第55回 「お客様マーケティング」に必要な情報収集と編集力

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国21店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第55回 「お客様マーケティング」に必要な情報収集と編集力

安田

倉橋さんは以前Xで「商材自体にはあまりこだわりがない」と仰ってましたよね。自分が売りたいものではなく、お客さんが求めているものを提供したいという想いが強いと。


倉橋

そうですね。「お客様が求めているものをビジネスにしたい」と常々思っています。

安田

私の中では「自分自身がマーケットだ」という感覚が強くて。自分が絶対に欲しいと思う商品だったら、他にも欲しい人がいるだろうと考えるんです。


倉橋
なるほど。自分がターゲット層に近い場合はその方がやりやすいと思います。
安田
ああ、なるほど。万代さんの場合はターゲットがファミリーですもんね。でも自分は欲しくないのに、お客さんが欲しいかどうかってわかるものなんですか?

倉橋

自分をサンプルにしていない分、ターゲットはすごく研究しますね。どこに行っても、家族連れがどんなものを欲しがっていて、どんな時に楽しそうにしているかを常に観察しています。

安田

そうか。現場で見て研究して、商品開発に取り込んでいるわけですね。


倉橋

そういうことです。ちなみに僕も、起業当時は安田さんが仰るような商品の作り方をしていました。コミックやゲーム機、アダルト系まで、自分が欲しいと思うものをAからZまでやろうと。

安田
ああ、確かに以前は男性がターゲットでしたもんね。

倉橋

そうなんです。逆に自分が詳しくないものには手を出さないようにしていました。僕は釣りをやらないので釣り具は扱わないとか。

安田

なるほどなぁ。だからこそマーケティングや商品選別がうまくいったわけですよね。でもそこからターゲットを変えて、マーケティング方法も変えたと。


倉橋
そうですね。起業したころはまだ20代だったので物欲もけっこうあったんですけど、今50代になると、自分自身が欲しいと思うものってどんどんなくなってくるんですよ(笑)。
安田
確かに年齢とともにだんだんと物欲はなくなっていきますよね(笑)。ファッション関係はどうなんですか? 服とか帽子とか買わないんですか?

倉橋

買わないですねぇ。今は犬を飼っているので、汚れてもいいようにユニクロばかり着ています(笑)。おしっこかけられても全く腹が立たないのでおすすめです(笑)。

安田

なるほど(笑)。自分自身がマーケットだと、年齢を重ねた時にお客さんが欲しいものと感覚がずれてくるということもあるんですかね。


倉橋
それはすごくあると思います。
安田

始めは「自分マーケティング」でもいいけど、どこかのタイミングで「お客さんマーケティング」切り替えないと難しいと。

倉橋
特に小売業はそうかもしれませんね。
安田

ああ、確かに業種による違いはありそうですね。ともあれ、切り替えたとしたらそのターゲットについての研究は欠かせないわけですね。

倉橋

そうそう。だから僕は日曜日には必ずイオンなどのショッピングモールに行くんです。自分自身は何も欲しいものがなくて困ってるぐらいなんですけど。

安田

欲しいものが全くなくても買い物に行くわけですね。なかなか大変な習慣だ(笑)。

倉橋
笑。昔は無性に買いたくなるものもありましたけど、今は買うとしても店員さんに勧められて買うくらいで。
安田

私も昔の物欲が100だとしたら、今は1くらいしかないです(笑)。美味しいものを食べるにしても、毎日じゃなくてもいいかな、という感じですし。

倉橋
わかります(笑)。だからこそ普段から意識していないと、気づいた時にはマーケットと大きなずれが出てしまう気がして。
安田

ふーむ、なるほどなぁ。ちなみに「自分マーケティング」から「お客さんマーケティング」に切り替えたのはいつ頃なんですか?

倉橋

40代ぐらいからですかね。「自分が欲しいものがどんどん減ってきたなぁ」と感じたのがその頃で。

安田

ターゲットをマニアックな男性からファミリーに切り替えたのも同じタイミングですか。

倉橋
そうですね。自分は欲しいものがなかったタイミングだったので、スムーズに移行できました。
安田

なるほどなぁ。とはいえ、ショッピングモールって無限にモノがあるじゃないですか。そこから必要な情報をキャッチするのって簡単じゃないと思うんですけど。

倉橋
そこで以前お話した「編集力」が活きてくるんだと思います。得た情報からどこをどう切り取るかというのはまさに編集力なので。例えば新大久保で韓流が流行っているからって、別の場所で同じビジネスをやってもうまくいきませんよね。
安田

ああ、確かに。いくら繁盛店でも、同じ韓国料理店を別の場所に作ったからといって、必ず流行るわけではないですもんね。

倉橋
そうそう。そういう時に少しだけ編集を加えるんです。自分が出過ぎてもいけないし、切り取ったままではパクリになってしまう。その塩梅こそが編集力なんだと思います。
安田

なるほど。現場で情報をキャッチする能力というよりは、それを自分のフィールドに持ってきた時にピッタリ合うように編集する力が必要だということですね。現場をただ見学しているだけではダメだと。

倉橋
そう思います。文化や商業が活性化しているところから情報を拾って、地域に合わせていく。この合わせ方がすごく大事なんだと思います。
安田

情報収集と編集力のバランスが大事ということですよね。

倉橋
そうですね。7対3くらいの割合がベストだと思います。

対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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