以前、不動産会社のホームページを作成したときに、
その経営者に取材をしたことがあります。
私も若かったので、不動産取引がどのようなものか
全く知らずに取材をしていたのですが、
その際に、違和感を感じた言葉がありました。
その経営者への取材では、
「物件を(売主さんから)買ってあげる」
という表現をされていたのです。
それは、“売ってもらう”じゃないのか?
お金を持っている人はこれだから好きになれない!
などと、勝手に憤ったまま時が過ぎてきました。
しかし、ようやく最近になって
この憤りが間違っていたのだと気づきました。
そもそも、
取引には売り手と買い手がいて、
金額や対価の合意があって初めて成り立ちます。
モノがなければ売り手がとても強く、
買い手は“売ってもらう”という表現をよく使います。
しかし、これに期限の制約が迫っている場合、
まるっきり立場が変わります。
いついつまでに、売らなければいけないという状態です。
現金化に急を要する時の不動産に限らず、
生鮮食品など消費期限のあるもの、
モデルチェンジした型落ちの商品、
流行遅れになりそうなものなどがこれにあたります。
そうなってしまうと、
立場が逆転してしまいます。
取引価格が暴落してしまうのです。
なるほど、
私の取材した不動産会社の経営者は、
期限付きで不動産を現金化したいお客様のことを、
私に話していたのです。
商売人にとってはこんなことは当たり前の話ですが、
普通の会社員をしていると、
そんなこと意識しなくとも生活できるため、
こんな当たり前のことがわかりません。
値札のついた商品しか買わないからです。
商売を新しく始めると、
必ず在庫やサービスの期限に直面します。
上手な経営者は、
一時的に損をしてでも、現金化が早いようです。
商売の出口はできるだけ遠くに設定したくなりますが、
上手な経営者はあえて出口を手前にもってくることで
トータルでの損を減らしているのがわかります。
知り合いにタピオカ屋さんを開業した方がいました。
以前ほどの勢いはないだろうと、
連絡するのをためらっていましたが、
風のうわさでは、からあげ屋さんに衣替えして、
大繁盛しているとのこと。
彼もタピオカを売り切ったあと、
また在庫や流行りの期限との戦いに出発したようです。
- 著者自己紹介 -
人材会社、ソフトウェア会社、事業会社(トラック会社)と渡り歩き、営業、WEBマーケティング、商品開発と何でも屋さんとして働きました。独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事をしています。
「自分が商売できないのに、人の商品が売れるはずがない。」と勝手に思い込んで、モロッコから美容オイルを商品化し販売しています。<https://aniajapan.com/>
売ったり買ったり、貸したり借りたり。所有者や利用者の「出口」と「入口」を繰り返して、商材を有効活用していく。そんな新規マーケットの創造をしていきたいと思っています。
出口にこだわるマーケター
松尾聡史