今週は!
年明け。池袋の地下街を歩いていると、一枚のポスターが目に留まった。伊勢神宮の内宮へと向かう、五十鈴川にかかる宇治橋。日本人なら誰しも一度は目にしたことがあるだろう風景が切り撮られている。
広告主は、伊勢市。写真の下に、小文が添えられてあった。今回、取り上げたいネーミングは、この小文なかで紹介されていたウェブサイトである。
『低空飛行』は、株式会社日本デザインセンターの代表取締役社長で、無印良品のクリエイティブディレクターとしても知られる原研哉氏が、日本各地の選りすぐりのスポットを紹介するウェブサイトである。
動と静、アンビバレンツな印象を受けるネーミングは、地上の景色をつぶさに眺められる高度で、日本の深部あるいは細部をくまなく見てまわる旅をイメージした比喩的なものとのこと。
注目したいのは、サイト内で紹介する場所の選定、写真、動画、文、編集のすべてを原氏一人で手がけていることである。その理由を、氏は「情報の独自性と篩(ふるい)の目の純度を維持するため」と説明している。
翻って、こちら。山口周氏の近著『ビジネスの未来』。
帯の文言はさておき(資本主義をハック?なぜこんなチープなキャッチフレーズにしたのだろう)、氏は大きな社会課題となりつつある「精神的な飢え」を解消できるのは、これまでのような大企業というスタープレイヤーではなく、個人や集団なのではないかとし、そのためのキーワードとして「小さく、近く、美しく」を挙げている。
原研哉氏の手によるこのウェブサイトは、まさにそれを体現するもののひとつだろう。3つのキーワードに、「低く」を加えてもいいかもしれない。低くとは、物理的な高度であると同時に、ボクら人間が世界を見る目線でもある。
低空飛行 https://tei-ku.com/