第16回 結婚式ができる美容室

この対談について

「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。

第16回 結婚式ができる美容室

安田

美容室『マハロコ』はハワイアンな雰囲気のサロンですが、ご実家の美容室はどんなお店だったんですか?


岩上

近所のおばちゃんたちの「たまり場」でした(笑)。

安田

あはは(笑)。誰彼構わずふらっと入ってきて、お茶を飲みながらぺちゃくちゃお喋りして、またふらっと去っていく、という感じ?(笑)


岩上

そうそう(笑)。だからいつも賑わってはいるんですが、そのおばちゃんたちがお客さんとして来ているのか、ただ遊びに来ているだけなのか、よくわからない状況で(笑)。

安田

じゃあ売上は…?


岩上

当然、火の車(笑)。だって父も母も楽しくお喋りしているだけでしたから。だから僕は「絶対こんな美容師にはならないぞ。お客様にはしっかりと技術を提供し、きちんと対価をもらわなくては…」と決意して(笑)、それで東京に出たんです。

安田

反面教師だったと(笑)。それで小岩のお店に就職されたんですね。そこではお客さんと無駄話なんてせず、真面目に技術向上に努めたんですか?


岩上

それが、そこの美容室も近所の奥様方が毎日のように通ってくるお店で(笑)。で、さらに言うと、次に移った吉祥寺のお店も、近所の奥様方が集まってくるお店でした…(笑)。

安田

それじゃあ実家と変わらないじゃないですか(笑)。


岩上

そうなんですよ(笑)。でもそこで気づいたんです。僕としては、美容室は「モノ=髪型」を提供する場だと捉えていたけど、奥様方にとっては「コト=心の拠り所」なんだな、と。

安田

ははぁ。そもそも「来店する目的」が違っていたというわけですか。


岩上

そうですそうです。だからちょっと意識を変えてみまして。美容室で「お茶を飲む時間」は、収益は生まないけれど、「お客様の趣味関心を直接聞ける時間」なんじゃないのかなって。

安田

ほぅ、それは面白い発想だ! それで、あれこれ聞くようになったわけですか。


岩上

そうそう。そういう時間を使って、髪質やスタイリングの悩みなんかを聞き出すんです。そうするとこちらもプロですから、「そういう悩みはこう解決できるよ」と提案できるわけですよ。

安田

ああ、「このシャンプーで改善するよ」とか。


岩上

仰るとおりです。で、シャンプー剤とかコンディショナーとかヘアオイルとか、いろいろな商品を紹介してたらどんどん売れちゃって(笑)。結果、商品売上(物販)だけで月200万円くらいになりました。

安田

すごい! カットやパーマなんかの技術売上とは別に、ということですよね。


岩上

そうですそうです。当時は技術売上は100万円くらいだったから、むしろ物販の方が多くなっちゃって(笑)。

安田

技術の倍稼いでいるわけですもんね。それはすごいなぁ。


岩上

でも、あまりにも物販売上が上がりすぎて、お店の会計士さんから注意を受けちゃったりして(笑)。「このお店は、一般的な美容室よりも利益率が低すぎる」って。

安田

え、でも売上は上がっているわけでしょ? 商品は仕入れがあるから、利益率が下がるのは当然じゃないですか。その会計士さんは何を言ってるんですか!(笑)


岩上

笑。それだけ「物販」で売上をたてている美容室が珍しかったんだと思います。そもそも「技術売上」って9割が利益なので。とは言え、この経験から「美容師がお客様に提供できることって案外いろいろあるのかもしれない」と思うようになりましたね。

安田

なるほどなるほど。結婚式のプロデュースなんかも、そういう経緯で生まれたものなんですかね。


岩上

結婚式プロデュースは、お客様との雑談から生まれたアイディアなんですよ。当時、お客様をご招待するBBQイベントを毎年やっていたんですけど、そこであるお客様が「結婚式を挙げようとしている式場、あんまり雰囲気がよくないんだよね」と仰っていて。

安田

ほう。お客様の「お困り事」に、岩上さんのアンテナが動いたわけですか?(笑)


岩上

ええ(笑)。「何かあれば協力するよ」と言ったら、「私たち、ハワイが好きなのでマハロコで結婚式できませんかね?」と返されて。…じゃあ、やるしかない、と(笑)。

安田

なるほど! 実際どうだったんですか? スムーズにできたんですか?


岩上

お店で結婚式から披露宴までやりましたけど、まぁ大変でしたね〜(笑)。ただありがたいことに、料理を担当してくれる方とかハワイアンミュージックを演奏してくれる方とか、「こういう人が必要」と発信すると、どんどん集まってきてくれて。いい式になったと思います。

安田

なるほどなぁ。単に「髪を切る場」ではないんですね。ちなみに年間何組くらいの結婚式をプロデュースしていたんですか?


岩上

一番多い時で、年間50組。

安田

え、そんなに?!


岩上

ええ。ほぼ毎週末、結婚式やら二次会やらやっていましたね(笑)。

安田

すごいですね(笑)。そういえばお店でジュエリーも扱っていたって仰っていませんでしたっけ?


岩上

やっていましたね〜。美容室にハワイアンジュエリーが並んでいたら上品な店構えになるかな〜と思ったので(笑)。ちょうどお店の設計士さんが、ハワイアンジュエリーのお店の方と知り合いだったので、ご紹介いただいたんですよ。

安田

そうでしたか。ちなみに美容室でハワイアンジュエリーなんて…売れました?


岩上

ええ。コロナ禍で一旦終わりにしたんですが、ウチはハワイから直輸入のオーダーメイド品も扱っていたので、結婚指輪としてお求めいただくことも多くて。100組くらいのカップルが購入してくださったんじゃないかな。

安田

ははぁ〜、すごいなぁ。なんだか岩上さんは「普通の美容室」では考えられないようなアプローチからもしっかりと売上を作っていかれるのがお得意なようですね。いやぁ、その発想力、素晴らしいです!


対談している二人

岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表

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美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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