お医者さんは、なやんでる。 第15回 「さよなら3分診察」

第15回 「さよなら3分診察」

お医者さん
お医者さん
自分のクリニックは、とにかく効率重視。待ち時間が長くならないように、患者さん一人ひとりの診察もできるだけスピーディーにこなしてきた。おかげで患者数では地域でもトップクラスだ。
お医者さん
お医者さん
でも、利益ベースで見ると、ここのところ停滞傾向だ。より大きな利益を得るためには、もっともっと診察時間を短くしていかないと…
先生、今後に必要なのはむしろ「診察時間を伸ばすこと」ですよ。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
は? 一体何を言っているんだ。というより、君は誰だ。
ドクターアバターの絹川です。お医者さんの様々な相談に乗りながら、「アバター(分身)」としてお手伝いをしています。
絹川
絹川
先生のように、一人あたりの診察時間を短くして利益拡大をしようとするお医者さんは大勢います。というより、今まではそれがスタンダードでした。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
そりゃそうだよ。同じ診療時間なら、一人でも多くの患者さんを診たほうが利益は上がるんだから。
もちろんその理屈はわかります。だからこそ多くの病院で、いわゆる「3分診察」という”常識”ができあがってしまった。まるでドライブスルーのように、ほんの一言二言話しただけで診察は終わり、処方箋をもらってはいさよなら、という状況です。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
まあ、そうなるもの無理はない。さっきから言っているように私たちも利益を上げなければならない。そのためには診察時間を短くし、患者さんの回転数を上げるしかないだろう?
そうでしょうか。たとえば100人の患者さんから1000円払ってもらうのと、50人の患者さんから2000円払ってもらうのは、売上で見れば同じですよね。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
…まあ、それはそうだが。
つまり私の提案は、患者さん一人あたりの単価を上げていきましょう、という話なんです。そしてそのためには、「3分診察」ではなく、患者さんが思わず先生のファンになってしまうような、「じっくり型」の診察が必要なんです。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
ううむ……単価を上げていこうという意識はあまりなかったな。そして確かに、今の「3分診察」では難しいだろうね。
ええ、しかも先生は利益拡大のためさらに診察時間を短くしようと考えていましたよね。そうなればさらに患者さんの満足度は下がり、単価も落ちていくことになったでしょう。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
確かに、診察時間と単価はトレードオフの関係にあるのかもしれないな。
しかもこのコロナ禍です。遅かれ早かれ患者さんの数は減っていくでしょう。つまり、病院は「効率」よりも「単価」を重視せざるを得なくなる。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
なるほど、一理ある。だからこそ早いうちに、単価重視の経営に舵を切ったほうがいいと言うんだね。
仰るとおりです。患者さん一人ひとりにじっくり向き合うことで、今まではヒアリングできていなかった体の不調なども見えてくる。そうなればそちらの診察でも利益が得られます。それだけじゃない。患者さんからの信頼度がどんどん上がっていく。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
…そうだな。

考えてみれば、私がこの道に進もうと思ったのも、患者さんに頼りにされるような医者になりたかったからだ。それなのに私はいつのまにか、医療をビジネスの目でしか見れなくなっていたのかもしれない。

業界全体はまだまだ効率重視のスタンスで動いています。そういう中でいち早く「じっくり診てくれる病院」というイメージを打ち出すことができれば、別の病院から先生の病院にやって来る患者さんもいるかもしれない。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
結果的には、単価だけじゃなく患者数も増えるというわけか。
なにより、先生は「自分が目指した医者」の姿を実践できるようになる。
絹川
絹川
お医者さん
お医者さん
よし!そちらの方向でシミュレーションしてみよう。具体的な施策が見えてきたら、また相談に乗ってくれるかい?
もちろんです!ぜひお話を聞かせてください!
絹川
絹川

医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。


著者:ドクターアバター 絹川 裕康

株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。

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