さよなら採用ビジネス 第100回「肉というビジネス」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第99回『人はどこまで管理されたいのか』

 第100回「肉というビジネス」 


安田

コロナで外食が大打撃を受けてますね。

石塚

もう大変なことになってます。

安田

ケンタッキーやマクドナルドは健闘してますけど、いきなり!ステーキは大変そうです。

石塚

かわいそう(笑)

安田

同じように肉を扱う飲食業なのに、どうしてこんな差が出るんですか?

石塚

ケンタッキーやマクドナルドは飲食店でもあるけど、製造業でもある。つまり、もともとテイクアウトするお客さんが一定数いる。

安田

確かに。

石塚

製造小売業みたいな業態は、こういう事態には強いんでしょうね。

安田

“いきなり!ステーキ”だってテイクアウトはやれるでしょ?

石塚

できなくはないけど、ぜんぜん別のビジネスモデルですからね。その分野に関しては素人だし。

安田

やっても採算が取れないと?

石塚

本業を補うのはまず無理でしょう。もともと「いきなり!ステーキ弁当」みたいなものをやってたら、こういうときにカバーできたかもしれません。

安田

なるほど。テイクアウトはそんなに甘くないぞと。

石塚

そもそもステーキって、おいしい肉を買って自分で焼いたほうがコスパが高い。

安田

いや、そのとおりですね。

石塚

安田さんが“いきなり!ステーキ”食べても「なんじゃこりゃ」って感じでしょ?

安田

「なんじゃこりゃ」とまでは言わないですけど。もう1回行こうとは思いません。おっしゃるとおり自分で焼いたほうがうまい。

石塚

そうですよね、やっぱり。率直に「この味だったらちょっと高くね?」って思う。

安田

もうちょいおいしいんだったら行ってもいいですけど。お金出してまで食べるもんじゃないなって感じ。

石塚

たぶん安田さんは、あれが安くなっても行かないと思う。

安田

行かないですね。

石塚

そうでしょ。「一律500円下げますよ」なんて言っても「俺をバカにするな」と。

安田

「バカにするな」とは思わないですけど(笑)

石塚

「俺をうならせるようなA5の肉を持ってこい」みたいな。でも、そうするとお金がもっとかかっちゃうから。「それだったら自分で買って焼くわ」って。

安田

まあそうなりますよね。

石塚

今は個人でもいろんないいお肉が買えるでしょ?

安田

ネットで手軽に。ちょうどいい大きさに切り分けられて真空パックされてたり。

石塚

自分でちょっと料理できる人ならそうしますよ。

安田

じゃあ“いきなりステーキ”のターゲットは自分で肉を焼けない人?

石塚

炭水化物を抜くダイエットに最適なメニューなんですよ。ライザップの追い風もあったでしょうし。ただ何百店舗も出すような業態じゃない。

安田

店を出し過ぎたと。

石塚

前にも言いましたけど「いきなり!ステーキ」という業態をつくりすぎた。

安田

それでいうとケンタッキーも相当偏ったメニューだと思うんですけど。

石塚

でもたまに行きません?

安田

行きますね。なぜでしょう。フライドチキンはコンビニでも買えますけど「ケンタッキーのフライドチキン」がどうしても食べたくなる。

石塚

うん。わかる。

安田

たまに、すごく食べたくなって、食べちゃうんです。

石塚

わかります。僕でいうコカコーラと一緒ですよ。

安田

へぇ~。

石塚

たまに飲みたくなるんですよ。

安田

すごくよくできてるなと思う。しょっちゅう食べたいわけじゃないけど、たまにあの味を思い出して食べたくなる。

石塚

あれはやっぱり持ち帰りに意味があるんですよ。

安田

そうですね。最近だとウーバーイーツとか。

石塚

そうそう。「パーティーバーレル」ってわかります?

安田

はい。あのバケツみたいな。

石塚

いまでもあれは「うわぁー!」って盛り上がる。

安田

わかります(笑)

石塚

でも決して安くないじゃないですか。

安田

結構高いですよね。なんだかんだ買ったら4〜5,000円になったり。

石塚

します、します。しますけど、ちょっと食卓が「おーっ!」と盛り上がる。

安田

確かにワクワクしますね。マクドナルドにはそういうのがなくなりました。

石塚

マクドナルドは非常用というか。本当に食べる場所がなくて時間もなければ、消極的な選択としてマクドナルドを使う。

安田

でもケンタッキーよりマクドナルドの方がはるかに店は多いです。

石塚

そこがケンタッキーの適正規模なんですよ。

安田

ああ、なるほど。そこをきちんと守ってると。

石塚

はい。

安田

いきなり!ステーキは適正規模を超えちゃった?

石塚

とっくに超えてますね。

安田

沖縄には「やっぱりステーキ」という、いきなり!ステーキの偽物があるらしいです。でもそっちのほうが人気らしくて。

石塚

おいしかったりして(笑)

安田

おいしくて安いそうです。まだ関東には来てないらしいですけど。

石塚

沖縄はステーキ文化の歴史もありますから。

安田

たしかに沖縄でステーキ食べたらおいしい。沖縄に行ったら食べたくなります。

石塚

肉のルートがあるんでしょうね。

安田

確かにステーキって肉を仕入れて焼いてるだけだし。

石塚

そのとおり。ケンタッキーみたいに「うちでしか出せない味」ってわけじゃない。

安田

いきなり!は「立ち食いで低価格」ってのがよかったんでしょうか?簡単に真似できそうですけど。

石塚

いきなり!のビジネスコアは某商社の仕入れルートです。

安田

じゃあ「仕入れが安いって」ことがすべて?

石塚

そのとおり。他じゃ絶対に契約できない仕入れルートを独占的に契約してる。だから社長は「いける」と踏んだんでしょうね。

安田

へえ。でもいけなかった。

石塚

飲食業の経営の公式からいうとそれは正解なんですよ。「このレベルをこの値段で安定的に調達できる」から「勝った!」と思った。

安田

なぜダメだったんですか?

石塚

一瀬さんが見誤ったのは、消費者は「もっとおいしいものを日頃からいっぱい食べてる」ってこと。ステーキばっかり食べに行かない。

安田

たまに食べるんだったら、美味しい洋食屋さんのステーキもありますし。

石塚

そっちのほうがゆっくりできるし、美味しいし。

安田

ソースにもこだわりあるし。つけ合わせやサラダも美味しいし。

石塚

そうなってくるんですよ。だから結局、焼肉と同じ。設備とか仕組みでは飲食業って制覇できないんです。

 

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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