変と不変の取説 第33回「飛躍するマイノリティー」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第33回「飛躍するマイノリティー」

前回、第32回は「大人が教えるべきこと」

安田

カネカさんが炎上したのは知ってますか?

はい。知ってます。

安田

旦那が育休とって「育休明けに会社行ったら転勤させられた」って奥さんがツイートしたんです。

最初は社名を出してなかったんですよね。

安田

はい。でもすぐに特定されちゃって。「なんてひどい会社なんだ」ってことで、大叩きされました。

ああなったら、もう止められないです。

安田

たったひとりの発信が、もうホームページがダウンするぐらい大変な騒ぎまで発展しますね。

ああいうメッセージが、特に広がりやすくなったんですよ。

安田

いままでだったら「会社に文句言うなんて、とんでもない!」ってほうがマジョリティーだった気がするんですけど。

マイノリティーの発言力が強くなったってことです。

安田

ですよね。「プロ奢ラレヤー」という、奢ってもらうということを職業にしてる人とかまで現れたり。

けっこう有名人ですよね。

安田

でも言ったら物乞いみたいなもんじゃないですか。今までだったら恥ずかしくて名乗りを上げたりできないですよ。

SNSみたいなメディアができて、価値観が変わったんですよ。

安田

なるほど。

マイノリティも発信できるようになって、それに触発を受けた人がフォロワーになって行く。

安田

奢られる人のファンって、何が楽しいんですかね?

ミュージシャンと同じですよ。レコード聴いて「俺もミュージシャンになりてぇ!」って人と同じ。

安田

そういう生き方に憧れる人がいるってことですか?時代が変われば、発信者もフォロワーも変わっていくと。

ビートルズだって最初は異端だったんですよ。でもその影響でバンドやる人が増えて、どんどん増殖していった。

安田

なるほど。最初はみんな異端なんですね。

その敷居が、ぐんと低くなったってことです。

安田

たしかにWebの世界だと、全体の1%が強烈に支持してくれたら十分ですもんね。

そうなんですよ。リアルだったら周りの人間が99%「フザけんな!」って言ったら、厳しいじゃないですか。

安田

確かに。心が折れますよね。でもWEBであれば「自分に賛同してくれる人」とだけ繋がっておけば、やっていける。

はい。ゆたぼん君だって、ちゃんとユーチューバーとして稼いでるじゃないですか。

安田

確かに。

それとやっぱり双方向っていうのがデカいんじゃないですか。

安田

双方向?

テレビとかマスメディアは一方通行ですから、マジョリティーに向かざるをえない。

安田

少数の意見なんて、聞こえませんからね。

そう。そこが全然違う。

安田

今後はどうなんですか。第2の「ゆたぼん」とか「奢ラレヤー」みたいな人が、増えていくんですか?

もっともっと増えますよ。

安田

でも、そうなったら体制側の人ってやりにくいでしょうね。

やりにくいですねぇ。会社の管理側とか、学校の先生とか。

安田

そういう体制側の人たちって、どうするんでしょう。

そういう人たちは、もっと管理を厳しくするでしょうね。

安田

え?時代と逆行してますけど。

してますけど、従順なる人を採用して管理していく、という動きになる。

安田

でも、イエスマンだけじゃ成り立たなくなってるじゃないですか。

その対策は考えるんじゃないですか。

安田

従順じゃない人も一定数は入れていくとか。

社員としては抱えないと思います。社外のリソースとして使うんじゃないですか。

安田

あくまで外注という感じで。

はい。外注とかスポットで。でないと社内の秩序がおかしくなってしまう。

安田

まあ、会社だったらそれでいいかもしれませんけど。学校はどうするんですか?

学校ですか。

安田

「自分の主張をもってるから、君は小学校入れません」みたいなのはできないし。より厳しくなって「休んだら少年院」みたいになるんですか?

いや、学校はより自由になっていくと思います。

安田

なりますか?

はい。会社は厳しくなるところもあるけど、学校は自由になっていく。

安田

じゃあ「宿題はしません」とか「集団行動はしない」っていう子供も出てくる?

出てくると思います。

安田

そしたら、もはや義務教育とは言えないんじゃないですか?

これまで通りの義務教育だと、まず先生のなり手がどんどん減っていくでしょうね。アホらしくて。

安田

へぇ。

そもそも、あんなブラックな職場で、あんな古い教育のスタイルで、ホントはやりたくないんですよ。

安田

かなり過酷みたいですもんね。

仕事は過酷だし、学校行きたくない子どもたちを無理やり来させるとか、先生だってやりたくない。

安田

そうなんですか?

今の若い人たちは、そういう先生にはなりたがらないです。だから、なり手もどんどん減っていく。

安田

まあ、そういう志をもった人もいるんでしょうけど、「安定して公務員として給料もらえるから」っていう人もいるんじゃないですか。

そういう人は残るでしょうね。

安田

そんな人ばっかり残っても困りますけど。

でも改革をしないと、会社も学校もそんな人達ばかりになりますよ。

安田

もし、改革されなかったら、志を持ってる人はどうすると思いますか?

そうしたら、そういう人は学校や会社を飛び出してしまうでしょうね。

安田

自分で起業してしまうとか。

はい。寺子屋とかつくる人とかも出てくるんじゃないですか。

安田

そうなった方が早いかもしれませんよ。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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