変と不変の取説 第41回「必要悪の終焉」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第41回「必要悪の終焉」

前回、第40回は「のびのびの効果」

安田

上岡龍太郎さんって知ってます?

知ってますよ。昔、関西で大人気だったお笑いの大御所ですよね。

安田

その上岡さんの、かつての名言が今ネットで話題になってまして。

それは知らなかったです。

安田

吉本の芸人が叩かれたじゃないですか。反社会組織との繋がりで。

はい。

安田

上岡さん曰く「お笑いと反社会組織っていうのは、根っこがつながってるんだ」と。

ほう。

安田

「まっとうな努力をしたくない、でも金持ちにはなりたい、ちやほやされたい」という人がなる職業らしいです。どちらも。

すごい考え方ですね。

安田

汗水たらして働きたくないけど、金持ちになりたいし、偉そうにしたい。そんな人の中で腕っ節がたつ人がヤクザになり、口が達者なのがお笑い芸人になるんだと。

なるほど。それは一理あるかもしれませんね。

安田

はい。だから根っこは一緒なんだと。つながってても不思議はないんだって。

むかしは繋がってましたからね。

安田

やっぱり、そうですよね。

演歌歌手なんかは、ほとんどそうじゃないですか。北島三郎さんとか。

安田

繋がってないと地方巡業とか出来なかったでしょうね。

はい。美空ひばりさんとかも全部、神戸芸能みたいなヤクザ集団、山口組系とつながってたんで。

安田

お祭りのテキヤとかも、素人では仕切れませんもんね。昔は。

そうです。昔は全部そういう人たちが仕切ってたんですよ。

安田

じゃあ、秩序がない時代はしょうがなかったと。

力ずくの秩序というか、暴力の秩序みたいなのが昔はあったので。山口組も、もともと神戸の港湾ビジネスですから。

安田

そうなんですか?

港には、世界中から腕っ節の強い荒くれ者が、集まってくるわけじゃないですか。

安田

集まってきそうですね。

それが悪さをしよるので、誰か抑えないといけないじゃないですか。

安田

なるほど。そういう歴史があるんですね。

はい。あるんですよ。

安田

でも法律が厳しくなって、距離を置かないといけなくなってきたと。

そういう時代ですね。

安田

「いままで一緒にやってたのに、それはないやろ」みたいな感じなんですかね?

そういう時期もあったと思いますよ。

安田

今後はもう、くっついたりしないですか?

今後はそういうのを全部排除していくんでしょうね。吉本興業も、どこかで全部切って、1回リセットしたんだと思います。

安田

よく切れましたね、でも。

それで紳助さんも辞めちゃいましたからね。あれでだいぶ浄化されたんじゃないですか。

安田

あれで完全に切れた?

どうなんでしょう。まだオレオレ詐欺的な人たちとの繋がりはあるかもしれません。

安田

それは組織的にですか?

いや、個人でつながってるんでしょうね。

安田

闇営業とかで?

闇営業しないと、吉本の仕事だけでは食えない人がたくさんいるので。

安田

反社会組織の仕事でもやってしまうと。

やっちゃう人もいるでしょうし、分からないで受けちゃう人もいるでしょうね。

安田

ヤクザ組織と違って、反社会組織ってグレーゾーンが大きそうですよね。

そうなんですよ。普通の人の知り合いが反社会組織の人間だったり。

安田

じゃあ避けようがない。

個人では難しいでしょうね。だから事務所を通じて仕事をさせる。

安田

でも事務所を通した仕事だけでは食べていけないし。

そうなんですよね。

安田

じゃあ、これからも、どんどん出てきますか?

出てくるでしょうね。

安田

グレーゾーンでも許されない?

許されないと思います。暴対法ができて、かなり厳しくなりましたから。

安田

今はもう「ヤクザでは食えない」みたいに言われてますよね。

資金源の締め付けがどんどん厳しくなってますから。

安田

国としてヤクザ組織は撲滅しようとしてるんですか?

徹底してやると思いますよ。

安田

取り締まるんだったら、もっと早くやれよって思うんですけど。

昔は必要悪みたいなところがあったんですよ。

安田

今は必要悪も許されないってことですか。

やっぱり世の中全体が、必要悪を受け入れない社会になってきてる。

安田

必要悪を受け入れない社会?

体罰とかもそうじゃないですか。効果があるとしても絶対に許されない。

安田

確かにそうですね。

社会全体がそうなってきてるんですよ。

安田

どうしてそうなったんでしょう?

社会的に成長したっていうことじゃないですか。

安田

成長ですか。

昔はそういう必要悪な人たちが、やんちゃくれの悪さしてるやつを舎弟にして、組織の中である程度ブレーキかけて、面倒見てたわけですよ。

安田

でも組織で悪いことやってたわけでしょ?

放っといたらもっとひどい犯罪者になるかもしれないので。人殺ししたりとか強盗したりとか。怖い組長が仁義教えて、力ずくでそういう世界に入れてた。

安田

なるほど。確かにヤクザが弱くなって、オレオレ詐欺とか半グレみたいなのが出てきましたもんね。

そうなんですよ。

安田

じゃあ、ヤクザ組織が完全になくなったら、秩序が崩壊してさらに酷くなるんじゃないですか。

今がそういう状態ですね。

安田

今後はどうなるんですか?

収束に向かっていくと思います。

安田

向かいますか?

はい。半グレって結局、社会への影響力がないので。

安田

ヤクザはあったんですか?

彼らは政治とか、さっきの芸能とかにもどんどん人を送り込んで、資金源と政治力で社会を牛耳っていたので。

安田

力を持ちすぎたってことですかね。

そういう人たちが「社会を動かす時代」が終わったってことですね。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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