7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第43回「プロファイルの極意」
第44回「スマホは何を変えたのか」
求人媒体を売ってるのに「効果的な求人原稿」をつくれない人って、いるじゃないですか。
めちゃ多いですね。
ちょっとシャレにならない気がするんですが。
採用・求人の基礎っていうのを、現場で経験してないからでしょうね。
現場で経験してない?
はい。
現場で求人広告をつくってるじゃないですか。
「求人広告をつくってる」というより「媒体を売ってる」と言うほうが正しい。
媒体を売って「文章を流し込んでるだけ」ってことですか?
そう。かなりパターン化されて、システマティックに。
「わが社は人間関係を大事にしてて、社風がいいです」って、笑顔の社員を載せとくみたいなパターン。
来た来た(笑)
「ここは社風よさそうだな」と思って受ける人はまずいないと。
いまどき、そんな求職者まずいないですよね。
なんでこんなに、かい離しちゃったんですかね。「出しとけばそこそこ応募者がくる」っていう時代の名残ですか?
それもあるでしょうけど。いちばんの理由は売れるからですよ。
真剣に採用成功を考えてる営業マンも、いると思いますけど。
そりゃあいますよ。でも、そういう人がいちばんしんどい。
どうしてですか?
だって、成功させられないじゃないですか。
でも、売らなくちゃいけない。
そう。
どうやったら成功させられるんですか。
やっぱり、採用・求人の基礎を学ぶしかないです。
何がいちばん変化したんですか?
一言でいえば、求職者の情報リテラシーが「飛躍的に上がった」ということです。
それはネットの影響で。
スマホの影響ですよ。もう生々しい情報を、知っちゃってるじゃないですか。
生々しい情報?
現場のグチとか、やめた人の情報とか。真実かどうかは別としても、会社や仕事のリアルさって伝わるじゃないですか。
今まではそうじゃなかったと。
昔は本当に、媒体上でしかその会社を知れなかったわけですよ。それ以上知るとなったら、その会社を直接見に行くしかなかった。
なるほど。
今はスマホを通じて、いろんなサイト、いろんなSNSにアクセスできますから。
だから情報リテラシーが高い。
格段に上がりましたよね。もうその一言だと思います。
にもかかわらず、絵に描いたような「いいシーン」だけをパシャりと撮って載せてる。
はい。「何も言ってないに等しいじゃん、こんなの」みたいな。
「表面的な求人だなあ」って思われてますよね?
言い方は悪いけど、新卒採用って、それで何とかなって来たんですよ。
確かに。
でも今は新卒採ってもすぐに辞めてしまいますから。
だって、情報を遮断できないですからね。
そうですよね。ずっとSNSつながってますし。
入社初日からLINEでつながるじゃないですか。リアルの体感・体験が、すぐに情報共有される。
新卒って、働いたことがないから扱いやすかったんですけどね。
少々理不尽でも「そうか、社会ってこんなにしんどいんだ」って勘違いしてくれましたから。
今はそうもいかないですよ。
「え?お前の会社、それおかしいよ」ってすぐLINEがきますから。
私、以前は「新卒がいい」って、ずっと言い続けてきたんですけど。
よく存じております(笑)
今でも、よく相談受けるんですよ。「新卒いいって、聞いたんですけど」って。
10年遅いですよね(笑)
はい。だから「やめといたほうがいいですよ」って言います。
説得力ありますねぇ。安田さんが言うと。
昔は新卒で採っちゃえば、「育てやすい」とか「辞めにくい」っていう優位性があったんですけど。
今年なんてゴールデンウィーク10連休だったじゃないですか。
はい。
連休明けに辞表続出だったかもしれませんよ。「一緒にやろうぜ」みたいな起業がスタートしたり。
でも2年後、3年後に辞められるぐらいなら、早いほうがいいですよね。
3~5年ぐらいの間で辞めるのが、いちばん痛いと思いますよ。
3年ぐらいで、仕事覚えて辞めちゃう人が多いみたいですね。
それだと、まったく投資が回収できないですね。
そうなんですよ。せっかく育てて、これからって時。
恋愛じゃないけど「3年も引っ張って、この私の3年どうしてくれるの!」って。
だから、石塚さんのオススメは3社目ってことなんですよね。
はい。3社目。それがいちばん理にかなってる。
恋愛でも、ひとり目と結婚するって、なかなかないですもんね。
よっぽどご縁がないと。
ところで石塚さんに、是非聞いておきたいことがあるんですけど。
何でしょう?
採用の業者さん選ぶときに、「こういう担当者がいい」ってのはありますか?
ああ、ありますね。
どういう人ですか?
ディテールの話に迫力がある人。
ディテール?
「この人、本当に現場でさんざんやってきたんだ」っていうタイプ。
どうやって見分けるんですか?
たとえば「何かわかりやすい事例ありませんか?」って聞いたときに、リアリティーが違うんですよ。
なるほど。他には、ありますか?見分けるポイント。
「できる・できない」が、はっきりしてる人。
できないって言ったら、売れなさそうですけど。
採用案件って「できる」「できない」「頑張ればできる」の3つしかないんですよ。
なるほど。
で、ほとんどが「頑張ればできる」という案件。だから商品の限界をきちっと最初に説明してくれる人が望ましい。
じゃあ「絶対こういうタイプにだけは発注しないほうがいい」って人、教えてもらえませんか?
商品パンフレットを理論的に説明する人。そういう人って力がないんですよ。
「理論的に」っていうのは、どういう説明なんですか?
「メリットはこうです」とか「こういう流れになります」とか「データベースに何万人います」とか。それ、単なる商品説明じゃんっていう。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。