7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回のおさらい ①求職者目線の採用が行われていない現実、②出会う仕組み作りが求人 第8回「採用時代の終焉」

まず依頼されると「求人をつくるためにインタビューで3時間ください」と言います。聞くことはただひとつだけ。「僕が求職者だとします。この会社で働いたらどういう良いことがあるのか、全部教えてください」と。そしたら、みなさんギョッとしますね。

おおよそ8割ぐらいの会社さんは「そんなこと言われても、ウチはあんまりないんだよ」と言います。でも不思議なもので、聞いているうちに色々出て来るんですよ。例えばボーリング大会で盛り上がるとか、忘年会は恒例のじゃんけん大会で去年は1等景品はルンバだった、とか。良い話じゃないですか。すごく楽しそうだし。

条件なんかも詳しく聞きます。例えば看護師さんだったら、夜勤しなくていいとか。どんな良いことがありますか?私が入るとどんなメリットがありますか?どんな幸せな気持ちになりますか?入って良かったと思えるメリットって何ですか?どんな些細なことでもいいんです。勤務条件、社風、福利厚生、スキル。これを順番に聞いていくと、最初ギョッとして「そんなのあるかな」と言っていた会社さんも、2時間もするといろいろ出て来るわけです。

自分の会社の良さって、自分たちが一番分からないからです。それを見つけ出すために、私も業者としてではなく、求職者目線で質問をすることを心がけています。本当に面接に来たつもりで聞くんですよ。一切の遠慮や予定調和なしに。そうすると向こうは、ギョッとするわけです。

例えば、すごくノロマだということと、短気じゃなくて優しいということと、コインの裏表みたいな部分。ある人から見たら「そんなトロイ奴は嫌だ」と言われるかもしれませんが、他の人からは「セカセカしていないところが素敵」と言われるかもしれません。つまり働く職場として良いか悪いかも、人によって違うと。

求人をつくるためのインタビューで見つけた良い点を「それは求職者から見てプラスです。幸せだと感じます。それはこういう理由です」と根拠を明確にして教えてあげます。すると、どんどん良い顔に変わって行くんですよ。この瞬間が一番好きですね。

「強みはこれとこれ。面接ではこう伝えてください。表現は文例考えますから一緒にやりましょう」と伝えます。すると、みなさん最後に同じことを言います。「人が採れるような気がしてきました」と。パッと表情が明るくなるんですよ。

そうです。100人順番に10分ずつ、といっても、最初に会った人のこと忘れますよね。やっぱりみなさん、入ったら長く勤めたいと思うし、会社だって入社してくれたら長く勤めてほしいと思うし。ホント結婚と似ていますよね。末永く付き合うためには人数ではなく相性が大事。

でも自分の人格はひとつなので、100人の中のひとりに響くかもしれない、ということが普通の人には分からないと思います。自分の好みじゃなかったら好みじゃないと思っちゃう。それが分かるということが、求人のプロとしてのスキルということでしょうね。

社内の雰囲気が悪くてもそれに気付いていない場合が多いですね。だから社内も活気がない。訪問しても社員はいい挨拶しないし暗いし。猛暑でも来訪者に冷たいお茶1つ出なかったりする(笑)。でもその経営者に悪気はないんですよ。人に興味がないんです。それでずっとやって来れたし。その会社に融資してる金融機関の人に「どうなんですか?」と訊いても「言われてみれば我々もお茶なんか出してもらったことないなー」と。そんな会社が典型例。社外の人にそうなのだから社員に対してもそう。人に興味がない。温度が低い。
次回第10回へ続く・・・
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。