第114回 リモートなら残業請求し放題?

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第114回「リモートなら残業請求し放題?」


安田

ズムハラ?

久野

はい。Zoomハラスメントですね。

安田

なるほど!マスク警察みたいな。

久野

いや、もっとセクハラちっくなやつです。例えば、上司とつないだときに「部屋見せてくれ」とか「今度飲もうよ」って誘われるとか。

安田

そういう上司はZoomに限らずやってそう。

久野

確かに(笑)

安田

でもリモートになって、新たなハラスメントは出てきそうですよね。

久野

そうなんですよ。日経の調査だと女性で2割、男性の4割が、在宅勤務中に社内でのハラスメントを感じると回答した。

安田

男性の方が多いんですか。

久野

多いみたいですね。

安田

ということはセクハラよりパワハラが多い。

久野

たぶんリモートは詰めやすいんだと思う。

安田

相手がハラスメントだって言えば、ハラスメントになっちゃうし。

久野

上司も言いやすいんでしょうね。「お前、営業成績上がってないぞ」って延々しつこく詰めるとか。

安田

それは1対1で?

久野

1対1もあるし、会議とかもある。

安田

しつこい時には音声を切っとけばいいじゃないですか。

久野

そうですよね。前より楽な気がするんですけど。場の空気みたいな重さもないし。

安田

適当に「はい、はい」言っときゃいいんですよ。

久野

先日、うちのお客さんが社員に勝手にZoomを切られたそうです。

安田

会議から抜けちゃったってことですか?

久野

いえ。1対1です。

安田

なんと!切られた方は落ち込みますね。

久野

嫌なことがあるとぶちって切られちゃう。

安田

切られた後は寂しいでしょうね。し〜んとして。

久野

もうどうしようもないですよ。切られちゃったら終わりなんで。

安田

もしかして切れちゃっただけでは?

久野

赤いボタンを押したそうですよ、右下の。

安田

もう1回つなげたらいいじゃないですか。

久野

向こうが入ってこないとつなげようがないじゃないですか。

安田

確かに。でもそれって解雇理由になりませんか?出社しないっていうのは解雇の理由になるじゃないですか。

久野

そうですよね。

安田

オンラインミーティングを勝手に切っちゃうのは、出社拒否と同じですよ。解雇の理由になるはず。

久野

1回ぐらいじゃ難しいですけど。

安田

いつも途中で抜けていったら解雇の理由にはなる?

久野

なります。朝、Zoom会議があるのに入ってこないとか。

安田

何回目から解雇できるんですか。

久野

それよく聞かれるんですけど。まずは始末書を取りまして。ややこしいんですけど、本人がそうならないように会社も努力しなきゃいけないんです。

安田

始末書で「これは私がやりました」という証拠を押さえるってことですか。

久野

そうです。で、反省を促すと。

安田

そもそも始末書って、解雇するために書かせるものなんですか?

久野

社労士や弁護士からすると、そういう側面はありますね。

安田

なるほど〜。

久野

まずそれを3回ぐらい取る。

安田

3回も!

久野

はい。そして、それを回避するための努力も要ります。

安田

たとえば「お前、勝手に抜けたら駄目だろう」って叱ることは、努力になりますか?

久野

そうですね。そういうことやった履歴を残していく。

安田

また次も抜けたら?

久野

またそれを注意して。それを半年ないし1年繰り返す。

安田

なが!

久野

で、もう直らないなと思ったら「申し訳ないけど」って切り出す。

安田

そしたらやっと解雇できると。

久野

いえ。それでも解雇は難しいんです。「どうしますか」みたいなことから始めなきゃいけない。

安田

恐ろしすぎる。日本の労働法。

久野

でもそれが事実ですよ。

安田

ちなみに退職勧奨ってリモートでやってもいいんですか。

久野

今の時代ならそうなるでしょうね。

安田

リモート時代ってそういう常識も変わりますよね。どうやってマネジメントするかとか。どうやって労働法を守るかとか。

久野

今までのやり方ではもう無理ですね。時間で管理すること自体が無理だと思う。

安田

パソコンの使用時間で管理するしかないですもん。

久野

パソコンを使用してても仕事してるかどうか分からないじゃないですか。「オンラインの中にいればいい」ってことだったら、ネットやってても分からない。

安田

じゃあどうやって管理するんですか?いわゆる高プロみたいな評価は、ある程度の年収じゃないと認められないですよね。

久野

そうですね。なので業務委託に変えていくしかない。

安田

そのためには1回解雇しないといけないですよ。

久野

解雇というか、合意して終わらせるって感じですね。

安田

合意してくれりゃいいですけど。合意しない場合はどうするかってことですよ。合意するような人だったら、ちゃんと働いてるはずなので。

久野

確かにそうですね。「やってない人」「できない人」って、リモートで完全にあぶり出された感じがあります。

安田

できない人は分かるでしょうけど。やってないことをどうやって証明するんですか?

久野

難しいですよね。ただ「やってるかやってないか」をちゃんと管理しないと、未払い残業請求される可能性があるので。

安田

未払い残業?

久野

たとえば夜中にやってましたとか。

安田

逆に「夜中に働いてないこと」を証明するのは難しいですよ。

久野

難しいんですよ。よくログの履歴とかいうんですけど、パソコン付けっぱなしにされて。マウスが動いてたかどうかなんて検証不可能なので。

安田

悪意があれば請求し放題じゃないですか。

久野

ちゃんとルールがないと請求され放題です。

安田

リモートだと管理できないですよね。「じつは毎日12時間働いてるんです」とか言われたら。

久野

メール1本返しただけで残業とか。一番恐ろしいのは事務ワークですね。いらないExcelを勝手に作ったり。伸ばそうと思えばいくらでも労働時間を伸ばせる。

安田

稼ぎ放題ってことですよね。1週間で終わる仕事を3カ月かけた方が、実入りは増えるってことじゃないですか。

久野

そうです。会社の利益と個人の利益がもはや合致してないんですよ。

 

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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