愉快なマイクロ法人 探訪記
〜人不足時代の新たなソリューション〜
もはや雇用だけで組織を維持できる時代は終わろうとしています。初任給の上昇、採用コストや社会保険料の高騰、育った頃に辞めていく人材。そのお悩みは「有能な外部パートナー」が解決できるかもしれません。
この対談に登場するのは営業・マーケティング・SNS運用・商品開発・財務支援など、様々なスペシャリティーを持つユニークなマイクロ法人経営者たち。貴社の未来をガラッと変えてしまうパートナーがきっと見つかるはずです。
合同会社マルセロ
代表 駒瀬元洋さん
味の素株式会社で32年間、消費財のマーケティング、事業開発、PRに携わってきた駒瀬元洋さん。
ブラジル、マレーシア、米国で、合計14年に及ぶ海外駐在を経験しました。ブラジルでは粉末ジュース「MID」をゼロから立ち上げ、マレーシアでは年商約100億円、約120名の組織を率いる販売・マーケティング担当取締役を務めました。米国では、MSGをめぐる風評の転換に挑んだグローバルPR「うま味プロジェクト」を主導しています。
2025年6月に味の素を早期退職。現在は、同年5月に設立した合同会社マルセロの代表として、経営者・事業責任者への伴走型コンサルティングと、ITツールの販売代理店事業に取り組んでいます。
掲げる提供価値は、「大手企業の勝ち筋を、スタートアップの速度で実現する」。
32年間の会社員生活を経て、50代で新しい一歩を踏み出した駒瀬さんに、現在の事業、独立までの道のり、大手企業での経験が生み出す価値、そしてこれからのマイクロ法人の可能性について伺いました。
第3回 良いサービスなのに、大手企業にはなぜ売れないのか
〜「提案を受ける側」の経験が、スタートアップの商談を変える〜
〜「提案を受ける側」の経験が、スタートアップの商談を変える〜
駒瀬さんのこれまでの経験で、今の仕事に特に活きているのはどんなところですか?
大手企業で、長年「提案を受ける側」を経験してきたことですね。
スタートアップが、SMBと呼ばれる中小企業市場から、エンタープライズと呼ばれる大手企業市場へ進出しようとすると、それまでの売り方が通用しなくなることが少なくありません。
そうなんです。
中小企業の場合、担当者や経営者一人の判断で導入が決まることがあります。でも大手企業では、一つの製品やサービスを導入するために、多数の関係者が存在します。
窓口の担当者だけでなく、その上司、最終決裁者、関連部署の役職者など、少なくとも5人から6人が関与することも珍しくありません。
できません(笑)
窓口担当者が評価してくれても、社内のほかの関係者が納得しなければ導入には進みません。
現場担当者なら「業務が楽になること」に関心があるかもしれない。一方、その上司は「部署全体の成果が上がるか」を気にします。経営層なら「事業にどれほどインパクトがあるのか」を見ます。
はい。購買部門なら価格や取引条件、法務部門なら契約上のリスクを確認します。ITに関わるサービスなら、情報システムやセキュリティ部門も関係します。
だから、一つの説明だけですべての人を動かすのは難しいんです。
となると、大手企業への営業では、まず「誰に売るのか」を一人ではなく複数で考えないといけない。
そうですね。
その契約にどのような人物が関わっているのか。それぞれがどんな課題を抱えていて、何を解決することがメリットになるのか。そして、最終的に意思決定する人は何を基準に判断するのか。
そこまで理解したうえで、提案内容やアプローチを考える必要があります。
一つのパターンの提案資料を、全員に同じように見せるだけでは、なかなか壁を越えられません。
このあたりは、やっぱり大手企業の中にいた経験が活きるところですか?
そう思います。
大手企業の中でも、ある程度長く働いて、シニアレベルにならないと経験しにくいことだと思います。
スタートアップでは、どうしても大手企業内部の意思決定構造を経験した人が少なくなります。
外から見ているだけでは、社内で誰が何を気にして、どう話が進んでいくのかまではわかりにくいですものね。
そうですね。だから、私がこれまで見てきたものや、提案を受ける立場で感じてきたことを共有することで、商談の成功率を高められると考えています。
実際の商談でも、「提案を受ける側だった経験」が活きたことはあります?
先日、ある商材の商談に同席したときに、あらためて実感しました。
そのクライアントには、従来の営業トークがなかなか響いていなかったんです。
そこで、お相手の立場や業務上の課題、社内で考慮しなければならない点に合わせて、その商材を導入するメリットを語り直しました。
そうです。
すると、「なるほど、そういうメリットもあるんですね。その視点はありませんでした」と前向きな反応をいただけて、そこから商談の空気が変わり、最終的には成約まで進みました。
サービス自体は同じです。変えたのは、相手の立場に合わせた価値の伝え方でした。
「良いサービスなら、ちゃんと説明すれば売れる」と考えてしまいそうですが、それだけではないんですね。
スタートアップ側から見ると、「これだけ便利なのだから、良さを説明すれば導入してもらえる」と考えてしまいがちです。
でも、大手企業の担当者には、社内を動かす仕事があります。
そうなんです。
本人が良いと思うだけではなく、その上司や関連部署に対して、「なぜ導入すべきなのか」を説明しなければいけません。
だから提案する側も、目の前の担当者を説得するだけではなく、その担当者が社内で説明しやすい状態をつくる必要があります。
そういうことです。
駒瀬さん自身は、これからどんな仕事をしていきたいですか?
将来的には、大手企業が新規ビジネスを立ち上げる場面や、既存ビジネスを再構築する場面で、大手企業とスタートアップをつなぐ橋渡し役になりたいと考えています。
大手企業には、長年培ってきたブランドや顧客基盤、組織力があります。一方でスタートアップには、意思決定の速さや新しい技術、柔軟な発想があります。
どちらか一方ではなく、それぞれが持っているものを活かしていく。
そうですね。
それぞれの強みを理解しながら、両者がうまく協力できる状態をつくっていきたいですね。
第3回のまとめ
大手企業への営業では、「良いものを売る」だけでは不十分です。
大手企業の中にいる複数の関係者が、それぞれ何を大事にしているのかを理解し、相手ごとに価値を翻訳する必要があります。
これは、外から企業研究をするだけでは、なかなか身につけにくい感覚です。
大手企業の中で提案を受け、事業を動かしてきた経験を、必要なときだけ外部から提供する。駒瀬さんのようなマイクロ法人は、スタートアップに不足しがちな経験を補う存在ともいえます。
人材を一人雇用するのではなく、必要な専門性を持つ外部パートナーと組む。人不足の時代において、企業の成長を支える現実的な選択肢の一つになりそうです。
最終回は、「マルセロ」という社名に込められた背景と、マイクロ法人にとってのコミュニティの価値について伺います。
対談している二人
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◆愉快なマイクロ法人
駒瀬 元洋(こませ もとひろ)
合同会社マルセロ代表
合同会社マルセロ代表。1971年名古屋市生まれ、名古屋大学経済学部卒。新卒で味の素株式会社に入社し32年間、ブラジル・マレーシア・米国の3カ国で計14年間の海外駐在を経験。ブラジルでは売上100億円超の新規事業「粉末ジュースMID」の立ち上げを主導し、マレーシアでは年間100億円規模・120人組織の販売・マーケティング責任者を務めた。2025年7月に独立し、現在は経営者・事業責任者の伴走支援に従事している。
会社概要
会社名 合同会社マルセロ https://marcelobusiness.com/
代表者 駒瀬元洋(こませ もとひろ)
事業内容 経営者・事業責任者向けの伴走型コンサルティング
ITツール販売代理店事業
設立 2025年
所在地 〒100-0013
東京都千代田区霞が関1丁目4-1 日土地ビル2F
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◆インタビュー・執筆
柳 よしこ(やなぎ よしこ)
Me & To Beリフレクションラボ代表
新卒にて人材紹介会社に入社後キャリアコンサルタントとして主にIT・金融業界の転職サポートを担当。
ITソリューションの一次代理店にマーケティング職として転職したのち、日系・外資IT企業において約15年にわたりB to Bマーケティングに従事。
プロダクト、パートナー、フィールドマーケティング、マーコムなど幅広く経験。10名〜600名まで大小合わせ様々な規模のセミナー、イベントを企画・実施し、自身もセミナー講師・スピーカーとして資料作成や登壇を行いながら、製品情報の問い合わせ対応や顧客提案にも対応。
現在は企業広報としてメディアリレーション、プレスリリース、取材対応や自社のSNS・ブログ運用を中心に行なっている。
コロナ禍での産育休を経てパラレルキャリア形成を目指し、副業にて個人事業主や女性起業家のイベントの企画運営やコンセプト設計サービスを提供。WEBライターとして採用向けのインタビュー記事の作成などで一部法人のサポートにも関わる。















