第351回 なんでもいいので

 このコラムについて 

「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。

本日のお作法/なんでもいいので

 

某大手さんのプレゼン研修で、若手の皆さんから、職場でのお話を伺いました。

ある方が話してくださったのは、週に2回ある営業会議でのこと。

課長から近況共有を求められましたが、日報はすでに共有済み。

「特に大きなトピックはありません」と答えると、

「プライベートでもなんでもいいから、近況をパッと言ってくれや」とのこと。

それならば、と、週末に“ちいかわの映画”を見に行った話をしたそうです。

ところが、途中から課長の表情が曇ります。

頭をかき、つま先をトントン。

そして、「しょうもない共有するなや。もっと中身のある話をしやな」と、バッサリ…

「なんでもいい」の中に、ちいかわは入っていなかったようです。

自由回答かと思ったら、正解を当てる問題だったのでしょうか。

別の若手からは、営業同行時のお話も。

訪問先を出た瞬間、上司から、「お前、100点満点の3点やわ」と言われたそうです。

足りなかった点を恐る恐る尋ねると、

「パワーがたらんねん。売りたいという気概が感じられん」
とのこと。

3点という数字は、たいへん具体的です。

しかし、残りの97点を取る方法は、なかなか具体的になりません。

もちろん、若手側から伺ったお話です。上司にも、伝えたいことや事情があったのでしょう。

その場にいた事務局の方も、「あとで詳しく話を聞かせて」と声をかけていらっしゃいました。

その夜の懇親会では、何がいちばんしんどいのか、という話に。

複数の若手から出てきたのは、意外な答えです。

「会議のたびに、グループの行動規範を唱和するのをやめてほしいんです」

同社の行動規範には、素敵なメッセージが並んでいます。

だからこそ、なのだそうです。

「このメッセージに魅力を感じて入社したのに、言っていることと、やっていることに隔たりを感じてしまうので…」

信じて入社した言葉を、毎回、声に出す。

その言葉を、日々の職場では実感できない。

それは、少々つらいことなのでしょう。

「なんでもいい」と言ったなら、まずは聞いてみる。

「3点」と伝えるなら、次の1点を取る方法も一緒に考える。

そんな小さな振る舞いにこそ、行動規範が表れるのかもしれません。

会議の冒頭で、声をそろえて読む言葉。

できれば会議の途中でも、使っていただきたいのであります。

 

著者の他の記事を見る


 

高松 秀樹(たかまつ ひでき)

たかまり株式会社 代表取締役
株式会社BFI 取締役委託副社長

1973年生まれ。川崎育ち。
1997年より、小さな会社にて中小・ベンチャー企業様の採用・育成支援事業に従事。
2002年よりスポーツバー、スイーツショップを営むも5年で終える。。
2007年以降、大手の作法を嗜み、業界・規模を問わず人材育成、組織開発、教育研修事業に携わり、多くの企業や団体、研修講師のサポートに勤しむ。

感想・著者への質問はこちらから