【GlobalPicks/vol.153】シリーズコロナ後の世界(No.7)旧来型の教育産業

GlobalPicks 〜海外の情報を読み解いて、ビジネスに付加価値を投薬する方法〜 著者:小出 紘道


先週まで流行語大賞の話を数回に分けてしました。
今週からは「コロナ 後の世界」の話に戻ります。
「シリーズ コロナ後の世界(No.7)」です。

HOFFMAN YORKというクリエイティブとコンサルの会社のHPに良い分析記事が出ていたので、それを紹介します。

今回の記事はこれ

HOW WILL THE PANDEMIC CHANGE CONSUMER BEHAVIORS IN 2021?
2021年、パンデミックは消費者行動をどの様に変えるのか?
https://hoffmanyork.com/news/how-will-pandemic-change-consumer-behaviors-2021

パンデミック以後の2021年、消費者の行動がどの様に変わるのか?
という観点で下記の5つのprediction(予測)が論じられていてそれぞれ興味深い内容なので、全て紹介します。

Prediction 1: Higher education should expect multiple sources of disruption
Prediction 2: Consumers will shop online more than they did pre-pandemic
Prediction 3: Traveling will resume, but will look different for the Interim
Prediction 4: “Vacations” will transition to extended periods of “work remotely elsewhere”
Prediction 5: Remote work will coexist with regular office work, meaning home renovations will soar

Prediction 1から見ていきます

Prediction 1: Higher education should expect multiple sources of disruption
高等教育は、disruption(混乱/崩壊)の複数の要因を予期する必要がある

ちょっと分かりにくいですが、要するに「教育産業は、このままだとdisrupt(崩壊)しかねないので、過去の慣習に囚われずに新しい設計をすべきだ」というようなことです。

While there is still great value in the on-campus college experience, the pandemic and the ever-expanding sharing economy could really disrupt the education sector

リアルなキャンパスでの経験・体験に大きな価値があるとされている間は、パンデミックや拡大し続けるシェアリング経済が、旧来型の教育産業を本当に破壊してしまうかもしれない

日本でも頻繁に議論になってたと思うのですが「実際のリアルな場で(オンラインではなく)学びの機会を提供できない教育なんてお金を払う価値がない」というのが旧来型の発想というわけですね。
で、この旧来型の発想しかできない教育産業は、パンデミックとシェアリング経済の餌食になりますよ、という予測です。

私が旧来型教育の見解(リアルな場での学びにこそ価値がある)に賛成か反対かは述べるのを控えますが、ずっと「不思議」に思っていたことがあります。

『仕事』に関して、コロナ禍で多くのメディアや評論家が「リアルな職場ではなくリモートワークでも十分仕事が出来るし、むしろリモートワークでさらに付加価値を創出できる企業こそが強い。リアルな職場に頼る企業や経営者は優秀ではない」というトーンでバッサリ「リアル職場」を切り捨てていました。

一方で、同じメディアや同じ評論家が『学校教育』について「大学がオンライン授業になってリアルな場での友人との交流や学習機会や現場体験を与えられていないのは、授業料に見合っておらずけしからん。若い人達は低リスク群なのだからオンラインだけに頼らずに感染対策をしてリアルな場での教育を提供すべきだ」というトーンで「オンライン教育に頼る大学」を切り捨てるのです。

「???」

???です。
もちろん「オンライン教育」そのものが切り捨てられていたというよりも「授業料を減免しない姿勢」とか「オンライン授業の品質」などもまとめて切り捨てていたのだと思いますが、「職場は完全リモート」が称賛される一方で「高等教育は完全リモート」だと「欠陥扱い」されるようです。
ここに「不思議」というかもっと言ってしまうと「闇」を感じます。

このPrediction 1を日本に当てはめると「旧来の教育方法にこだわり続けるような教育事業者」は新しいタイプの新規参入者(日本では「N高」とか「スタサプ」とか、その他の今はまだ見ぬ参入者)によって駆逐される、ということです。
「教育はリアルな現場にこだわるべきだ」と言う一面的な見方しかしない「メディア」や、もっと言うとそうした「国策」や「慣習」が跋扈する国の教育産業全体が、Amazon University(仮)とか、そういう黒船にdisruptさせられるよ、ということかもしれません。

このように、オンライン教育の「根源的な価値」をうまく事業化するプレイヤー(黒船かもしれませんし、国内組かもしれません)が出てきたら、案外近い将来に、私立大学とか専門学校とかはバタバタ破綻するのかもしれません。極論ですけどね。

お気づきかもしれせんが、何故かこのPrediction.1だけが「消費者行動の変化」というよりも「事業構造の変化」について述べられていました。。。
来週に続きます。

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「本コラムと、本業ビジネスとの関係」(著者・小出紘道より)

本業ビジネスでは「マーケティング&戦略コンサル」の仕事と、「高付加価値情報提供サービス」の仕事をしています。本コラムは後者の「高付加価値情報提供サービス」の初級編としての入り口となればいいな、と思ってます。世界の誰かが”既にかなり研究したり、結論を出している”にも関わらず”日本では流通していない数値情報や文字情報”がたくさんあります。それらの情報を、日本のマーケットにフィットするように編集・分析すれば「競合他社」や「競合他者」を出し抜ける可能性が高まります。法人向けのサービスとなっていますので、詳細はFace to Faceでお伝えしますね。

著者情報


小出紘道 (HIROMICHI KOIDE)
◆株式会社シタシオン ストラテジックパートナーズ 代表取締役社長 http://citation-sp.co.jp
◆株式会社シタシオンジャパン 取締役会長 http://www.citation.co.jp
◆株式会社 イー・ファルコン 取締役 http://www.e-falcon.co.jp
<いわゆる経歴>
・2000年 株式会社東京個別指導学院に新卒で入社して、11ヶ月だけ働いてみた(→早めに飽きた) ・2001年 イギリスに行って、University of Londonで経済と国際関係を学んだり、Heriot-Watt Universityで経営学(MBA)をやってみた(→めちゃくちゃ勉強した)。この間に、イギリス人の友人とロンドンで会社を作ってみた(→イマイチだった) ・2003年 シタシオンジャパン社でマーケティングをやり始めてみた(→ろくにエクセルも使えなかった) ・2007年 シタシオンジャパン社の代表取締役社長になって経営をやってみた(→やってみてよかった) ・2018年 シタシオンジャパン社の社長を仲間に託し、引き続き会長としてコミットしつつも、シタシオンストラテジックパートナーズ社を設立してみた(→今ここ)
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