第160回 「値引きで売る時代」の終わり

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第160回 「値引きで売る時代」の終わり

安田

パルコが55年も続けていた夏のセールを中止したそうですね。「服を買うタイミングはここだ」と決めていた人も多かったと思うんですが、こういうことはこれから増えていくんでしょうか。


倉橋

増えると思いますね。そもそも日本はもう四季じゃなくて夏と冬の二季ですから。秋がなくなったことでアパレルにとっては構造的な問題が起きているんですよ。うちもアパレルを取り扱っているので、すごく実感しています。

安田

確かに9月はまだまだ暑いですもんね。秋物を展開しようにも売れないでしょう。


倉橋

ええ。アパレルには「おしゃれするなら秋から」という文化があって、秋物を担当する部署は花形中の花形なんです。会社を代表するバイヤーがオータムプロジェクトをやっていた。その出番が丸ごとなくなるわけですから、組織として簡単には切り替えられない。

安田

本来なら東南アジアのように夏と冬の二極化で展開すべきなんでしょうけど、花形部署に「あなたたちの季節はもうありません」とは言えないですもんね。ユニクロさんもまだ四季から二季への移行はしていないんですよね。


倉橋

していないですね。ただ今年あたりからダイナミックに変えてくるんじゃないかと予想しています。気温が2〜3度上がれば体感は全然違う。もう社会問題のレベルですから。

安田

私もまだ暑いうちに「秋になったら着よう」と思って買った服が何年もクローゼットに眠っていますよ。前日まで暑くて、いきなり寒くなるから中間のファッションができない。買ったのに一度も着ていない服って、確かにあるんです。


倉橋

昔は季節の先取りで、まだ暑いうちから秋物を売ったりしていましたけど、もうそれも通用しなくなってしまった。服だけの問題じゃなくて、実は店舗のエアコンも非常に問題になっていまして。

安田

エアコンというと、気温が上がり過ぎると店舗の空調も追いつかなくなるとか、そういう話ですか。


倉橋

まさにまさに。今の店舗のエアコンって、もともとそこまでの暑さを想定して設計されていないんです。しかも秋物を手に取ってもらうには、暑さをしのぐだけじゃなくさらに涼しさを感じてもらわないといけない。今のエアコンの設計ではそこまではカバーしきれないんですよ。

安田

は〜、なるほど。業務用エアコンの総入れ替えまで考えないといけないんですね。1年中使えるエアコンでは、もう対応が難しいと。


倉橋

難しいです。着る服と空調は密接に関係しますから。アパレルだけの話じゃなく、店舗ビジネス全体の課題として捉えないといけない問題でしょうね。

安田

なるほどなぁ。ところでセールそのものについても聞きたいんですけど。お正月の初売り袋って昔はすごい行列でしたよね。でも実際に買ったものって意外と使い物にならなくて誰かにあげちゃったりとか(笑)。

倉橋

そうでしたよね(笑)。本来は「これがこんな価格で買えるの?!」という喜びからスタートすべきなんですけど、実態はやっぱり在庫処分の側面が強い。お客さんもその古い慣例にもう付き合ってられないという感じになってきて、セールは思った以上に伸びなくなっていると思います。

安田

私も昔は欲しいけど高いなというものがセールになったら買っていたんですけど、品揃えが減って色もサイズも限られるんですよね。安く買えた感動より「欲しい色じゃなかった」という不満の方が大きくなってしまった。

倉橋

そういう人は増えていると思いますよ。「安いからこの3色の中から選ぶしかない」という買い方よりも、お金を出してでも自分の好きな色にする。何かを妥協して買うのは、一昔前の買い方です。

安田

昔はお金持ちが定価で買うブランドを、セールで安くなったら一般の人が買うという図式がありましたけど、もうそこまでしてブランドを着たいとは思わないのかもしれませんね。妥協しなくてもおしゃれで安いものがいくらでもありますし。

倉橋

ええ。妥協するぐらいなら買わないんでしょう。セールで単に価格を下げるだけでは、消費者がメリットを感じなくなった。パルコの件はその象徴的な出来事だと思います。

安田

温暖化の影響だけじゃなく、セールという仕組みそのものが終わりを迎えているということですね。万代さんでもセールはやらないんですか?

倉橋

やらないですね。うちも今回のニュースを社内の議題にしましたけど、やっぱりセールはもう効かない時代だなと。どんどん世の中からなくなっていくと思いますよ。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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