「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。
第23回「キューバと北朝鮮」
前回第22回は「開国事情と中国のポテンシャル」
キューバとアメリカの仲が、また微妙になってきましたね。
そうみたいですね。
キューバとアメリカって、元はすごく仲が悪かったんですよね?
そうですね、キューバ危機がありましたから。常に一触即発でした。
元々は、アメリカの傀儡政権みたいな感じだったんですよね?
キューバ革命の前はそうでしたね。
で、カストロさんが革命を起こした。
カストロとチェ・ゲバラです。
二人が傀儡政権を転覆させて、アメリカの金持ちを追い出しちゃったわけですよね。
そうです。それでアメリカが怒って国交断絶。
で、ロシアに頼ったと。
まあ、そういう流れですね。
で、ずっと国交断絶してたけど、オバマさんが和解に向けて舵を切った。
はい。革命でアメリカの財産を奪われたけど、もとはと言えばアメリカが好き勝手やってたわけなんで。
ですよね。で「そろそろ和解したらいいんじゃないの」と。
はい。でもトランプが出てきて「やっぱり許さん」みたいなことになってます。
何でそんなにコロコロ変わるんですか?
支持層が違いますからね。
なるほど。ところでキューバって社会主義国ですよね?
そうです。
社会主義国って、すごく暗いイメージがあるんですけど。キューバって明るいじゃないですか。
行った人の話を聞くと「明るい」「楽しそう」というイメージですね。国民の収入は少ないんですけど。
観光客と地元の人とで、価格がぜんぜん違うらしいですね。アイスクリームの値段が100倍ぐらい違うとか。
通貨の価値が違うんで。観光客は高いんですけど、国民は物価が安いし、医療とか学費とか、ぜんぶタダなんですよ。
福祉が充実してるってことですか?
そうです。すごくしっかりしてる。お金持ちではないけど、それなりに豊かに暮らしてますね。
でもメジャーリーガーとか、アメリカに亡命するじゃないですか。
あれは純粋に、高いレベルで野球をやりたいんじゃないでしょうか。
でも、お金のこともゼロではありませんよね?
メジャーで成功したら、桁違いの金持ちになれますからね。
ですよね。キューバにいたら、普通の国民と同じですもんね。
同じですね。たくさんある職業のひとつ。
国交が正常化すれば、亡命しなくてもメジャーで野球ができるようになるそうです。
ただ、メジャーで稼いだお金の一部がキューバ政府に流れるようになっていて、それでトランプさんが猛反対してます。
なるほど。今後はどうなっていくんでしょうか?
カストロ兄弟の時代が終わって、キューバも変わりつつあるって感じじゃないですか。
社会主義が終わるかもしれない?
いや、それはないですね。
野球選手だけじゃなく、他の国民も「もっと稼ぎたい」って思ってるんじゃないですか。
そこはちょっと、中国とかとは違うんですよね。
どう違うんですか?
確かに「もうちょっと、お金持ちになってもいいんじゃないの」みたいな意見はあるんですけど。
そりゃあ、あるでしょうね。
アメリカみたいに「完全な自由主義」にするかと言ったら、「それは嫌だ」って。
別に大金持ちにならなくてもいいと?
これまでもよかったし、もうちょい頑張った人が稼げれば「アホみたいに金持ちにならなくても十分ハッピー」みたいな感じなんでしょうね。
バランスの取れた国民性ですね。
すごく充実した福祉国家なので、それはそれで大事にしていきたいんでしょうね。
アメリカはキューバと北朝鮮を同じように扱いますけど、ぜんぜん違いますね。
違いますね。
カストロさんって、国民から尊敬されてるじゃないですか?
そうですね。かなり尊敬されてます。
北朝鮮の金正恩に対する尊敬とは、ちょっと違いますよね。
北朝鮮は「無理やりつくってしまった」という感じですね。
確かに。無理やりな感じがします。
伝説とか、カリスマとか、偶像を、無理やりつくってしまった。
キューバは違うんですか?
カストロとかチェ・ゲバラとかって、もっと人間くさいんですよ。
でもカリスマですよね。
自分の子どもに引き継がせるとかもないし。伝説はまわりが勝手につくってるだけ。
確かに。「自分の写真とか飾るな」って、カストロさん言ってましたね。
そう。偶像崇拝になると「否定するやつはぜんぶ殺すぞ」という恐怖政治になっていくので。
キューバは恐怖政治ではないと?
ルーツが違いますからね。
ルーツ?
アメリカ人の金持ちのために働いていたのを、「もうちょっと平等にしよう」みたいな理念で始まってる。
北朝鮮はどんな感じで始まったんですか?
ロシアの軍人だった金日成が、傀儡政権的につくったと言われてます。
そういうルーツって、やっぱり影響するんでしょうね。
ルーツは、めっちゃ大事だと思います。
どんなにうまく洗脳しても、やっぱ根っこのところは「変えられない」ってことでしょうか?
地理的なことも影響してるでしょうけどね。
地理的なこと?
キューバは島国ですが、北朝鮮はまさに陸続きなんで。いろんな裏工作とかが、めちゃくちゃあったと思います。
気候も違いますもんね。
キューバは南国で暖かいけど、北朝鮮は寒くて飢饉も結構来るので。そういう影響もあるでしょうね。
ただ、なんとなくキューバは「国民の総意」として、いままでのやり方に納得感をもってる気がするんですけど。
それは、やっぱりルーツに誇りをもってるからでしょうね。
カストロさんやゲバラさんを、心から尊敬してるってことですよね。
そう思います。
でも、泉さんの予想では「北朝鮮は崩壊せずに、このままいくんじゃないか」ってことでしたよね?
はい。あのままいくんじゃないかなって、気がします。
すごくバランスが悪そうな国ですけどね。
国の中だけ見たら、そうなんですけど。あれはあれで、うまくバランスが取れてるんですよ。
どういうバランスですか?
中国、ロシア、日本、韓国、アメリカという国の間で、絶妙にバランスが取れてる。
まわりの国にとったら、あってくれたほうがいいと?
はい。緩衝材みたいなものですね。
日本から見たら、必要とは言えない気がしますけど。
そうなんですけど、じつは日本との間でもバランスは取れてるんですよ。
どんなバランスですか?
反日思想というバランスですね。そこが国家としての原点なので。
じゃあ、日中関係や日韓関係が、ものすごく良くなったとしても、反日は残るっていうことですか?
反日という思想も含めて、この地域のバランスは成り立ってるんですよ。
…次回へ続く…