変と不変の取説 第85回「陰が極まるその前に」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第85回「陰が極まるその前に」

前回、第84回は「正義感と錦の御旗

安田

コロナへの日本政府の対応について聞きたいんですけど。

なんか不満そうですね(笑)

安田

だってアベノマスクも10万円給付も、とにかくスピードが遅い。

遅いですね。いちばん重要なところなんですけど。

安田

ですよね。崖から落ちそうなのに「いまロープをつくってます」って感じ。どう考えても間に合わないでしょ。

これはですね。意思決定する人たちが「どうやってそのポジションについたか」というプロセスが影響してるんですよ。

安田

プロセスですか。

「うちの業界に有利な法律つくってもらえませんか?」「あなたに投票しますんで」というプロセスで選ばれた人たち。

安田

まあそんな感じでしょうね。

その業界が得する法律をつくると、また票を入れてくれる。そうやって立場が安定する。

安田

なるほど。

彼らはそういう部分最適ばかりやってるわけです。

安田

全体最適は考えないってことですか?

全体を考えてつくってきた経験も、一緒にやってきた人脈も仲間も、なーんにもない人がリーダーになってる。だからできるはずない。

安田

人脈とか能力とかいりますか。即断即決で「今すぐやるぞ」って宣言すればいいだけですけど。

それができないんですね。サラリーマン社長だと。

安田

できないですか。

できないんですよ。

安田

決断ができないってことですか?

まわりがうるさいんですよ。いろいろ言ってくるんです。「これが大事だ」「あれが大事だ」って。

安田

なるほど。で、何が大事かを自分では決められないと。

自分では決められないし、相談する仲間もいない。

安田

国のトップ機関なのに。ひどいですね。

リーダーを脅す人もいるんですよ。「これしなければ自民党は壊れる」とか「国がおかしくなる」とか。外野の声がいっぱい入ってくる。

安田

無視できないと。

できませんね。首相は国会議員から選ばれてますから。で、それを全部調整しようものなら、めっちゃ時間かかるってことです。

安田

なるほど。もめないように折衷案にしてるうちに時間がかかると。

時間はかかるし大した策は打てない。妥協案なので無難なやつだけ。

安田

じゃあマスクも無難な案ってことですか?

そうですよ。いちばん無難です、あれ。

安田

無難っていうより無様ですけどね。海外では「冗談じゃないか」とまで言われて。

危機のときに「無難」は「無様」になるわけです。

安田

日本のリーダーは「危機には向いてない」ってことですね。

そうです。平時のリーダーです。平時でもまあ、いまいちですけど。あんまり大きな問題にはならない。

安田

東日本大震災のときは民主党政権で、対応の不備で政権を追われたイメージですけど。「非常事態に何の役にも立てへんやん、こいつら」って感じで。

そうでしたね。

安田

自民党もさんざん「悪夢の民主党時代」って叩いてましたけど。いざコロナ危機になったら自民党もほとんど役に立ってないっていう。

国民はそこに気づいたんじゃないですか。3.11のとき「自民党やったらいけるんちゃうか?」って思ったけど。結局、党の問題ではないんですよ。

安田

政治システムの問題ってことですか?国民投票で国のトップは決めれないし。

まあ、国民投票で決めた大統領も大したことないですけどね(笑)

安田

そうですけど。日本の場合は「何らかの利権」を代表している人たちの投票で決めるわけでしょ?

そうですね。

安田

そうなると、もう、利権が選んだ利権ってことになります。

ですね。

安田

今後はどうなるんですかね。民主党のときには「やっぱ自民党じゃないといかん」ってことで自民党に鞍替えしましたけど。今回、鞍替えする相手がいないじゃないですか。

ないですね。行き詰まりましたね。

安田

かといって、また次も自民党が政権を取ったら、もう「お墨付き」を与えたようなもの。

やりたい放題になるでしょうね。

安田

やる気をなくして誰も選挙に行かなくなる。ますます今の政治が続く。

行き詰まりですね。どん詰まりに来ましたね。

安田

来ちゃいましたか。

はい。

安田

でも陰陽的には「陰きわまれば陽」になるんでしょ?

なるでしょうね。社会体制が変わるぐらいになれば。

安田

社会体制が変わるっていうのは共産主義になるとか、そういうことですか?

そこまではいかなくても「“OS”を変えるぞ」って人たちが出てくれば。

安田

OSですか。

今の党はただのアプリケーションなので。OSを変える動きが国民からワーッと上がってくれば変わるかもしれないです。

安田

OSっていうのはつまり憲法ですか?

そうです。「憲法から何から、もう1回考え直すか」っていう。

安田

でも、そこを変えようと思ったら、大多数の国会議員の賛成が必要ですよ。

「憲法を変えよう」という目的で、自民党がアホらしいと思ってる政治家を全部集めていく。

安田

新しい党をつくるってことですか?

それしかないですよ。

安田

次の総選挙にはそういう党が出てきますか?

いや、次は出ないですね。

安田

じゃあ次の選挙は、また自民党がなんとなく選ばれる。

はい。選ばれて、もっとどん詰まりがくる。

安田

今でも十分どん詰まりですけど。

今はどん詰まりの入口に来ただけ。本当のどん詰まりになって「身動きがとれない」ってなったときに初めて変わる。

安田

それはどういう状態ですか?

「メシが食えない」っていうことです。

安田

え!そこまで行かないと変わりませんか?

はい。みんなが極貧になってはじめて気づく。それが「陰きわまれば」の状態ですね。

安田

う〜ん。できればそうなる前に変わって欲しいです。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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