第96回 暇つぶしを奪われた人たち

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自覚して生きている人は少ないですが、人生には必ず終わりがやってきます。人生だけではありません。会社にも経営にも必ず終わりはやって来ます。でもそれは不幸なことではありません。不幸なのは終わりがないと信じていること。その結果、想定外の終わりがやって来て、予期せぬ不幸に襲われてしまうのです。どのような終わりを受け入れるのか。終わりに向き合っている人には青い出口が待っています。終わりに向き合えない人には赤い出口が待っています。人生も会社も経営も、終わりから逆算することが何よりも大切なのです。いろんな実例を踏まえながら、そのお話をさせていただきましょう。

久しぶりに夕方5時過ぎの電車に乗りました。
夜の電車はガラガラなのは知っていましたが、
夕方の電車が結構混んでいるのに驚きました。

「5時以降の時間は、
事務作業や明日以降の準備をする時間で、
仕事でもなんでもない!
セールスは営業活動をするのが仕事だ!
日中は営業活動しろ、帰ってくんな!」
と、上司に刷り込まれて育ったので、
こんなに多くの人が5時に帰るのかと、
不思議な気持ちで眺めていました。

業務の効率化やシステム化、
そこから生まれる新しいサービスの開発
などを仕事にしていると、
仕事で同じ成果を出すのにかかる時間は
ここ10年で格段に減っていると感じます。

さらに、
ここ2年ほどリモートワークが推奨され、
会議が激減し、
残業が制限されて、
会社飲みが開催されず、
接待もなくなってしまえば、
さっさと帰宅するようになったのでしょう。

会社に行かなくても、
売上も利益も減らないのだから、
早く帰ってもなんの支障もありません。

今となって考えれば、
仕事人間がもてはやされた時代には、
残業することや休日出勤が仕事ができる指標でした。
そんな中で働いていた私は、
必要もない残業や、
暇つぶしの休日出勤をしていました。
まあ、それが楽しかったし
忙しく見せるのが仕事だったとも言えます。

そして、
給料以外に何の目標もない私にとって、
暇つぶしの機会を貰えたのは、
本当にありがたいことでした。
家に帰っても、何もやることがなかったのですから。

そう、
私が5時過ぎの電車で帰る人たちをみて、
不思議な感覚になったのは、
「早く帰ってやることがあるんだ!凄いな!」
という、羨ましさに似た気持ちだったのです。

今でこそ、
意図して暇つぶしができるようになりましたが、
20年前なんて、早く帰れと言われたところで、
何していいかわからなかったはずです。

5時に帰っている人たちも実際のところは、
戸惑っているかもしれません。
しかし、
残業や休日出勤をする合理的理由もないのですから、
そんな時代に逆戻りすることもありません。

一日、数時間。
今まで会社や怖い上司が使ってくれていた
なんだかよくわからない時間。
私たちに、急に降って湧いた時間。
この空いている時間を何で満たすかによって、
どんな人生を送ることになるかが変わるはずです。

 

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- 著者自己紹介 -

人材会社、ソフトウェア会社、事業会社(トラック会社)と渡り歩き、営業、WEBマーケティング、商品開発と何でも屋さんとして働きました。独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事をしています。
「自分が商売できないのに、人の商品が売れるはずがない。」と勝手に思い込んで、モロッコから美容オイルを商品化し販売しています。<https://aniajapan.com/>
売ったり買ったり、貸したり借りたり。所有者や利用者の「出口」と「入口」を繰り返して、商材を有効活用していく。そんな新規マーケットの創造をしていきたいと思っています。

出口にこだわるマーケター
松尾聡史

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