2年後に2代目社長になる予定の方から、事業承継税制はどう活かせば良いのかとのご質問。前半では質問に関する回答がほぼ皆無でしたので、今度こそ真面目に回答します!(音声はこちら)
>>>大久保圭太氏のプロフィール
「事業承継税制」ってのは、納税が猶予されるんですよ。前からあったんだけど去年改正が入って、もともと3分の2までしか猶予されないのが全部猶予されたりとか、事業の継続要件がすごい緩和された。まあ、「何言ってんだ?」って話だね。
何言ってるかぜんぜんわかんないです。
だから要するに、同族経営をしてて、わかりやすく言えば息子に継がせるのに、「株価が高すぎて相続税払えねえよ」と。
まあ、よくあるパターンですね。
そうそう。なので、その相続税の、要はちゃんと会社を引き継ぐんだったら、一族で、相続税は納税猶予するよっていう話。だから、猶予なのが問題なのね。
その「猶予」っていうのはどんな感じなんですか?
猶予だよ。
期間?
そう。
金額とかじゃなくて?
金額じゃない。期間を猶予されるので。だから、ホントに免除されるのは死んだとき、本人が。死ぬまでもってて……
継ぐほうが?
そうそう。お父さんが死んで、もらうじゃない?まあ、贈与してもらってもいいんだけど、そのときに、本来払うべき贈与税・相続税は1回国はかけないよと。だから、そのまま経営し続ければ、で、株を譲渡しなければ、その代に関してはいったんかかんないでいるんだけど。
あ、そんなに長いんですか?猶予期間。
長い。基本その要件を満たせればっていう。で、言うように、質問から答えてしまうと、猶予期間がなくなったときには利子税はかかる。
あ、一応猶予される間に利子つくんですか?
つく。で、5年以上たってたら、当初の5年分はかかんないけど、基本的にはもっと長い期間の話だろうから、つくと考えたほうがいいよね。で、去年で言ったら0.7パーかな、利子税。だから1パーぐらいつく。いまの金利で言ったらつくのかなと。
年間で?
年間で。
これ、複利みたいになってくるんですか?
複利じゃないんじゃない?複利じゃないでしょ。利子税に利子税はつかないんじゃない?
あ、そうですね。なるほどね。まあ、そんなデカくないですね。
そんなデカくないから、これを調達だと思うんだったら、逆に調達したと考えたら、それぐらいのレートで借りてるので。
ああ、なるほどね。はいはい。
しかも、その次の、要は自分の子どもないし親族で要件該当する子にやるときにこの税制があれば、また猶予なのかもしれない。そこはわかんないんだよね、現状。だから、そういう意味じゃ、いまの新事業承継税制っていうのは35年の3月までに特例計画出して、みたいな。39年までに贈与だから、その次の世代のことはわかんないから、わかんないとしか……
「わかんない」というのは、まだ出てないってことですか?そのガイドラインというか、どうなるかがわかんない?
うん。
シンプルに「わかんない」っていう?
わかんない。そのときにあれば。だって、これだって急に出てきた税制じゃん。
これ、最近なんですか?
そうそう。もとのやつはもうちょっと前にあったけど、ごめん、正確にはあれだけど、ただ、30年改正でだいぶ使いやすくなったっていうことなんで。で、猶予が打ち切られなかったとしても、次の世代にこの税制があるかどうかはわかんないと思うんだよね。
ああ、なるほどね。でも、これ、たとえば、この方まだ37歳の方じゃないですか。継ぐとして、なんだかんだで、仮に60ぐらいまで仕事やろうとしても、23年ぐらい残ってるわけですよね。
そうそう。
その23年ずっと払わないと、猶予でき続けるんですか?
できるね。
ただ、0.何パーはつくけど、みたいな?
そのまま死んだらつかないよ。
じゃあ、自分が基本的に自分の出口を清算とかにすると……
清算しちゃダメ。
あ、清算もダメなのか。
ダメ。そのままもって死ぬ。
あ、そういうことか。
だから、そのときに、次の世代にこの税制があれば、たぶんそれでまた猶予できるのかもしれないっていうか、基本的にはそういうことが想定されるんだろうけど。
へぇ。
だから、言うように、承継以外は、清算したら全額課税だし、猶予額が。あと、譲渡した場合は、譲渡のほうが安ければそっちで差額が免除かも。納税猶予されてる金額、要は株価が下がっていくとする、年々、そのときに譲渡して安くでしか売れなかったといったら、所得税払った金額と免除額の差額は免除される。ちょっとややこしいな。
へぇ。これ、猶予期間を延ばしてる間に分割で払っていく、みたいなこともできるんですか?
いや、ないんじゃない、そんなの。
ただただ猶予できるんですね。
ただただ猶予。
払えるときには払えよと。で、死んじゃったら払わなくていいよと。
そうそう。だから、上場会社になったら払わなきゃいけないし。
売った場合とかは?
売った場合は払わなきゃダメ。
やっぱそういうことか。
うん。
継いだ場合もですよね、きっと。
継いだ場合?
次にたとえば自分の息子に。
いや、それはだから、次の事業承継税制を使うんじゃない?
あ、そうか。それもできる?
それはわかんないよ、でも。
そこがわかんないんですね。
そこが特例で期間が延長されれば、またやるんだろうけど。
この方、まさに「将来私がリタイアするときに、承継以外を選んだら詰むのでは?」ってなってますけど、そうですか?
あ、詰むかどうかは知らないけど、納税はする。
ってことですね。
で、利子税は払う、そうなったら。だから、その0.7パー、去年出たのが安いのか高いのかっていう問題だと思うんだけど、いま、でも、お父さんいるからいいと思うんだよね、べつに。
なるほど。
いまじゃないから、準備するのに出しておくっていうのはいいし、実際にいま贈与じゃなくて相続のときにいただくんだったら、ちゃんと遺言とか他のバランスも取んなきゃいけないけど、そしたら、そっからかかるから。で、もう1個、あったじゃん。
追伸になってたやつですか?簿価を下げて……
それは正解でいいですよね。一応納税猶予なんで、何かあったときには払わなきゃいけないわけで、そうすると猶予される額なんてちっちゃいほうがいいに決まってるわけだからね。
はい。
まあ、財務的にはもちろんあとで払ったほうがいいので、猶予されるっていうことは間違いではない。しかも個人のお金だからいいと思うんだけど、何かあったときのことを考えると、猶予される金額は下げたほうがいい。あともう1個は、相続税全体を下げることになるので、もっといろんな節税効果があるとは思うけど、なので、やったほうがいいんだけど、ただ、不動産とかゴルフ会員権の不良資産は、簿価が高くても、そもそも安く評価されるので、株価の評価上。だから、売却をべつにしなくてもいいよっていう。
もっときゃいいんじゃないの?っていう。
まあ、いらないなら売ったほうがいいよね、もちろん。もちろん売ったほうがいいけど、もしかしたら「市場価値が小さい」って言ってても、もっと相続税評価額がちっちゃいかもしれないし、ゴルフ会員権もどういう評価をしてるかわかんないから、それは税理士さんに確認したほうがいいと思う。あとは退職金はいいんじゃないかなと思うけど。退職金を取って、下げた段階で買うと。だから、結局そうなっちゃうんだよね。
これ、ここまで話聞いてたんですけど、結局、この事業承継税制をうまく使う対象とか使う方法って……
何も考えてなかった人が……
「やべえ、死ぬ」っていう……
そんな感じじゃない?わかんないよ、後継者不在問題で、この直近でもう亡くなりそうな、わかんないけど、80代とか……
対応策不能みたいな?
そうそう。で、「株価が膨れ上がっちゃった」みたいな、とりあえずその場しのぎで「どうしよう」みたいなときは使うよね。
っていうことぐらいってことか。じゃあ、これだけちゃんと事前準備できそうな方は、べつにあんま使う必要ないんじゃないか、みたいなとこですか?
と、俺は、手続きも含めて、正直面倒くさいし、ちゃんと移転させりゃいいじゃんって。しかも、まだ若いから。本人も37でしょ?
そうですね。
お父さんもそんなに、わかんないけど、高齢じゃないと思うんで。
だって、お父様も「会長に残って」って書いてましたよね。非常勤の会長になる感じで退職金を渡すって言ってるので、まだ動ける感じなんでしょうからね。
そうそう。だから、俺はあんま使わないで、なんとか対策を……。もうこれしかないっていうことになったら、もちろん使うけど。かなと思うけど。
いや、なんか、ちゃんと「借り返」とか読まれて勉強もされて。
株価下げようとしてるんだからね。
ね。そこまでできる方ですからね。
うん。
けどさぁ、いま思ったんですけど、今回の、もしかしたら、いい使い方が見つかれば、ぜひやったらいいのかなと思う一方で、普通の顧問税理士の先生の方が、「なんか事業税制でいいんじゃね?」みたいなことを言ってるっていう、これ、責任問題、結構大変な話ですね。
(笑)でも、これは税理士的には「納税額を下げただけなんだから、いいんでしょ?」って話じゃない?「だって、そのときにはM&Aなんて想定できませんでした」っていうことを言うんじゃないの。
ああ、そういうことね。
これでもしM&Aの話も何もなくて、ただ承継するのにこの税制を提案してなかったら、損害賠償になる可能性が高いよね。だけど、やってたら大丈夫なんじゃない?
ってか、この方のこの文脈からすると、事業承継税制を勧めるよりも、いま大久保先生がおっしゃってくださったような、きちんとした形の承継を行ったほうがいいっていうアドバイスが欲しそうじゃないですか、この方。
うん、そのほうがいいと思いますよ。
にもかかわらず、ここのね、ちょっと、これ、あんまり……
「わかりません」がすごいよね。「わかりません」ってことはないじゃんっていう。
いわく「事業承継税制を使えば問題ない」って言ってるらしいんですよ。これは結構ドキッとする話ですね。
あ~、まあまあ。
まあ、あんまり批判はね、ちょっとあれなんで。
「ただちに健康に影響はない」みたいな感じじゃない?枝野だっけ?枝野みたいな(笑)
枝野さんですね。
懐かしいね(笑)
いやいや、そういうことですか。でも、クリアになりましたね。
はい。まじめな、急に税金の話になっちゃった。
いや、いいじゃないですか。税理士の先生だってことをたまには思い出さないと。
なに、シボレーいじってるおじちゃんだと思った?(笑)
そうそう。「タイヤがタイヤが」っつって(笑)
(笑)
というわけで、やってまいりました。この方はぜひ、うまくいかしてるようですので、またご質問をお待ちしております。
はい。
というわけで、本日もありがとうございました。
ありがとうございまーす。