第201回「広告費0、リニューアル0で販売数10倍超え!という小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「広告費0、リニューアル0で販売数10倍超え!という小さなブルーオーシャン」


オルビス株式会社のヘアミルクが、2023年「@cosmeベストコスメアワード 総合大賞」を受賞し、大きな話題となりました。実はこの商品、12年前に発売されたものであり、広告費やリニューアルは一切なし。

一体なぜ、今になって爆発的なヒットとなったのでしょうか?

「長期のバズ」を支える揺るぎない商品力

2011年当時、オルビスは低迷していました。
小林社長は、構造改革を実施し、スキンケアを中心としたビューティーカンパニーとしてのイメージを明確にするために、大量の商品を扱う「なんでも屋」から脱却しようと試みました。

その過程で、売上高が一定に達していない商品は全て取り扱いを停止することに。
しかし、その中に妙な輝きを放つ商品がありました。
それが、エッセンスインヘアミルク(以下、ヘアミルク)です。

当時、ヘアミルクは直営店では店舗に並べおらず、広告も一切打っていませんでしたが、じわじわと売り上げを伸ばしていたのです。

ヘアミルクには、他の商品にはない不思議な力がありました。
それは、使い続けた人だけが知る、驚きの効果です。髪はサラサラになり、ツヤめき、まるで魔法にかかったようでした。その感動は、口コミという名の波に乗って、静かに、しかし確実に広がり始めていました。

化粧品業界は、広告やタイアップに大きな資金を投じるのが一般的です。
しかし、小林社長はヘアミルクに広告費をかけませんでした。
その理由は、2つあります。
1. 口コミという魔法を信じていた
小林社長は、広告で認知度を高めようとすれば、せっかくの口コミの魔法が消えてしまう。そう考えたのです。
2. 採算が合わない
ヘアミルクは、1320円という価格設定です。広告費をかけて顧客を獲得しても、回収できない可能性が高い。

さらに、ヘアミルクは、発売以来、内容物・容器仕様・デザインに至るまで一度もリニューアルしたことがありません。ヘアミルクは、長年愛用している顧客が多数います。もしリニューアルして、使い心地が変わってしまったら、顧客の信頼を失ってしまう。小林社長は、そう考えてリニューアルをしないというわけです。

メーカーさんのお仕事をしていると「良いモノを作れば必ず売れる!」という経営者が多いです。私は、半分正しく、半分間違っていると思っています。良いモノを作れば売れるのは間違いないと思いますが、良いモノだと認識されなければ売れないとも思うのです。だからこそ、広告を打ち出したり、ブランディングをしたりするんだと思います。

ただし、今回のようなケースもあります。この場合、本気で良いモノだと信じている。自社が作り出したもののポテンシャルを絶対的に信じているのでしょう。さらに、お客さまの目を信じ切っているからだと思います。

今回は、自社のお客さまを100%信じ切っているという小さなブルーオーシャンなのではないかと思います。

 

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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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