♯157「ボク」

今週は!

某日、会社にてクライアントとの定例オンラインミーティングを終えて、ほっとしていると、向かいに座って議事録をとってくれていたF女史がつぶやいた。

―佐藤さん、最近、ボクなんですね。

―ん?

―ブログを書くときの。

―あっ、それね。急になにかと思った。そうなんだよ。最近、ボクなんだよ。よく気がついてくれました(笑)

F女史が話していたのは、ブログを書く際の主語表記についてだった。

『日曜日は、ネーミングを掘る』を書き始めた3年前から、主語表記としてずっと「私」を使用していた。が、じつのところ、しっくりときていなかったのである。

書き手である自分と、ブログのなかの「私」が乖離しているような。そこにいるのは、誰だ?的なちぐはぐ感があった。

日本語は、難しい。英語なら「Ⅰ」と表記すればよいところ、じつにさまざまな選択肢がある。ある経営者のインタビューを聞き直していたとき、2時間ほどの間に「わたし」「おれ」「ぼく」「じぶん」の4種類の主語を使っていた。自分も話すときの主語は、結構いい加減である。

ただ話すときには、主語がばらついても不自然ではないし、聞き流せばよい。しかし、ブログのように記録に残る場合は少々気持ちがわるい。しかも、書く場合、「Ⅰ」のバリエーションは話す場合と比べて格段に広がる、それぞれに「漢字」「ひらがな」「カタカナ」表記があるからだ。

さて、自分には一体どれがいちばん合うだろう。書きながらずっと迷っていたのであるが、昨年の年末(正確には142回目のブログと143回目のブログを書いた間である)、ついに主語を任せられそうな相棒が降りてきたのだった。

それが、「ボク」だ。

なぜ「ボク」で「僕」や「ぼく」ではないのか。理由は定かではないが(知り合いのブログだかnoteを読んだ影響だった気もする)、以来不思議とブログを書くときの違和感はなくなった。

名は体を表すというが、村上春樹なら「僕」、ビートたけしなら「おいら」といったように、主語表記にもその人に合ったものがきっとある。

そんなふうに、いまのボクは思っている。

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