

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高松 秀樹(たかまつ ひでき)

たかまり株式会社 代表取締役
株式会社BFI 取締役委託副社長

1973年生まれ。川崎育ち。
1997年より、小さな会社にて中小・ベンチャー企業様の採用・育成支援事業に従事。
2002年よりスポーツバー、スイーツショップを営むも5年で終える。。
2007年以降、大手の作法を嗜み、業界・規模を問わず人材育成、組織開発、教育研修事業に携わり、多くの企業や団体、研修講師のサポートに勤しむ。

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