人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。
第139回 AIに「下積み」を奪われた新人は、どう育つ?

以前、AIによって奪われるのはレイヤーの低い仕事だというお話をメルマガでされていましたよね。

かといって難しい仕事は任せられないから、やらせることがない。仕方なく新人にやらせるけど、AIの方が100倍速くて質も高い。自己矛盾を感じながら、給料を払って新人に仕事をさせているそうなんです。訓練のための仕事がなくなった時、新人たちはどうやって育っていけばいいんでしょうか。

難しい問題ですよね。根本的に経営者や上の人間が考え方を変えなくてはいけないと思っています。40代以上の経営者は、AIがなかった時代に地味な仕事をコツコツやってきたからこそ、今の自分の高いレイヤーの仕事ができていると自覚している。だから新人も同じように鍛えようとする。

ええ、自分の成功体験に縛られてしまうんですよね。でも時代が変われば求められる基礎も変わるわけで。例えば「火の起こし方」と同じだと思うんですよ。昔は火を起こす仕組みを知っているからこそ、できる仕事がありましたよね。

その通りです。だから経営者側は「自分がどう鍛えられてきたか」という発想を一度捨てないといけない。火起こしはAIが全部やってくれる前提で、「じゃあ今後何を鍛えるべきか」に発想を転換しないといけないと思うんです。

そうですね。私、バイク関係の事業もしているんですけど、昔はスパナを持って手を真っ黒にしながらエンジンをバラしたりして鍛えていったんです。でも最近は、ノートパソコンを繋いで調子の悪いところを直すというケースも増えています。

ええ。もちろん昔ながらの仕事もまだまだありますが、全員が下積みを積まなきゃいけないかというとそうではない。むしろパソコンに触れないベテランメカニックの方が整備できなくなるような状況もあります。だから判例を調べる能力はなくても、AIを使いこなすために鍛えなきゃいけないことはあると思うんです。

これまでは、その基礎訓練のためにお金にならない仕事を会社がやらせていた。でもそこを全部AIが持っていった時に、会社はお金を払いながら新人を訓練するようなことはもうやらないんじゃないかと思うんです。

その時、人は報酬が出なくても、自らのスキルアップのために仕事をするようになるんだろうかと。「1時間働いたら1時間分の報酬が出ないとおかしい」と思っている人たちが、お金にならないことをやるとは思えなくて。

でもそういう人は少数派だったじゃないですか。自分でやる人は放っておいても育ちますが、問題は大部分の「自分でやらない人たち」じゃないかと。面接で「御社はどうやって私を育ててくれますか」なんて聞くような学生は、今後採用されなくなりますよ。

そうそう。一つ考えられるのは、大学が就職予備校化していくことじゃないかと。本来はお金になることを学ぶ場じゃないですが、会社に出たらすぐ役に立つスキルを身につけるために4年間行くようになる。就職に活かされない学歴なら、行かなくなる人が多いんじゃないかと。

「就職して働く」という選択肢しか持っていない人がまだまだ多いということですね。いい会社に入ることが社会人になることだと。そんな時代はとっくに終わったと思っていましたけど、意外とそうでもないのかもしれませんね。
対談している二人
藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表
1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

















