人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。
第15回 「人間の成長」は努力の量ではない

今回は、「従業員満足度研究所株式会社」の代表である藤原さんに「人間の成長について」お伺いしたいと思います。

もちろん量が必要ないと言っているわけではないんです。ただ、「量だけ」では一定のラインを超えることはできない。その先まで行きたいのなら、量だけでなく質にこだわる必要があるよ、と言いたいんです。そしてそのためには、「自らに課す欲求」を高めていかないといけない。

仰るとおりです。「こうなりたい!なるんだ!」という強い欲求があると、自然とゴールから逆算するようになるんですよね。「ということは40歳までに課長になってなきゃいけない」とか、「だったら大学はこのレベル以上に入らなければならない」などと考えるようになる。

そうですそうです。努力って、あくまでも目標を達成するための手段なんです。でも多くの人が努力自体を目的化してしまっている。結果、「毎日縄跳びを100回飛べばスポーツ選手になれるはずだ」というような根拠のない努力を続けてしまう。

うーん。でも、20代でそれを明確に決めるのはなかなか難しいかもしれませんね。例えば筋トレをしている20代は大勢いると思いますけど、「ミスコンに出場するぞ!ボディビル大会で優勝するぞ!」と明確に決めてやっている人はほとんどいない気がします。

確かに現実的にはそうでしょうね。先ほども言ったように、ある程度のところまでは「量」をこなすことで到達できますから。それをやりつつ、徐々に目標=自分に対する要求を高めていければ問題ないと思います。

おそらく成功者と言われる人たちも、最初はがむしゃらにやってたんだと思うんです。でも途中で「なぜこれをやらなきゃいけないんだろう?」って疑問を持った。そこであらためて、「自分はどうなりたいのか」「何のために頑張るのか」を自問して、自分への要求を達成するための努力を始めたんでしょう。

そうですね。たとえば「◯月までに売り上げを◯%アップさせる」というところまで明確ではなくても、「従業員にもっと喜んでもらうぞ!」みたいな漠然としたもので十分だと思います。目標の方向さえ決まれば、逆算の発想は自然と出てくるので。

別にそれでも構わないと思ってましたね。「やりたくないなら勉強しなくていい」「ゲームだけやりたいんだったらそうしなさい」と言ってましたから(笑)。ただ「なぜそれをやるのか、自分で考えながらやれ!」「自分で決めて、その責任も自分で取るんだ!」っていうのは口酸っぱく言ってました。

ええ、仰るとおりです。ビジョンからの逆算が出きているのなら、別に勉強をしなかろうがゲームばかりしていようがまったく問題ない。そしてもちろん、ビジョンは自分で自由に描けばいい。誰かのマネをしなくたっていいわけで。

なるほどなぁ。ちょっと今の話で思い出したんですが、旅行の楽しみ方ってタイプがわかれるでしょう? スケジュールを分単位で決めてみっちり予定を入れる人と、そういうのを何も決めない人と。それもビジョンの違いですよね。

そうですね。一人ひとりに合うやり方、合うタイプがありますから。ともあれ冒頭の話に戻すと、やっぱり「がむしゃらに量をやる」という方法から、徐々に「目標から逆算して質にこだわる」という方法に変えていくべきでしょうね。

まぁそういう意味では、自分自身が量→質と変化してきたくせに、従業員に対しては「がむしゃらに量をこなせ」って言うのもどうかと思いますけどね(笑)。まぁ、自分もそうやって成長してきたから、同じようにやってみろってことなんだとは思うんですけど。

そうそう。私自身もこの従業員満足度研究所をやりながら、「仕事は考えながらやろう」とよく言っていますね。考えながらやった方が絶対に成長できますから。
対談している二人
藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表
1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。