第70回「居心地の良い小売店」

このコラムについて
世の中の情報は99%が「現在」または「過去」のものでしょう。たった1%の未来情報をつかめる人だけが、自分のキャリアやビジネスを輝かせるのです。でも、未来情報なんか手に入らないよ!と思ったアナタ。ご安心を。もしアナタが古い体質の会社に勤めているなら超ラッキー。そんな会社の経営者ならビジネスがハネるかも。

未来コンパスが、あなたの知らない未来を指し示します。

 第70回  「居心地の良い小売店」

新宿に好きなお店があります。b8ta(ベータ)、商品を売らないお店です。


国際登録第1476829号(商標権者:B8TA, Inc)
【商標】

【指定役務】電子応用機械器具及びその部品の小売店の業務において行われる顧客に対する便益の提供 など


b8taは、IoT製品などの最先端商品のβテスト(正式版リリース前のサンプル商品テスト)を行いながら、お客さんに商品体験を提供することを目的としているお店です。
「商品を売らないお店」と言うのは実は言い過ぎで、売ることを主目的にしていない小売店というのが正確なところです。
最近は、商品β版を体験する場としての位置づけだけでなく、開発段階の商品が展示され協業したいパートナーを募っていたり、売れ行きを探るために本来はネット限定の新製品が展示されていたりします。
お客さんは、b8taや販売元のWebページから商品を購入できるのですが、なかにはお店で買える商品もあります。「お客様の都合の良い買い方を見つけてもらうのがb8ta」なのだそうです。

お店に行くと、スタッフが商品説明をしてくれるのは従来の小売店と同じですが、私もスタッフも購入を前提としていないので、「買わなきゃいけない」というプレッシャーから解放され、何とも言えない安心感があります。購入と言う前提が無くなるだけで、こんなにも純粋に商品を楽しめるのかと正直驚きです。

b8taでの体験は、一見するとショールーミングのようですが、似て非なるものです。ショールーミングは、「お客さんが」お店を商品のショールームと位置付け、注文はネット上から行うものです。要は、商品の情報集めをしておいて、安いルートから購入するもの。自分でやっていながら、お客さんはどこか罪悪感があるというか、心から買い物を楽しめていない感じがあります。

未来コンパスが指すミライ

販売元が期待するb8taの役割には、顧客データの取得もあります。
天井に設置された複数のカメラにより「商品の前で5秒以上立ち止まった人の数」といった定量的なデータを取りつつ、スタッフのヒアリングにより、お客さんの感想などの定性的なデータも取得します。

b8taが取り扱っているのは最先端の商品が多いので、特許や商標など知財と関係が深い商品が多くあります。また、お店に来るお客さんは、新しい技術にアンテナが高く、市場リサーチをしている商品開発部隊のメンバーもいるでしょう。彼らは特許事務所のよい潜在顧客と言えそうです。
知財のようなニッチな業界の潜在顧客データはとても貴重ですが、b8taはサービス(特許事務所の役務)の展示は受け付けていないのでしょうか。他事務所にない新たな知財サービスを作れたら、展示を試みたいところです。

 

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 この記事を書いた人  

八重田 貴司(やえだ たかし)

外資系企業/法務・知財管掌。弁理士。
会社での業務とは別に、中小・ベンチャー企業への知財サポートをライフワークとする。クライアント企業が気づいていない知的財産を最大化させ、上場時の株価を上げたり、高値で会社売却M&Aをしたりと言った”知財を使って会社を跳ねさせること”を目指す。
仕事としても個人としても新しいビジネスに興味があり、尖ったビジネスモデルを見聞きするのが好き。

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